不動産経営において、なによりも怖いのは空室リスクです。空室になると家賃収入がストップするため、ローンの返済計画にも大きな影響が出ることになります。今回の記事では、この空室リスクを軽減してくれる、空室保証について解説します。
空室保証とは
空室保証とは、空室により家賃収入が一定の割合を下回った場合に、差額を補填してくれる仕組みです。通常はサービスを提供する不動産会社や保証会社などと契約し、毎月一定額の保証料を支払うシステムになっています。不動産経営における空室リスクを軽減する方法として、多くのオーナーが利用しています。空室保証は、サービスを提供する会社によって空室「補償」という漢字を使うケースもありますが、一般的には同じ内容です。
空室保証によって、空室発生時の家賃収入がどこまで補償されるかは契約内容にもよります。満室時の80〜90%程度が一般的となっており、満額まで補償されるわけではないことに留意が必要です。
例えば、10室あるマンションを所有していて、このうち4室が空室になってしまったと仮定します(稼働率60%)。このとき、満室時の80%まで補償される空室保証サービスに申し込んでいたとすれば、
補償率80% ― 稼働率60% = 20%
となり、満室時の20%、つまり2室分の収入が補償対象となります。空室が1室だけの場合は稼働率90%となるため補償はされません。また、補償はあくまで空室に対するもので、入居者の家賃滞納などは契約に特記がない限り、基本的には補償外となります。そのため、空室リスクを完全にゼロにするわけではなく、あくまで空室発生時の損失をある程度まで軽減する仕組みであることに留意しておく必要があります。
アパートの空室対策については、以下の記事でも詳しく説明しています。ぜひあわせてご確認ください。
※「#3アパート空室対策 」へリンク入ります
家賃保証とサブリースの違い
空室リスクを低減する方法としては、空室保証だけでなくサブリースという選択肢もあります。この2つはどのように違うのでしょうか。
サブリースとは、アパートやマンションをまるごと1棟、不動産会社(またはサブリース会社)が借り上げる契約形態を指します。不動産会社はオーナーからマンションを借り上げ、入居者へ転貸することで収入を得ます。
実際は契約条件により詳細が異なるものの、一般的に「家賃保証」は空室が発生した場合に備えて保険に加入しておくようなものです。一方で、「サブリース」は不動産管理会社に物件そのものを貸し出し、相手側が運用するものと考えるとイメージしやすいでしょう。
サブリースの場合でも管理会社の習慣として、「家賃保証」「空室保証」といった表現が使われるケースもあります。実際に「サブリース」なのか「空室保証」なのかは、契約内容をしっかりと確認して判断することが重要です。
サブリース契約では、借り上げる際にオーナーへ一定の借り上げ賃料が支払われます。借り上げ賃料は空室が発生して稼働率が下がっても毎月一定額が支払われるため、実質的にこれが空室保証のような役割を果たすことになります。
稼働率が下がっても家賃収入が保証されると考えれば利点のように聞こえますが、裏を返せば、不動産会社の取り分があるため、たとえ満室であっても家賃収入が満額得られるわけではないことに注意が必要です。また、稼働実績に応じて賃料が変動する契約もあります。
サブリースの借り上げ賃料は、満室時の賃料の80〜90%程度が一般的です。ただ、立地が悪い、設備が古いなど、入居者を探すうえで不利になるようなマンションの場合は料率が低く設定されるケースもあります。
サブリースは不動産会社がマンションをまるごと借り上げるという契約形態上、建物の管理業務も不動産会社が行うのが大きな特徴です。物件の清掃やメンテナンス、入居者のトラブル対応、空室時の募集などの管理業務を不動産会社に任せられるため、オーナーは手がかからないというメリットがあります。
一方で、サブリースはこの管理業務を不動産会社が行うという点がトラブルになることがあり、訴訟にまで発展しているケースも多いことに注意が必要です。詳細は契約内容によりますが、以下のような点に注意が必要です。
