定置型の家庭用蓄電池は決して安いものではありません。そのため、一度購入したらできるだけ長く使いたいと考えている人も多いのではないでしょうか。蓄電池の法定耐用年数は6年です。しかし、法定耐用年数と実際の寿命は異なります。また、使用方法によっては劣化を防いで、できるだけ長く使用することもできます。今回は、家庭用蓄電池の耐用年数、寿命の目安や蓄電池の劣化を防ぐ方法などを解説します。
家庭用蓄電池の耐用年数は?
蓄電池の法定耐用年数は6年ですが、実際の寿命は蓄電池の種類によっても異なります。ここでは、家庭用蓄電池の耐用年数や寿命の考え方について解説します。
蓄電池の法定耐用年数
法定耐用年数とは、国税庁が定めた減価償却期間のことです。資産は使用期間が長くなるほど価値が下がっていきます。そのため、使用を開始してから資産としての価値がなくなるまでの期間を耐用年数として、1年ごとに経費計上します。このような経理上の処理のことを減価償却といいます。
蓄電池にも法定耐用年数が定められており、国税庁によると6年とされています。法定耐用年数が6年と聞くと、蓄電池を使用し始めてから6年で使えなくなるのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、実際には蓄電池の寿命は6年よりも長い場合がほとんどです。法定耐用年数はあくまでも減価償却するために定められた耐用年数であり、実際の寿命とは異なります。そのため、一般家庭で使用する蓄電池の場合、事業目的でなければ法定耐用年数についてはあまり気にする必要はありません。
蓄電池によってはメーカー保証がつけられていることもありますが、保証期間が10年や15年と法定耐用年数よりも長く設定されていることが多くなっています。
リチウムイオン電池の耐用年数(寿命)
蓄電池の耐用年数(寿命)は、種類や使用環境によっても異なります。例えば、家庭用蓄電池として多く使用されているリチウムイオン電池の耐用年数はどのくらいなのでしょうか。
リチウムイオン電池には正極と負極があり、それぞれの間をリチウムイオンが移動して充放電します。リチウムイオンが負極に移動するときに充電、正極に移動するときに放電する仕組みです。大容量の電気を貯めることができるため、家庭用蓄電池のほか、携帯電話やパソコンのバッテリーなどにも使われています。
リチウムイオン電池は繰り返し使うことができますが、充電と放電を繰り返すうちに少しずつ劣化していきます。そのため、リチウムイオン電池の寿命は1回の充電と放電を1サイクルとして、何サイクルまで使用できるかが決まります。具体的には、充電量0%の状態から満充電にして、さらに充電量0%まで使用すると1サイクルになります。例えば、サイクル数が6,000回の蓄電池なら、使用を開始してから6,000回充放電を繰り返すことが可能です。仮に、1日1サイクル使った場合は16年以上使える計算になります。
リチウムイオン電池以外の蓄電池の寿命
では、リチウムイオン電池以外の蓄電池はどのくらいの寿命なのでしょうか。以下の蓄電池について、それぞれのサイクル数や使用期間の目安を解説します。
鉛蓄電池
鉛蓄電池は家庭用蓄電池としてはあまり使われていませんが、車のバッテリーやバックアップ電源などに使われていることがあります。サイクル数は3,000回程度で、サイクル数が劣化に影響しません。そのため、充電回数にかかわらず、寿命は17年程度といわれています。ニッケル水素電池
ニッケル水素電池は、乾電池タイプの蓄電池として家庭でも使用されています。サイクル数は2,000回程度、1日1回の使用で5年程度持ちます。ただし、充電した電気が自然に減ってしまう自己放電や使用環境による影響で寿命がさらに短くなることがあります。NAS電池M
NAS電池は日本ガイシ株式会社によって開発され、主に産業用として使われている蓄電池です。サイクル数は約4,500回、寿命は約15年といわれています。非常に大容量の蓄電池のため、主に工場をはじめとする大規模施設で使われています。全個体電池
全個体電池は電気自動車(EV)向けに開発が進められている次世代の蓄電池です。2022年現在、家庭用蓄電池としての本格使用はされていませんが、リチウムイオン電池よりも性能がよく、今後の実用化が期待されています。寿命は明確にされていませんが、リチウムイオン電池よりも劣化しにくいといわれています。家庭用蓄電池を長く使うには?
