マンション一棟経営の初期費用はいくら必要? 予算を抑える方法も解説
マンションの一棟経営を始めるに当たり、頭が痛いのは初期費用の大きさでしょう。規模の大きいマンションになると、建築費だけで億単位の出費になります。ローンを組んで建築にかかる場合は、将来の返済負担をできるだけ軽くする方策も考えておかなければなりません。マンション一棟経営の初期費用にどれくらいかかり、どうやって予算を抑えればいいのか、まとめてみました。
建築費は坪単価、床面積で算出可能
マンションの建築費は坪単価と延べ床面積でおおよその費用を想定できます。詳しく見ていきましょう。
本体工事費は構造で変化
国土交通省の2020年住宅着工調査によると、マンションの坪(3.3平方メートル)単価は5階建てぐらいまでなら、鉄骨建築で85~105万円、鉄筋コンクリートで90~120万円が相場とされます。マンションを新築するとなると、数千万円から数十億円の出費を覚悟しなければならないでしょう。
坪単価は構造別で鉄骨が最も安く、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリートの順に高くなります。建築場所でも大きく変わります。国交省調査では鉄筋コンクリートの平均坪単価は東京都が最も高く、大阪府と約30万円、福岡県と約40万円の差が出ています。
狭小地での建築や凹凸のある複雑な形状の設計は、坪単価が上がります。3DKなどファミリー向けの間取りとワンルームなど単身者向けの間取りを比較すると、必要な壁や建具が増えるため、単身者向けの坪単価が高くなる傾向があります。
付帯工事費は本体の10~20%
マンションの建築には、本体工事費以外に敷地の整地や地盤の確認、水道、都市ガスなどの整備費など付帯工事費が必要となります。付帯工事費は一般に本体工事費の10~20%程度かかるといわれています。
この付帯工事費に厳密な定義はありません。このため、建設会社のなかには本体工事費に含めて見積もりするところがあるほか、別途付帯工事費として請求するところもあります。
太陽光発電は10キロワットで280万円
マンションの屋上に太陽光発電を設置する費用は、経済産業省が全国平均額を公表しています。それによると、2021年に設置された平均値は出力10キロワット未満の住宅用で28.8万円、10キロワット以上の産業用で25万円です。
前年設置分に比べ、住宅用は0.4万円、産業用は0.5万円下がり、ここ数年低下傾向が続いています。マンションの建築後に後付けするより、新築工事の際にいっしょに設置するほうが安くなることが多いようです。
諸費用は本体工事費の5%程度

マンション建築には工事費以外に税金や手数料など諸費用がかかってきます。その総額は本体工事費の5%とされますが、どんなものがあるのでしょうか。
不動産所得税など各種税金
税金では不動産取得税があります。市町村の固定資産課税台帳に登録された価格の課税標準額に原則4%の標準税率をかけて算出されます。
印紙税はマンションを建てる際に建設会社と結ぶ建物建築工事請負契約書や融資を受けるときの金銭消費貸借契約書など課税文書に必要です。国税庁は建物建築工事請負契約書について、軽減措置を設けています。
マンションが完成したら、建物表題登記と所有権保存登記をしなければなりません。金融機関の融資を受けるときには、抵当権設定登記が必要です。このうち、所有権保存登記と抵当権設定登記には登録免許税が課せられ、所有権保存登記は課税標準額、抵当権設定登記は借入金額に原則0.4%の税率をかけて算出します。
ローン手数料など各種手数料
手数料関係ではローンの事務手数料、建築確認申請手数料、入居者が決まった際に不動産会社に払う仲介手数料などが必要です。
登記を司法書士や土地家屋調査士に依頼した場合、報酬が発生します。所有権保存登記と抵当権設定登記は司法書士、建物表題登記は土地家屋調査士が行います。
保険料やローン保証料
アパートローンなどでは火災保険への加入を融資の条件にするケースが大半です。最近は地震保険とセットで加入するオーナーが増えています。耐火性能が高い鉄筋コンクリート建築は、火災保険料が安くなります。
また、ローンを組む際に保証会社の保証が条件になることがあります。この場合、保証料を保証会社に払うことになります。30~35年の長期ローンだと、料率2%程度が多くなっています。
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ローン活用の注意点は