・借り上げ賃料は一定期間(通常2年)ごとに見直される可能性がある
・賃料の免責期間がある
・オーナーが入居者を選べない
・礼金、敷金、更新料は不動産会社が受け取る
・修繕やメンテナンスの業者が指定される
・サブリース契約はオーナーから解約するのが難しい
このなかで最も注意が必要なのは、サブリースの借り上げ賃料はずっと一定ではないという点です。通常は2年ごとに、これまでの稼働実績や建物の状態、立地などをもとに賃料の見直しが行われます。そのため、たとえ「家賃30年保証」などのような謳い文句を信用して契約しても、30年間ずっと契約当初の金額が保証されるわけではないのです。稼働率や物件の状態によっては大幅に賃料が下げられることもあり、そうなるとローンの返済計画や長期的なキャッシュフローにも大きな影響を及ぼすことになります。
サブリースはアパートを新築した後や入居者が退去した後は入居付けのための免責期間(通常1〜6ヶ月)が設けられているケースもあります。特に新築後の最も価値が高い期間に免責期間が設けられているのは、オーナーにとって不利な条件といえます。
このほか、サブリースはあくまで管理を不動産会社が行うため、オーナーが入居者を選べない点、礼金や敷金・更新料も不動産会社が受け取る点、修繕やメンテナンスの際に業者が指定される点にも注意が必要です。(敷金は退去後に一定条件のもと入居者に返還されます。)
また、こうした条件に不安を覚えて契約を解除したいと思っても、オーナーから解約を申し出るのは簡単ではありません。サブリース契約においては、借地借家法上、物件を借り上げる不動産会社の保護が優先されます。そのため、仮に解約できたとしても不利な条件を突きつけられたり、そもそも解約が認められなかったりするケースが多いのです。
マンション経営を成功に導く方法については、以下の記事で詳しく説明しています。ぜひあわせてご確認ください。
※「#6マンション経営成功」へのリンク入ります
空室保証を利用するメリット・デメリット
空室保証サービスを利用するメリット・デメリットについてまとめました。
【メリット】空室が発生した際の損失を軽減できる
空室保証は、空室が発生し稼働率が下がった場合の損失を補填してくれます。そのため、満室であれば保証料は発生するものの、家賃を満額受け取ることができるというメリットがあります。稼働率に関わらず、常に80〜90%の家賃しか受け取れないサブリース契約に比べ、空室保証契約では増えた分の家賃をしっかり受け取ることができます。
【メリット】ローンの審査に通りやすくなる
空室保証サービスに申し込むことで、ローンの審査に通りやすくなるのもメリットのひとつです。空室保証サービスに申し込んでいれば、それだけキャッシュフローが破綻するリスクが少ないとみなされるため、審査ではプラスに働く傾向にあります。ただし、厳密には借入金額や購入予定の物件にも左右されます。
【デメリット】毎月一定額の保証料が発生する
空室保証サービスに申し込むと、たとえ満室で家賃収入が100%得られていても、毎月一定額の保証料が発生します。そのため、駅近・築浅など好条件で常に満室状態をキープできるような物件の場合、そもそも空室保証サービスを利用する必要がないケースもあります。
【デメリット】100%補償されるわけではない
先にも紹介した通り、空室保証サービスの補償額は満室時の80〜90%程度が一般的です。仮に10室あるマンションのうち1室が空室になっても、稼働率は90%あるため補償対象とはなりません。空室が発生しても、損失が100%保証されるわけではない点にも注意が必要です。
不動産投資における物件の選び方 については、以下の記事で詳しく説明しています。ぜひあわせてご確認ください。
※「#52不動産投資物件選び方」へのリンク入ります
最も怖い「空室リスク」に備えよう
空室保証は不動産投資において最も怖い「空室リスク」を軽減してくれるサービスです。ただ、空室状況によっては保証サービスを付ける必要がない、といったケースも考えられます。契約の際はマンションの空室状況やご自身の管理方法などを踏まえ、判断していくことが重要です。