アパート経営の初期費用、木造と鉄骨でそれぞれどれくらい
アパートの建築方法には、大きく分けて木造と鉄骨があります。2階建てまでなら木造、3階建て以上なら鉄骨で建築することが多いのですが、建築費の坪単価は鉄骨が木造を大きく上回ります。それぞれの建築方法で初期費用はどれくらいかかるのでしょうか。一棟当たりの建築費をシミュレーションするなどして初期費用の総額をまとめてみました。
建築費はいくら必要?

アパート経営で最も費用がかかるのは建築費です。いったいどれくらいの費用が必要なのでしょうか。
アパートとマンションの違いとは
日本の共同住宅には、アパートのほか、マンション、ヴィラ、レジデンス、コーポ、ハイツなどさまざまな名称がつけられています。しかし、建築基準法など国内法でこれらが明確に定義されているわけではありません。国土交通省では、これらを共同住宅としてひとくくりにしています。
実態は住宅会社やオーナーが語感の良さで命名しているのですが、一般に規模が大きいのをマンション、小さいのをアパートと受け止める人が多いようです。この記事では、アパートを共同住宅のうち、比較的規模の小さいものと定義して解説していきます。
建築費は坪単価×延べ床面積で計算
アパートの建築費は「坪(3.3平方メートル)単価×延べ床面積」の計算式で算出できます。ここでいう延べ床面積とは各階の床面積を合計した建物全体の総床面積になります。
しかし、算出できるのはあくまで目安であり、建築工法や材質、建物の形態、建てる場所などさまざまな要素で坪単価が大きく変わります。厳密なシミュレーションをするなら、建築業者と相談しながら進めましょう。
木造と鉄骨で坪単価に大きな差
国土交通省の2020年住宅着工調査などによると、マンションの坪(3.3平方メートル)単価は5階建てぐらいまでなら、木造建築で50~70万円、鉄骨建築で85~105万円、鉄筋コンクリート建築で90~120万円が相場とされます。
アパートの場合、2階建てまでなら木造、3階建て以上なら鉄骨がイメージされますが、坪単価で比較すると大きな差があります。ただし、台風が多い沖縄県は2階建てまででも、より強固な鉄骨や鉄筋コンクリートで建築することが多くなっています。
一棟の購入費をシミュレーション
新築アパート1棟の購入費をシミュレーションしてみましょう。想定する建物は1Kタイプ8戸の木造2階建てで、延べ床面積が60坪(約200平方メートル)です。坪単価60万円で計算すると、3,600万円となりました。
同じ規模のアパートを坪単価90万円の鉄骨で建築すると、出てきた数字は5,400万円です。このシミュレーションはあくまで目安となる数字でしかありませんが、木造と比べ、鉄骨の初期費用の負担が大きくなることが分かります。
建築費以外に必要な費用は

アパート経営の初期費用で必要になるのは、建築費だけではありません。一つひとつ見ていきましょう。
付帯工事費は規模拡大で増加
アパートの建築には、水道や都市ガスなど付帯工事が欠かせません。敷地の整地や地盤の確認などが必要になることもあります。付帯工事費は一般に本体工事費の10~20%程度かかるといわれています。
アパートの規模が大きくなれば、付帯工事費も増えていきます。仮に本体工事費の10%だとしても、初期費用の負担はかなり重くなります。
アパートローン関連費は借入額の1~3%
アパート経営を始めるに当たり、多くの人がローンを活用しています。銀行など金融機関が提供しているアパートローンです。審査が通って契約を結ぶ際、事務手数料や保証会社の保証料、印紙代などがかかります。
全体額は金融機関によって異なりますが、借入額の1~3%をみておけばいいでしょう。このうち、保証料の目安は借入額の1~2%程度です。
自己資金は初期費用の1~2割が相場
ローンを組む際に頭金として自己資金を入れると、後々の返済が楽になります。頭金は物件価格の3割入れられれば理想的ですが、自己資金負担が高額になりますから、1~2割を目安に用意するよう努めましょう。
例えば、4,000万円でアパートを新築するとして、頭金を2割の800万円入れると、借入額は3,200万円で済みます。20年返済だと単純計算で年間160万円返す計算になります。4,000万円丸々借りたときは年200万円の返済額ですから、頭金を可能な限り多く用意しておくと後々の経営が楽になるはずです。
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木造と鉄骨の性能を徹底比較
木造と鉄骨では建築費に大きな差が出るわけですが、どちらにも優れた点があります。建物としての性能を比較してみます。
木造は通気性が優秀
木造の強みは通気性が優れているところです。熱や湿気が室内にこもらず、外との温度差が小さいため、結露も発生しにくくなります。通気性の良さはダニやカビの発生を防ぐ効果があります。
鉄骨だと壁や天井などに柱やはりの凹凸が生じますが、木造は柱やはりが出ていません。その分、わずかではありますが、室内を広く活用でき、家具をレイアウトしやすくなります。
遮音性や耐火性なら鉄骨
鉄骨が優秀なのは遮音性や耐震性の高さです。最近は木造も性能が上がってきたため、差が小さくなっていますが、それでも鉄骨の強みである点は変わりません。鉄骨構造には厚さ6ミリ以上の重量鉄骨と厚さ6ミリ未満の軽量鉄骨がありますが、一般に重量鉄骨のほうが軽量鉄骨より遮音性、耐震性とも高くなります。
もう一つの強みは耐火性です。燃えやすい木を使っている木造に比べ、火災に強いのは確かです。しかし、不燃材料のコンクリートを使用する鉄筋コンクリートには劣ります。
太陽光発電でグレードアップ

木造、鉄骨とも強みと弱みを備えているわけで、どんなアパートの経営を目指すかで選択結果が変わってきそうです。ただ、どちらを選んでもアパートをワンランクグレードアップする秘策があります。それが太陽光発電です。
太陽光発電の初期費用は
経済産業省がまとめた太陽光発電の2021年全国平均設置費用は、出力10キロワット未満の住宅用で1キロワット当たり28.8万円、出力10キロワット以上の産業用で25万円です。単純計算で5キロワットの住宅用なら144万円、10キロワットの産業用なら250万円かかる計算になります。設置費用はここ数年、低下傾向が続いています。
アパートの屋根や屋上は戸建て住宅に比べ、かなり広いのが一般的ですから、これを有効活用できる点は魅力です。
入居者売電など多彩な利用方法
利用方法はいろいろあります。国の固定価格買取制度に基づいて電力大手に売電するほか、各戸の使用電力や共用部電力への活用、非常用電力としての利用などです。
しかし、固定価格買取制度の売電価格は年々下がっています。入居戸数の多いアパートでは全戸の電力をまかなうだけの屋根や屋上の面積が足りません。共用部電力や非常用電力として活用するのが、望ましいようです。
空室リスク解消に大きな力
最も大きな効果を持ちそうなのが、アパートの魅力を向上させてくれることです。アパート経営で最大の課題は空室リスク対策です。「環境にやさしいアパート」「災害に強いアパート」というキャッチフレーズは、非常に効果が大きいと考えられます。
建物が老朽化して空室リスクが高まる前に、太陽光発電を設置して魅力を付け加えておくと、将来の経営が楽になるでしょう。
太陽光発電追加で魅力あるアパートに
木造アパートと鉄骨アパートは規模が異なりますから、単純にどちらがいいと決めつけるわけにはいきません。ただ、初期費用を支出する段階から将来の空室リスクに備え、魅力あるアパートにしなければならない点は共通です。太陽光発電の追加がその解決策になりそうです。
