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自治体で広がる太陽光発電の設置義務化、近い将来全国一律の方向へ

  • ESG投資
自治体で広がる太陽光発電の設置義務化、近い将来全国一律の方向へ

京都府や京都市などが一定規模以上の建築物、東京都が新築住宅などに対し、太陽光発電設備の導入を義務づけたのをはじめ、川崎市が義務化に向けた条例改正の手続きを進めています。政府は公共施設への設置を標準化しており、住宅への設置を将来の選択肢と位置づけています。設置義務化の動きが広がれば、近い将来全国一律の方針となる可能性が出てきました。

東京都が新築住宅に義務づけ

東京都では2022年12月、新築戸建住宅などに太陽光発電の設置を義務づける環境確保条例の改正案が都議会本会議で賛成多数により可決されました。戸建住宅を対象に含めた義務化は全国初で、2025年4月に施行されます。内容を見ていきましょう。

戸建住宅はメーカーに設置義務

改正された条例は戸建住宅やアパートなど延べ床面積2,000平方メートル未満の新築建物について、太陽光発電の設置義務を住宅メーカーや販売業者に課します。対象となるのは都内で延べ床面積2万平方メートル以上を年間に施工・販売する業者です。東京都は約50社が対象になるとみています。

屋根や屋上の面積が20平方メートル未満の住宅は、設置スペースが確保しにくいとして対象から外しました。立地場所によって日照に差があるため、すべての対象住宅に設置を求めず、太陽光発電を設置する住宅の割合を都心部で30%、多くの区部で70%、市部の大半で85%としています。

電気自動車充電設備も義務化

駐車場付きの住宅には、電気自動車の充電設備設置を義務づけました。1棟当たり少なくとも100万円前後かかるとみられる設置負担を軽減するため、計300億円を助成する補正予算を組んでいます。

一方、商業ビルなど延べ床面積2,000平方メートル以上の建築物は、建築主が義務を負います。

京都府などが既に導入

東京都に先駆けて義務化を始めた地方自治体があります。1997年に第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)が開かれた京都府や京都市などです。どんな内容でしょうか。

300平方メートル以上が対象、京都府

京都府は2010年度、京都府地球温暖化対策条例を改正し、義務化に乗り出しました。制度は2015年度、京都府再生可能エネルギー条例に移管されましたが、延べ床面積2,000平方メートル以上の特定建築物に再エネ設備の設置を義務づけていました。

2020年の条例改正により、2021年4月から義務化の対象を延べ床面積300平方メートル以上の準特定建築物に対象を拡大しています。

準特定建築物以上に設置義務 京都市

京都市も京都府と歩調を合わせてほぼ同じ内容の義務化を京都市地球温暖化対策条例で実施してきました。延べ床面積2,000平方メートル以上の特定建築物、300平方メートル以上の準特定建築物が対象です。

再エネ設置義務を特定建築物に 群馬県

群馬県は2022年3月、延べ床面積2,000平方メートル以上の大規模建築物に再エネ設備の設置を義務づけるぐんま5つのゼロ実現条例を制定しました。都道府県レベルでの条例制定は京都府に続いて2例目で、施行は2023年4月からになります。

被災地が再エネで復興へ 福島県大熊町

東日本大震災の被災地である福島県大熊町は2021年に公布された復興まちづくり条例で非住宅部分の合計面積が300平方メートル以上の建築物に再エネ設備の設置を義務づけました。再エネで被災地を復興しようとしているわけです。

川崎市が義務化へ

京都府や東京都に続く自治体の動きも見えてきました。新築住宅などを対象にした義務化を目指す川崎市です。これに対し、政府は公共施設への設置を標準化したものの、住宅を対象とした義務化は将来の選択肢とする立場を崩していません。

2025年から新築住宅を義務化 川崎市

川崎市では2022年11月、市環境審議会が戸建住宅を含む新築建築物に太陽光発電設置を原則義務化するよう求める答申を福田紀彦市長に提出しました。延べ床面積2,000平方メートル以上の建築物は建築主、2,000平方メートル未満の建築物でも年間5,000平方メートル以上の総床面積を供給するハウスメーカーに設置義務を課す内容です。

川崎市は地球温暖化対策推進条例の改正案を2023年春の市議会に提出、可決されれば2025年4月に施行したい考えです。

政府は公共施設への設置を標準化

自治体の間で義務化へ向けた動きが拡大しているわけですが、政府は2021年、国土交通、環境、経済産業3省の有識者会議で公共施設への太陽光発電設置を標準化するものの、住宅への義務化は当面見送る考えを示しました。住宅を対象とした義務化は将来の選択肢として先送りしています。

義務化の背景と課題は

太陽光発電設置義務化の背景にあるのは、地球温暖化の急速な進行です。先進国の一員として責任を果たすためには、やむを得ない一面がありますが、拙速な義務化が格差社会を助長すると批判する声も一部に出ています。

建築物からの削減が喫緊の課題に

環境省によると、日本国内の二酸化炭素など温室効果ガス排出量は2014年度から減少に入っています。2020年度の総排出量は約11億5,000万トンです。減少に転じる前の2013年度に比べ、18.4%少なくなりました。

しかし、総排出量の約3分の1を住宅や建築物を使用することが占めると考えられています。地球温暖化防止を目指すパリ協定の目標達成が危ぶまれるなか、日本が2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を達成し、温暖化防止に貢献するためには、建築物からの排出抑制が喫緊の課題なのです。

市民は早期導入がおすすめ

東京都や川崎市の動きが刺激になって今後、自治体主導で太陽光発電の設置義務化が加速するとみられています。

ところが、太陽光発電で作った電力の買取価格はこのところ、低下の一途をたどっています。2022年度の価格は出力10キロワット未満の住宅用で1kWhあたり17円、2023年度は1kWhあたり16円です。導入当初の半額以下で、今後も下落が続く見込みですから、義務化が進む前に導入するほうが市民にとってお得になります。

→36_「太陽光発電 売電」の記事へリンク

自家消費で電気代節約に効果

売電価格が下がったといっても、自家消費すれば電気代節約に役立ちます。最近はウクライナ戦争などで電気料金が高騰しているうえ、産油国の減産で高騰が長引くと予想されていますが、自家消費は影響を受けません。

家庭用蓄電池や電気自動車を導入すれば、太陽光発電が稼働しない夜間や雨の日も安心です。

→22_「太陽光発電 メリット」の記事へリンク

貧富の差拡大などに懸念の声

ただ、太陽光発電設備や蓄電池の導入には、それなりのコストがかかります。経済産業省によると、太陽光発電は規模が小さいものでも100万円前後、蓄電池は80~200万円かかります。当然、収入面で導入できない世帯も出てきます。

義務化で太陽光発電が増えれば、電気料金に転嫁される再生可能エネルギー発電促進賦課金が膨らみます。太陽光発電を設置できた世帯はメリットを享受し、設置できない世帯が電気料金で賦課金をこれまで以上に支払わなくてはならないことに首をかしげる意見も出ています。

太陽光義務化に対応した動きを

地球温暖化の進行や2050年のカーボンニュートラルを考えると、住宅など建築物への太陽光発電設置義務化が避けられない状況になりつつあるように見えます。不動産投資家や住宅の新築を検討している世帯は、早めの対応が求められているようです。