ここでは、主に定置型の家庭用蓄電池をなるべく劣化させずに長く使う方法を解説します。
高温・低温な環境で使用しない
家庭用蓄電池はメーカーによって推奨される使用環境が決められています。一般的に40度以上の高温になる場所や氷点下になる場所で使用すると不具合が起こるおそれがあります。特に、蓄電池が高温になると化学反応が活発になり、蓄電池の容量を超える充電(過充電)が起こりやすくなるのです。その結果、充放電と劣化の速度が速くなり、適切な環境下で使用したときよりも早く寿命を迎えることになります。
屋外に設置する定置型家庭用蓄電池の場合は、内部システムの制御により充放電反応はほとんど起こらないとされています。それでも、できるだけ劣化を防ぐためには、なるべく直射日光が当たらない場所に設置することが望ましいでしょう。
適切な方法で充電する
蓄電池の仕様とは異なる電圧や電流で充電すると故障や不具合の原因になります。蓄電池を適切に使うためにも、まずは取扱説明書をよく読み、長く使用できるように気をつけましょう。
満充電や満放電を避ける
蓄電池の種類にもよりますが、蓄電池を使用する際は満充電や満放電を避け、こまめに充電すると長持ちするといわれています。満充電にした後、容量が0になるまで使い切るのではなく、80%程度で充電するとサイクル数が抑えられます。1日1サイクルよりもサイクル数が少なくなるため、その分長く使用が可能です。
ポータブルバッテリーの劣化を抑えるには?
ポータブルバッテリーもリチウムイオン電池の一種で、非常用やキャンプ用として使用されています。リチウムイオン電池よりも容量が小さいことが多いのですが、持ち運びが可能な点がメリットです。ここでは、ポータブルバッテリーの寿命や劣化を抑える方法などを解説します。
ポータブルバッテリーの耐用年数(寿命)
ポータブルバッテリーもリチウムイオン電池が使用されていることが多いため、基本的に繰り返し使用しているうちに徐々に劣化してしまいます。ポータブルバッテリーの耐用年数も家庭用蓄電池と同じく、サイクル数によって決まります。製品によってもサイクル数は異なりますが、4,000回くらいが一般的です。1日1サイクル使用したとすると、10年以上持つ計算になります。ただし、ポータブルバッテリーも使用環境や使用方法によっては寿命が短くなることがあります。
ポータブルバッテリーを長く使う方法
ポータブルバッテリーの使用環境や充電方法は、基本的に家庭用蓄電池と同じです。ポータブルバッテリーは小型のものが多く、キャンプなどで使うときは屋外で使用することもあるでしょう。その際に気をつけたいのが、使用環境です。ポータブルバッテリーの動作温度は、-10~40度くらいまでです。そのため、直射日光が当たる場所や高温になりやすい車内に放置するのは避けましょう。
また、ポータブルバッテリーを普段あまり使わず、非常用として保管しておく場合には保管方法にも注意が必要です。満充電や満放電の状態での長期保管をすると、バッテリーが劣化しやすくなります。特に、充電容量0%の状態で長期保管すると、再充電できなくなる可能性があるため、残量を60~80%程度残して保管することをおすすめします。
ただし、長期間放置したままの状態が続くと残量が0になってしまうため、半年ごとに残量を確認することが大切です。災害時のような、いざというときに使えないと困るので、定期的に動作チェックも行っておくとよいでしょう。
蓄電池は適切な使用でもっと長く使える
蓄電池は繰り返し使用していると徐々に劣化してきますが、使用方法に注意すれば寿命を延ばすことができます。家庭用蓄電池は太陽光発電と連携すれば、電気代の節約や災害時の停電対策に有効です。しかし、修理や交換のサイクルが短いとコストがかかり、かえって家計の負担になってしまいます。そのため、適切な使い方をしてできるだけ長く使用したいものです。
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