不動産投資について検討するうえで、今後の不動産価格の動向が気になる方は多いのではないでしょうか。万一購入後に不動産価格が大きく下落するようなことになれば、資産価値が落ちるのはもちろん、長期的なキャッシュフローにも大きな影響が出てしまいます。この記事では、不動産価格の最近の動向や価格変動の要因について、わかりやすくまとめました。
直近10年の不動産価格の動向
今後の不動産価格を予測するにあたり、まずはここ数年の価格動向について見てみましょう。直近の不動産価格の推移を確認する場合は、国土交通省が毎月公開している「不動産価格指数」が役立ちます。不動産価格指数とは不動産市場の動向を表し、不動産取引の活発さを確認することができる数値です。
2022年11月30日に発表された「不動産価格指数」によると、不動産価格は2008年にリーマンショックの影響で一時下落したものの、2013年以降は一貫して上昇傾向にあることがわかります。住宅用の不動産価格指数は住宅地、戸建住宅、マンション、総合の4つの分類で算出されていますが、特にマンションは上昇傾向です。2013年には100〜110を示していた指数は、2022年には180を超えています。特に都心部にある新築マンションは価格上昇が激しく、この数字は1990年代の不動産バブルを超える水準です。
ここまで不動産市場が活発化している要因として、主に以下の3つが考えられます。
・相続税対策として不動産購入の人気が高まった
・金融緩和の影響により不動産を購入する人が増えた
・台湾や中国など海外の投資家による動きが活発化した
また、マンションほどではないにせよ、戸建住宅の指数も2020年以降伸びていることに注目する必要があります。戸建住宅の不動産価格指数は2013年以降もずっと100前後を推移していましたが、2020年以降は急に伸び始め、2022年には110後半まで増えています。この要因としては新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークや自宅で過ごす時間が増えたことで、部屋の広さに余裕のある戸建住宅のニーズが高まったと考えられるでしょう。
不動産投資の元手については、以下の記事でも詳しく説明しています。ぜひあわせてご確認ください。
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今後の不動産価格はどうなる?
ここ数年の不動産価格は、手堅く数字を伸ばしていたマンションに加えて戸建住宅のニーズも高まったことからさらに堅調な伸びを示してきました。今後もしばらくはこの上昇傾向が続くと予想されています。特に、都市部は人口の都市集中の影響もあり、その傾向が強いといえるでしょう。
しかし一方で、近年は新型コロナウイルスの流行やロシアによるウクライナ侵攻により、経済の混乱が世界規模で起きていることにも留意する必要があります。特に以下2つの要因については注視が必要で、状況次第では今後の不動産市場に大きな影響を与えることも予想されます。
金利が長期的にみて上昇傾向にある
新型コロナウイルスの流行やロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、現在は世界的なインフレ傾向です。そのため、欧米諸国の中央銀行は金融政策として利上げを行っており、その影響は日本の国債の利回りにも及んでいます。
国債の利回りが上がれば、住宅ローンの固定金利も影響を受けることになるでしょう。特に2022年以降は住宅ローンの金利が少しずつ上昇を続けているのが現状です。
今はまだ店頭金利の上昇幅が小さく、また実際にローンを組む際の金利である適用金利も低い傾向にあるためニーズに大きな影響はありません。むしろ金利が上昇する前の駆け込み需要も期待できます。変動金利という選択肢もあり、以前ほどではないものの十分に低い金利で住宅ローンを組むことができる状況といえるでしょう。
しかし、このまま世界的なインフレが続けば、日本の住宅ローンの金利が今後大きく上昇する可能性もあります。そうなると、不動産市場が冷え込み、価格が下落することも十分に考えられるでしょう。
住宅材料の価格が上昇している
世界的なインフレの影響を受け、住宅建材の価格も上昇しています。なかでもウッドショックはその代表例です。テレワークや自宅で過ごす時間が増えた影響で木造住宅の需要が高まったこともあり、建材としての木材の価格は世界的に高騰を続けています。
また、キッチンや窓のサッシに欠かせない鉄のほか、ロシアが輸出を制限している原油の価格も高騰傾向にあります。さらには、建材を運ぶためのコンテナ価格も上がっていることから、住宅建材は品目を問わず上昇しているのが現状です。住宅建材の価格が上昇すれば、当然ながら新築やリフォームにかかるコストも上がるため、住宅購入を見送る人も増えると予想されます。
投資用マンションのローンについては、以下の記事でも詳しく説明しています。ぜひあわせてご確認ください。
※「#50投資用マンションローン」へのリンク入ります
不動産価格が変動する要因
不動産価格は立地や間取り、築年数だけで決まるものではなく、国際情勢や経済状況などさまざまな要因により左右されます。不動産価格の「今後」を見通すうえで知っておきたい変動要因をまとめました。
金利の変動
住宅ローンの金利は、不動産価格の推移に大きな影響を与えます。金利が上がればそれだけ月々の返済金額も増えるため、住宅を購入する人は減ることになります。住宅需要が減退すれば、地域によっては不動産価格が大きく下落することも考えられるでしょう。
先にも紹介したように、今はまだ金利が上昇傾向にある段階であることから、需要にそれほど大きな影響はなく、また駆け込み需要も期待できる状況です。ただ、今後金利が大きく上昇すれば、買い控える人が増え住宅価格に影響することも予想されます。
都市の再開発
都市の再開発も、不動産価格を大きく左右する要因のひとつです。不動産価格は築年数や間取りだけでなく、当然ながら立地や周辺環境によっても大きく変わります。都市の再開発により商業施設やオフィスビルが増えれば、当然その地域の地価は大きく上昇することになるでしょう。
世界情勢
新型コロナウイルスの流行とロシアによるウクライナ侵攻、この2つの要因は世界中の経済情勢に大きな影響を与え続けています。
新型コロナウイルスの流行により工場が閉鎖されたり、メーカー企業の操業がストップしたりすれば、商品の需要と供給のバランスが崩れ、価格に大きな影響を及ぼすことになります。また、人々の生活習慣の変化によりニーズが変化することも、需要と供給のバランスが変わる要因になるでしょう。
また、ウクライナ侵攻を続けるロシアは、日本を含む「非友好国」に対し木材や原油などの輸出停止措置を取っています。そのため、ウッドショックやオイルショックなどが起こり、建築材料が不足する事態となりました。
これら2つの要因はいずれも特殊な例ではありますが、住宅価格はこうした世界情勢の動向にも大きな影響を受けることがあります。特に、不動産購入を検討する場合は、こうした動向についてもしっかりと目を向けておくことが重要です。
不動産購入は現在の社会情勢を考慮する
不動産価格は立地や間取り、築年数など建物だけでなく、社会的、経済的要因によっても変動するため注意が必要です。不動産購入を検討する前には、価格変動の要因や現在の社会情勢を理解し、しっかりとタイミングを見計らったうえで購入することが損をしないための秘訣といえるでしょう。