RE100・EP100は、地球温暖化の原因となる化石燃料の消費を抑えるために多くの企業が加盟している国際的イニシアチブのことです。加盟するには一定の条件がありますが、RE100やEP100に加盟することで企業として環境問題への取り組みをアピールできます。企業価値が高まり、投資家からの評価につながる可能性もあるのです。今回は、RE100・EP100とは何か、加盟している日本企業の取り組みについて解説します。目標達成に向けて、どのような活動をしているのか注目してみましょう。
RE100・EP100とは何か、わかりやすく解説
RE100・EP100とは何か、どのような企業が加盟しているのかをわかりやすく解説します。
RE100とは
RE100(Renewable Electricity 100%)とは、企業が消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標として、国際環境が開始した国際的な企業連合体のことです。事業活動に必要なエネルギーを100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す企業が加盟しています。
RE100は2014年の気候サミットと同時開催されたClimate Week NYC 2014がきっかけで開始されました。Climate Week NYC 2014とは、世界から政府や企業、市民団体などの関係者が年に一回集まり、脱炭素社会の実現に向けて議論するためのイベントです。RE100はこのイベントのなかで発足しました。パリ協定で掲げられた目標に対する企業の行動や解決策するための場として設立されたのです。
RE100が設立された目的は、電力需要者である企業側から電力供給者である電力会社へ、再生可能エネルギーの重要性を伝えることです。再生可能エネルギーの需要が高まれば、電力会社や政府関係機関も需要に応じるようになり、再生可能エネルギー普及が広まると考えられています。
EP100とは
一方、EP100(Energy Productivity 100%)とは、事業活動のエネルギー効率向上を目指す企業が加盟する国際的なイニシアチブのことです。エネルギーを効率的に運用することで、エネルギー消費量の削減を目指しています。国政的な非営利団体The Climate Groupが運営しており、日本では日本気候リーダーズ・パートナーシップJCLP事務局が窓口になっています。
EP100に加盟するには、以下の3つの目標のうち1つを選んで、企業の目標として公表することが条件です。
エネルギー効率を倍増させること
・基準となる年を決めて、基準年から25年でエネルギー生産性を2倍にすることを目指す
EMS(エネルギー・マネジメント・システム)を10年以内に導入すること
・エネルギー使用を効率化するシステムを導入し、エネルギー生産性目標の達成を目指す
ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を2030年まで所有すること
・温室効果ガスの排出量が正味ゼロになるビルを所有する
RE100・EP100のメリット
企業がRE100やEP100に取り組むことで、環境問題に貢献できるだけでなく、企業価値を高めることにもつながります。ここでは、企業がRE100・EP100へ加盟するメリットを解説します。

RE100のメリット
企業がRE100に加盟する最大のメリットは、投資家から高い評価を受けられる可能性があることです。例えば、ESG投資では業績だけでなく、環境・社会・ガバナンスの観点からも評価されます。環境や社会の問題に貢献していない企業は評価されないのです。
また、近年、燃料価格の高騰により電気代などの光熱費が上昇しています。企業にとってはコスト増となるため、何らかの対策が必要です。RE100の目標として掲げられている再生可能エネルギーの利用を達成するには、太陽光発電を設置して自家発電した電力を使用する方法が有効です。自社内で電力をまかなえるため、電気代上昇のリスクを抑えることができます。
さらに、RE100への加盟で温暖化対策への取り組みをアピールできることもメリットです。環境問題に関心がある消費者からも好印象を持たれるでしょう。企業のブランドイメージが高まり、企業や商品・サービスの認知度アップにもつながります。
EP100のメリット
EP100の目的はエネルギー効率の向上です。EMSの導入やZEBの所有には多額の投資を必要とします。しかし、エネルギー効率を高めることで消費量を抑えられるため、長期的にみればコスト削減につながる可能性があるのです。
