使用電力をすべて再生可能エネルギー(再エネ)でまかなうことを目指す国際企業連合のRE(アールイー)100に参加する日本企業が増えています。参加した企業が将来の再エネ100%達成時に使用することを目指しているのが、再エネで作ったRE100電力です。自前の再エネ発電施設を工場や事業所に整備する以外に調達方法はあるのでしょうか。RE100電力について詳しく解説します。
RE100に日本企業が続々と参加
RE100に参加するためには事業で使用する電力を100%再エネに切り替える目標年次を示さなければなりません。日本ではどんな企業が参加しているのでしょうか。
事業の使用電力を100%再エネに
RE100は英国の国際環境NGO(非政府組織)「クライメイトグループ」が2004年から運営しています。脱炭素社会への移行を企業活動から実現させるのが狙いで、日本では2017年から脱炭素社会を目指す企業グループ「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」が地域パートナーとなっています。
日本の参加企業は75社
参加している日本企業は2022年11月現在で75社です。名簿を見ると、リコー、イオン、エーザイ、楽天、髙島屋、第一生命保険、Zホールディングス、村田製作所、花王、西松建設、東急不動産、パナソニックなど日本を代表する企業が並んでいます。
75社という数は世界でも米国に次ぐ2位に当たります。日本は米国とともにこの活動を支えているといえます。
大企業以外の参加が可能な団体も
RE100に参加することで、企業として温暖化対策に取り組んでいることをアピールできます。ただ、参加には年間の消費電力100ギガワット時以上(日本は50ギガワット時以上)という条件があり、大企業以外は参加しにくくなっています。
大企業以外の受け皿として2019年、日本で発足したのがRE100の中小企業版といえる「再エネ100宣言RE Action」です。中小企業や地方自治体など289の団体が2022年11月時点で参加し、再エネ100%を宣言しています。RE100と同様、参加することで企業価値の向上が期待できるでしょう。
→46_「RE100/EP100」の記事へリンク
RE100電気の調達方法は
再エネ100%といってもすべて自前の再エネ発電所で調達するわけには、なかなかいきません。他にどんな調達方法があるのかもみていきましょう。
100%再エネの電力だけが該当
RE100で認められる電力は再エネ由来だけです。水力、風力、太陽光、地熱、バイオマスで、石炭、石油、天然ガスによる火力発電や原子力発電は認められません。
日本では東日本大震災後に国の再エネ電力固定価格買取制度(FIT)がスタートし、各地に太陽光発電施設が整備されました。しかし、FIT電力は対象外です。FIT電力は需要家全体が再エネ賦課金として環境価値に対価を支払っているとして、100%再エネと認められていないのです。
非化石証書付き電力を調達
RE100電力の調達で自前の発電所を整備する以外にまず考えられるのは、電力会社や小売電気事業者から再エネ電力の購入契約を結ぶことです。関西電力など電力大手は水力発電を中心とした再エネ由来電力の販売プランを持っています。
FIT電力はそのままだと100%再エネと認められませんから、FIT法で認定された再エネ発電設備に環境価値証書を付与して購入する方法もあります。
再エネ価値取引市場を利用
再エネ価値取引市場が2021年11月に開設されました。小売電気事業者や仲介業者、需要家はここで非化石証書を購入できます。これを使用した電力やFIT認定された発電設備と組み合わせて100%再エネとするわけです。
RE100で利用できる環境価値証明
環境価値を証明する証書は、日本で3種類あり、いずれもRE100の再エネ電力証明に活用できます。それぞれの特徴を紹介します。
国が認定するJ-クレジット
J-クレジットは植林や再エネ導入など環境保全活動による温室効果ガスの削減量を国が認証する制度で、環境省や農林水産省、経済産業省が運営しています。
企業はJ-クレジットを購入することで購入分額の温室効果ガスが削減されたとみなされます。やむを得ず排出した二酸化炭素など温室効果ガスを埋め合わせることができるわけです。
第三者機関認証のグリーン電力証書
グリーン電力証書は再エネが持つ環境価値を証書にして売買できるようにしたものです。認証は第三者機関の日本品質保証機構が務めています。日本品質保証機構は以前、経済産業省所管の財団法人でしたが、2011年に公益法人改革で一般財団法人に移行しました。
企業や自治体がこの証書を購入することにより、使用する電力が再エネから生まれたことが証明される仕組みです。
政府のトラッキング付非化石証書
非化石証書は石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料以外で発電されたことを証明するものです。制度の運営は経産省が進めていますが、取引は卸電力取引所で行われます。
しかし、RE100で認められるのは、政府によるトラッキングがついているものに限られます。非化石証書はこれまでどこの発電所でつくられたものなのかはっきりさせていませんでしたが、政府のトラッキングがつくと発電所が明示されることになります。
RE100電力に多大なメリット
RE100に参加し、100%再エネ由来の電力を使用することには、大きなメリットがあります。その中身を環境省の説明などから解説します。
気候変動による損失リスク回避
化石燃料に依存した事業活動は地球温暖化を加速させます。温暖化が進めば、海面の上昇や砂漠化、多雨化などの気候変動、熱帯性伝染病の拡大、食料生産の低下などさまざまな問題を現代社会にもたらします。日本でも台風の大型化や洪水の頻発、ゲリラ豪雨の多発など気候変動の影響と考えられる事象が起きるようになってきました。
気候変動の影響は企業活動を直撃し、少なからぬ損失を与えるとみられています。再エネ電力を活用し、温暖化防止の一翼を担うことは、気候変動による損失リスク回避につながるのです。
再エネ市場の拡大
日本の太陽光発電など再エネコストは、海外よりはるかに高いことが問題になっています。経済産業省によると、日本の太陽光発電は出力10キロワット以上の産業用で1キロワット時当たりのコストが2021年上半期で13.8円です。これに対し、世界平均は5.3円となっています。非常に大きな格差があるわけです。
再エネを重視する企業が増えれば当然、コストが下がっていきます。海外でコストが下がったのは、再エネ市場が拡大して活性化したためです。
一流企業のステータス
RE100には日本を代表する企業が名を連ねています。そのなかに加わることは一流企業の仲間入りという意味を持ってきます。
さらに、世界では環境問題や社会問題の解決に力を入れる企業に投資するESG投資が活発化し、その波が日本に押し寄せてきました。ESG投資の受け皿になれるメリットも再エネ電力活用にあるのです。
中小企業もRE100電力の使用を
RE100電力を使用し、事業用電力のすべてを再エネ由来でまかなうことは、一流企業の証明となりつつあります。それは大企業だけでなく、中小企業や個人経営でも変わりません。不動産投資で空室リスクを回避し、物件の魅力を高めるのにも大いに役立ちそうです。