マンションの一棟経営を始める人の多くは、ローンを活用しています。その際に注意すべき点をまとめてみました。
頭金は物件価格の1~2割
マンション経営を始める際に組むローンはアパートローンと呼ばれるものです。マンション内にオーナーの自宅がある場合、住宅ローンも組めますが、原則として対象はオーナーの自宅のみになります。アパートローンの金利は金融機関で差がありますが、住宅ローンより高いケースが一般的です。
ローンを組む際に頭金として自己資金を入れると、後々の返済が楽になります。頭金は物件価格の3割入れられれば理想的ですが、自己資金負担が高額になりますから、1~2割を目安に用意するよう努めましょう。1億円の物件だと1,000万円から2,000万円です。
安全な返済利率は50%が目安
不動産投資の安全性を測る指標の一つが返済比率です。家賃収入に対する返済額の割合を示したもので、「毎月の返済額÷満室時の家賃収入」という計算式で表されます。返済率が低いほど手元に残る資金が多くなり、投資の安全性を高めます。
一般に不動産投資で理想的な返済率は40%といわれていますが、そんな好条件の物件はめったに出回りません。50%が安全な返済比率の目安と考えておくといいでしょう。
アパートローンは審査が難関
アパートローンは借入額が多くなるため、住宅ローンに比べて審査が難しくなります。金融機関によっては年収が700万以上なければ門前払いにするところがあるなど、難関といってもいい過ぎでないのです。
借り手の職業や年収だけでなく、購入する物件の収益性が重要視されます。マンション需要が高い地域に立地し、常に8割以上の入居率を維持できる事業計画なら、審査が通りやすくなりそうです。
投資額を抑える3つの方法

マンション経営は借入額、自己資金とも大きな額になります。安定経営をするためには、初期投資額を抑える努力を忘れてはなりません。
予算縮小へ建築設計に工夫
マンション経営で最大の出費となるのが建築費ですが、設計段階で工夫を凝らすことで費用をある程度抑えることができます。建築費を抑えるには、以下のような手法が考えられます。
・長方形の建物とし、余分な凹凸を加えない
・地下階を設けない
・外廊下設計にする
・エレベーターの台数を増やさない
余分な壁面や空調・換気システムが必要にならない構造とすることなどで建築費を縮小させるわけです。
不動産投資初心者は元利均等返済
アパートローンの返済方式には元利均等方式と元金均等方式があります。元利均等方式は毎月の返済額を一定にする方法です。元金均等方式は元金の返済額を一定にする方法で、元金残高に利息がかかるため、当初の返済額が大きいのが欠点です。ただ、返済総額は元利均等方式より少なくなります。
元利均等方式は返済額が一定なので、返済の見通しを立てやすいところがメリットです。不動産投資の初心者に向いているといえそうです。
固定金利より変動金利
返済する金利にも固定金利と変動金利があります。固定金利は借入期間中の金利変動がありません。これに対し、変動金利は短期プライムレートに1%上乗せした金利を基準に半年に一度の見直しが通例です。
金融機関によっては固定金利より変動金利が安いところもあり、現在のような低金利時代は変動金利向けだといえるでしょう。金利上昇のリスクはありますが、返済額の急増を防ぐ目的で金利が変動しても返済額を5年間据え置く「5年ルール」、金利上昇による返済額増加を1.25倍までとする「1.25倍ルール」という救済策が設けられています。現在は変動金利を選択する人が多いようです。
無理のない返済で投資の成功を
マンションの一棟経営を成功させるには、空室リスクを避けて安定した収入を確保することが大切です。また、初期投資の段階からしっかりした計画を立て、無理のない返済としておくことが欠かせません。あらかじめ必要な費用を把握し、どこに節約の工夫をするのか、考えておくべきです。
