不動産経営において建物管理は、入居者の募集やトラブル対応などと並んで重要な業務の1つです。建物がしっかり管理されていないと、不動産の資産価値を落とすことにもなりかねません。建物管理は具体的にどのような業務なのか、何をする必要があるのかをまとめて解説します。
賃貸管理と建物管理
不動産経営における管理業務は、大きく「賃貸管理」と「建物管理」の2つに分けられます。まずはそれぞれの管理内容や違いについて見ていきましょう。
賃貸管理
賃貸管理とは、アパートやマンションの賃貸に関する管理業務を指します。具体的には入居者から家賃を集めたり、空室が出た場合に新しい入居者を募集したりするなどの業務が該当します。また、入居者が退去した後のハウスクリーニングのほか、騒音などトラブルがあった場合の対応もこの賃貸業務に含まれます。不動産経営においては収益に直接関係する、重要な業務といえるでしょう。
建物管理
一方で、建物管理とは文字通り、アパートやマンションの建物部分に関する管理業務を指します。基本的には戸建て物件にはない、アパートやマンションなど集合住宅ならではの業務といえます。
建物管理の具体的な業務内容には、以下のようなものがあります。
- 共用部分の清掃
アパートやマンションは毎日人の出入りがあるため、エントランスや廊下、ゴミ捨て場などの共用部分は頻繁に清掃する必要があります。この清掃を怠ると、汚れや砂埃、ゴミが溜まって見栄えが悪くなるだけでなく、入居者からのクレームにつながるケースもあるでしょう。
- 定期点検、メンテナンス
マンションやアパートなどの建物は、何もしなくても時間とともに老朽化していきます。そのため、外壁や手すり、廊下などの構造部分にヒビや剥がれがないか、電気、ガス、水道などの設備に問題がないかを定期的に点検し、必要に応じてメンテナンスを行わなければなりません。
この定期点検には、マンションやアパートに備え付けられている防災設備をチェックする消防点検や、エレベーターの安全性を確認する定期検査報告など法律で義務付けられている点検もあります。もしこうした点検を怠ると、罰金などの罰則が科せられるケースもあるため注意が必要です。
- 建物の修繕計画の作成
建物の管理業務のなかには、外壁のメンテナンスやエレベーターの更新(取り替え)といった大掛かりな修繕も含まれます。こうした修繕は多額の費用がかかるため、いつごろ実施するかを予定し、費用を積み立てるなど計画的に行うことが大切です。
修繕計画を建てるためには、建物の現在の状態を把握するだけでなく、どういった修繕を優先的に行う必要があるかを判断するなど、専門的な知識が必要になります。そのため、遠方に住んでいて建物をこまめにチェックできない場合や、不動産に関する知識に自信がない場合は、専門の管理業者に依頼するという選択肢もあります。
エレベーターの点検については、以下の記事でも詳しく説明しています。ぜひあわせてご確認ください。
建物管理が不動産価値を左右することも
建物管理は賃貸管理とは異なり収益に直接関わる業務ではないため、つい管理を後回しにしてしまうケースも見受けられます。不動産経営をビジネスとして行う以上、できるだけコストをかけずに利益をあげたいと考えるのは当然のことといえるかもしれません。しかし、あまり建物管理をおろそかにすると不動産の価値そのものを下げることもあるため注意が必要です。
建物は土地とは異なり、時間の経過とともに劣化していくものです。新築当初は高い資産価値があったマンションも経年により少しずつ価値が落ち、築20年を超えれば半額ほどになることも珍しくありません。
不動産の資産価値が下落するスピードをおさえるためには、建物の状態を良好に保つことが重要です。築20年を超えた物件であっても、年数の割に状態が良ければ資産価値が高く評価されることがあります。逆に、修繕やメンテナンスを怠って、外壁にヒビが入っていたり設備が老朽化したりしたままの物件は、築年数がそれほど経過していなくても評価が低くなります。マンションの建物管理をしっかりと行うことで、建物が劣化するスピードをおさえるだけでなく、資産価値を維持することも可能です。
建物の資産価値を維持することは、将来的に不動産を売却する際に高い評価を得られます。また、不動産経営において新しい入居者を見つけやすく、空室リスクをおさえられることもメリットです。同じような条件の物件があれば、誰でも管理の行き届いたマンションに住みたいと考えるでしょう。
建物管理が十分ではない物件は設備の故障や雨漏りなどのトラブルを招きやすく、それが理由で入居者が離れるケースもあります。こうした問題を放置すると、家賃収入にも大きな影響が出て不動産経営が立ち行かなくなるリスクもあるため注意が必要です。
アパートの修繕費については、以下の記事でも詳しく説明しています。ぜひあわせてご確認ください。
優良な建物管理会社はどうやって見極める?
アパートやマンションの建物管理は、専門的な知識やノウハウが必要とされる部分もあるため、特に初めて不動産投資に取り組むオーナーは、専門の管理会社に管理を委託することをおすすめします。その際、優良な管理会社を見つけるために注意したいポイントをまとめました。
実際に管理状況を確認する
優良な管理会社を見極めるもっとも確実な方法は、実際にその会社が管理する物件に足を運んでみることです。その建物がしっかりと管理されているようであれば、あなたが保有するマンションやアパートも同じように、しっかりと管理してくれる可能性が高いでしょう。
外壁やエントランスを外から見るだけでなく、可能であれば廊下やエレベーターなどの共用部分や、住人が利用するゴミ捨て場や駐車場なども確認するといいでしょう。建物の詳細な状態まではわからなくても「掃除が行き届いている」「建物がきれいに保たれている」と感じれば、良好に管理されていると判断できます。
管理戸数を確認する
管理会社を見極めるためには、管理戸数を確認するのも効果的な方法です。管理会社のホームページには、管理を受託しているアパートやマンション、ビルなどの管理戸数が掲載されていることが多いため、それが判断の目安となるでしょう。
管理戸数が多ければ、それだけ経験が豊富で管理のノウハウが蓄積されていると判断できます。特にあなたが不動産経営を始めたばかりのオーナーである場合は、経験やノウハウを学ぶためにも経験豊富な管理会社に委託することをおすすめします。
トラブルの対応力を確認する
不動産経営において、入居者からのクレームや入居者同士の争いといったトラブルはつきものです。こうしたトラブルを完全になくすことは難しいため、管理会社を選ぶ際にはトラブルの対応力があるかどうかも重要なポイントとなります。
入居者のトラブルは、対応を誤ると退去者を出し家賃収入が減ることにもなりかねません。トラブルへの対応力を測る目安としては、過去のトラブルの対応事例を見せてもらうほか、トラブル専用の窓口が設置されているかどうかなどが参考になります。
マンションの活用方法については、以下の記事でも詳しく説明しています。ぜひあわせてご確認ください。
入居者の定着率や不動産価値にも関わる重要な業務
建物管理はするべきことが多く、手間がかかるものですが、入居者の定着率を左右するだけでなく、不動産価値にも関わる重要な業務といえます。管理を委託する場合は特に、信用のできる、しっかりと仕事をしてくれる管理会社を選ぶことが重要です。
参考:
要約文:
建物管理は不動産経営において重要な業務の1つです。建物の管理状況で家賃収入が変わってくることもあります。そのため、建物管理の業務内容を把握し、適切に行うことが大切です。建物管理は具体的にどのような業務なのか、何をする必要があるのかをまとめました。