マンション経営コストを削減!高圧電力一括受電のメリットと導入の注意点
電気代の削減を目的として、高圧電力の一括受電を検討されているマンションオーナーも多いのではないでしょうか。共用部だけでなく専有部の電気料金削減にもつながるため、入居者にとってもメリットが多い一括受電ですが、切り替えの際には注意点もあります。高圧電力の一括受電を検討する際に知っておきたい、契約条件や注意点などについてまとめてご紹介します。
高圧電力の一括受電とは
高圧電力の一括受電とは、マンションなどの集合住宅において居住者(各戸)が個別に電力会社と契約するのではなく、マンション全体で一括契約し受電することを指します。
通常、一般家庭ではオフィスビルや工場のように大量の電力を消費することはないため、容量が50キロワット以下の「低圧」区分の電力契約を結びます。これに対し、高圧電力の一括受電を行う場合、50キロワット以上の「高圧」区分の電力契約をマンションの管理組合や一括受電事業者が代表で結び、そこから各戸へ電力供給する仕組みになっています。
マンションにおける高圧電力の一括受電は、1999〜2003年にかけて行われた電気事業法改正をきっかけとして普及した契約形態です。これは電力の小売自由化を認める法律で、当初は大規模工場やオフィスビル、デパートなど大規模施設が結ぶ「特別高圧」区分(2,000キロワット以上)の電力契約のみを対象としていました。その後、2004年4月には中小規模工場や中小ビルなど「高圧」区分(500キロワット以上)の電力契約、さらに2005年4月には小規模工場など、50~500キロワット未満の電力契約に対しても自由化領域が拡大していきます。
これにより、工場やオフィスビルに比べてそれほど消費電力の大きくないマンションにおいても、高圧区分の電力契約を結ぶことが可能になりました。また電力を一括受電したいというニーズの高まりを受けてサービスを提供する事業者も登場し、消費者にとっては電力契約を選択しやすい環境が整っていきます。
資源エネルギー庁の調査によると、2018年12月の時点で一括供給サービスを受けている居住用マンションは約6,700棟、戸数は約65万戸にものぼっていることが明らかになっています。
参考:共同住宅等に対する電気の一括供給の在り方について | 資源エネルギー庁
共用部の電気代を大きく削減

各戸の個別契約から一括受電に切り替えるメリットは、やはり電気代の削減につながるという点にあります。マンションの各家庭が個別に結んでいる低圧契約から、マンション一括での高圧契約に切り替えることで電力単価が下がり、電気料金を安くすることができるのです。
具体的にどの程度、電気料金の削減につながるかは、一括供給サービスの事業者によって異なりますが、先の資源エネルギー庁の調査によると、各戸の専有部ではおよそ5%から最大で24%程度、マンションの共用部では10%から最大で55%程度の削減につながるとしています。特に共用部の影響が大きく、マンションのオーナーにとって高圧電力の一括受電は大きな魅力がある契約形態といえるでしょう。
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一括受電の契約条件
高圧電力の一括受電はマンションオーナーにとっても、また居住者にとっても大きなメリットがありますが、契約を結ぶ際には一定の条件があることに注意が必要です。
電気消費量が50キロワットを超えている
一括受電により高圧電力の契約を申し込むためには、当然ながらマンション全体の電気消費量が50キロワットを超えている必要があります。大型のマンションであればほぼクリアできる数字といえますが、戸数の少ないアパートなどでは消費量が満たないため契約を結ぶことができないケースもあります。
変圧器の管轄がマンションの管理組合にある
マンションの一括受電契約においては、受電した高圧電力を各戸へ分配供給する仕組み上、電気の変圧器がマンション管理組合の管轄である必要があります。一般的に変圧器は管理組合の管轄にあることが多いため、この条件が問題になるケースはあまりありません。ただ、高圧電力の一括受電を検討する場合は、念のため事前に確認しておくことをおすすめします。
総会での承認が必要
高圧電力の一括受電は、マンションの居住者全員にかかわる事項です。そのため、契約を切り替える際には管理組合の承認が必要となります。管理組合の理事会で検討した後、一括受電サービスを提供する事業者の説明を受けるという流れが一般的です。その後、管理組合の総会にかけて区分所有者の4分の3以上の承認を得る必要があります。
入居者全戸の同意が必要
マンションにおいて一括受電の契約を結ぶためには、各戸ですでに結んでいる個別契約を切り替える必要があるため、入居者全員の同意を得る必要があります。マンション内に店舗などのテナントが入っている場合は、これら事業者の同意も必要となります。これは区分所有者ではなく、あくまで入居者全戸の同意を得ないといけないことに注意が必要です。
一括受電契約は入居者全戸の同意が必要

先にもご紹介したように、マンションなどの集合住宅において高圧電力の一括受電契約を結ぶためには、入居者全戸の同意が必要です。一括受電契約を検討するマンションは電気消費量が一定量を超えている規模の大きなマンションが多く、戸数が多くなりがちです。そのため、大規模なマンションになればなるほど「全戸」の同意を得ることが難しく、多大な労力が必要になったり、住民同士のトラブルに発展したりするケースも少なくありません。この点について、もう少し詳しく見ていきましょう。
高圧電力の一括受電は電気代をおさえることができるため、基本的には居住者、マンションのオーナー双方にとってメリットがあるといえます。ここからは、一括受電を利用する際の制限について、説明します。
高圧電力の一括受電を導入すると、設備の法定点検を行うため年に1度ほどの頻度で1〜2時間程度の停電が発生します。法定点検の間は家庭のエアコンや冷蔵庫、インターネットが停止するほか、オートロックやインターホン、エレベーターなども使えなくなってしまうのです。これを不便に感じて、一括受電契約に反対する人もいます。
マンション内のテナントに入っている事業者や自宅で仕事をしている人にとって、停電はさらに深刻な問題です。年に1度、1〜2時間程度とはいえ、インターネットや電話、その他の電気機器が使えなくなると、業務に大きな影響が出てしまいます。停電の日時を把握し、事前に準備をしておかなければなりません。
また、自宅で電気の必要な医療機器を使っている場合は、停電そのものが重大な問題を引き起こす可能性もあります。電気料金が安くなるからといって、安易に契約を了承することはできないでしょう。停電中の電力をどのように確保するのかが大きな課題です。
大規模なマンションになるほどこうした個別の事情が増えるため、「全戸」の同意を得ることが難しくなります。一括受電契約を検討する場合は、住民同士の対立やトラブルを避けるためにも、慎重に対話を重ね検討していくことが重要です。
マンションの経営コスト削減に寄与する

高圧電力の一括受電は、共用部の電気代削減に大きく寄与するメリットがあります。特に大規模なマンションでは削減できるコストも大きいでしょう。一方、一括受電契約に切り替えるには、全住戸の同意が必要になるため、実現するには高いハードルがあります。特に、年に1度の法定点検による停電にどのように対処するのかが課題です。これらの問題を解決するためにも、住民同士でよく話し合う必要があります。
マンション経営について、以下の記事でも詳しく説明しています。ぜひあわせてご確認ください。