また、RE100と同様に脱炭素社会の実現に向けて取り組む企業としてアピールできます。EP100に加盟している企業は日本ではまだあまり多くありません。RE100とEP100の両方に加盟している日本企業はわずか2社です。そのため、EP100への加盟は企業にとって大きなアピールとなり、投資対象としての評価が高まる可能性があります。
RE100・EP100の目標達成に向けて取り組む日本企業の事例
ここでは、RE100やEP100の目標達成に向けて取り組んでいる日本企業の事例を紹介します。
RE100加盟企業の事例
2022年9月現在、RE100に加盟している企業は世界で378社、日本企業は全部で72社です。日本では、建設業や電気機器、小売業、不動産業の加盟が多くなっています。
例えば、リコー株式会社はRE100の目標達成を目指し、中国やイギリスの生産拠点で再生可能エネルギーによる電力利用拡大を実現しました。2か所の生産拠点における再生可能エネルギーの利用を年間13.8GWh相当まで拡大することで、二酸化炭素の排出量約5,000トンを削減できるとしています。
また、イオン株式会社は2018年に「イオン脱炭素ビジョン」を策定しました。省エネや創エネに取り組み、2025年までにまずイオンモール全店舗の使用電力を100%再エネにすることを目指しています。さらに、商品の製造や物流などで排出される温室効果ガスをゼロにする努力を促したり、顧客に対して脱炭素型ライフスタイルの実現に向けたサポートを行ったりする活動にも取り組んでいます。
EP100加盟企業の事例
EP100に加盟している企業は、2022年9月現在、日本企業の加盟は大和ハウス工業株式会社、日本電信電話株式会社、大東建託株式会社の3社です。
大和ハウス工業株式会社は日本企業ではじめてEP100に加盟しました。建設・住宅業界としては世界初です。EP100に加盟することで、自社施設の省エネルギー化を推進していくことを目指しています。2016年には愛知県津島市の大型店舗で日本初のZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の所有を実現しました。
日本電信電話株式会社は、2018年にEP100に加盟し、2025年までに2017年度比で「通信事業のエネルギー効率2倍」を目標に掲げました。電力使用量の増加に伴い、設備の省エネルギー化を進めています。
大東建託株式会社は2020年にEP100に加盟しました。2030年度までに社内のエネルギー効率を2倍にすることを目指しています。ガソリン消費を抑えるため、社用車のエコドライブ推進や省エネ性能の高い車両の導入などを進め、事業所や建設現場における節電やLED導入なども行っています。
RE100・EP100の目標達成を目指すには?
RE100・EP100の目標達成を目指すために、どのような取り組みが必要なのか解説します。

再生可能エネルギーによる自家発電
RE100・EP100の目標を実現するには、再生可能エネルギーの利用が必要です。例えば、自社施設の屋上や空きスペースに太陽光発電を設置し、自家発電した電力を使用すれば温室効果ガスの排出量を軽減できます。
また、再生可能エネルギーによって発電した電力を購入できる再エネプランへ切り替えるのも1つの方法です。自社で再生可能エネルギーによる自家発電を行うには多額のコストがかかりますが、再エネプランへの切り替えなら初期費用はかかりません。また、すでに自家発電を行っている企業でも、すべての電力をまかなえない場合は買電が必要です。再エネプランを選ぶことで、使用電力の二酸化炭素排出量を抑えることができます。
設備の省エネルギー化
事業を継続しながらエネルギー消費量を抑えるには、設備の省エネルギー化が有効です。例えば、社用車をEVに買い替えることで、化石燃料の消費量を減らすことができます。また、空調や機械なども省エネ性能の高いものに買い替えたり、EMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入したりする方法もあります。設備の省エネルギー化にはコストがかかりますが、長期的にみればコスト削減につなげることが可能です。
RE100・EP100の目標達成に向けて再生可能エネルギーの活用を
RE100・EP100はそれぞれ加盟条件が異なりますが、最終的な目標は化石燃料の消費量を削減することです。そのためには、再生可能エネルギーの利用が欠かせません。加盟企業は自社に太陽光発電を設置したり、EVや省エネ設備を導入したりして化石燃焼の消費を減らす努力をしています。環境問題に対する企業の責任が注目されるなか、RE100やEP100への加盟を目指した取り組みを検討することが大切です。
◆参考:
RE100に参加している国別企業数|環境省