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徐々に広がる緑の建築「グリーンビルディング」、世界が注目する理由とは

  • ESG投資
徐々に広がる緑の建築「グリーンビルディング」、世界が注目する理由とは

グリーンビルディングが世界で徐々に広がってきました。直訳すれば「緑の建築」ですが、「環境配慮型建物」、「環境にやさしい建物」とも訳されます。二酸化炭素の排出を抑え、水の使用を節約することで、地球温暖化や水不足の解消を図るのが狙いです。グリーンビルディングの現状についてまとめてみました。

グリーンビルディングとは

二酸化炭素の排出を抑え、水の使用を節約するグリーンビルディングとは、どんな建築物なのでしょうか。建築物の具体的な特徴と推進状況をみていきましょう。

環境保護に利点がいっぱい

グリーンビルディング特徴の一つが、リサイクルされたガラスなど環境負荷の低い資材、竹やゴムなど再生可能な材料を使用していることです。さらに、自然光を最大限に取り入れ、照明に必要な電力を削減するほか、太陽光発電など再生可能エネルギーをフル活用しています。降雨を最大限に利用するため、水の集積・浄化システムを備え、屋上緑化に力を入れているのも特徴といえます。

これらの取り組みは環境保護にたくさんの利点をもたらします。米国でグリーンビルディング認証制度を運営する非営利団体の米国グリーンビルディング協会によると、グリーンビルディングは一般のビルに比べ、平均で二酸化炭素排出量が34%、エネルギー使用量が25%、水使用量が11%少ないと報告されています。

温暖化進行への危機感が背景に

パリ協定では世界共通の長期目標として平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度上昇と設定、それを1.5度に抑える努力を各国が進めるとしています。2022年の国連環境計画報告書が出る前からパリ目標達成を危惧する声が上がっていました。

グリーンビルディングに注目が集まる理由は、地球温暖化の急速な進行です。国連環境計画は2022年、各国が温暖化対策を強化しなければ、今世紀末までに気温上昇が2.4~2.6度に達し、国際的な枠組みの「パリ協定」の目標を達成できないとする報告書をまとめました。

日本でも促進団体が登場

グリーンビルディングを広く理解してもらうためのセミナーや技術指導方法を研究するワーキンググループを設立するなどしています。2019年には関西に支部を設立し、日本全国にグリーンビルディングを普及させようとしています。

グリーンビルディングの建築を推進する団体が日本でもスタートしています。2013年に設立されたグリーンビルディングジャパンです。信和不動産、コクヨ、イトーキ、森ビル、大林組、YKK不動産など日本を代表する企業が法人会員に名を連ねています。

多数生まれた各国の認証制度

グリーンビルディングには各国で認証制度が設けられています。代表的な事例と日本で設けられた制度を紹介します。

世界を牽引する米国のLEED

世界で最も有名な認証制度が米国のLEEDです。米国グリーンビルディング協会が1998年に設けたもので、プラチナ、ゴールド、シルバー、標準認証という4段階の認証レベルを持ち、カテゴリーも細かく区分されています。

日本でもこの認証を受ける建物が少しずつ増えており、グリーンビルディングとしての価値を推し量る基準として活用されるようになりました。

日本ではCASBEEが認証活動

日本独自の認証制度として存在するのが、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)です。国土交通省の主導により、建築環境・省エネルギー機構内に設置された委員会が2001年に開発した環境性能評価システムで、国内の新築、既存建築物を対象に環境への配慮、利用者の快適性などを評価しています。

環境に配慮した建築物を紹介

実際に建築された建築物でグリーンビルディングの趣旨に合うものが増えています。大阪市や京都市が発行した報告書、各社のニュースリリースから紹介します。

屋上や壁面を緑化

緑化事例の代表例が大阪市北区梅田の複合施設・ブリーゼタワーです。オープンスペースの敷地境界や駐輪場の壁面に高さ10メートル以上のグリーンウォールを設置するとともに、8階北側低層部に屋上庭園を設けました。屋上庭園は一般に開放され、緑が少ない都心部の人たちに憩いの場を与えています。

京都市南区東九条下殿田町の小中一貫校・凌風学園校舎は、5階のテラス部分に低木や芝生などを植栽し、下階の空調負担を軽減しています。教室棟南側テラスはツル系植物で壁面緑化し、修景と日射負担の軽減に役立てています。

NTT都市開発が東京都渋谷区神宮前で建設工事を進めている商業施設の原宿クエストも、屋上をはじめとする施設の随所に植栽を施す計画です。明治神宮から続く緑をイメージした景観対策が主ですが、サスティナブルな施設とすることも念頭に置いています。

屋外にブラインド設置

京都市下京区丸屋町の龍谷大学龍谷ミュージアムは、屋外にブラインドを設置して外壁を西日から守り、館内温度の上昇を抑えています。ブラインドはセラミック製で、和風のすだれを思わせるデザインです。観光地の西本願寺前に立地することから、京都らしい外観に仕上げています。

また、京都市中京区西ノ京笠殿町の市立朱雀第四小学校校舎は、風の道を作ったり、光を取り込んだりする京町家の知恵を生かして過ごしやすい工夫を凝らした校舎です。北校舎では日射調整のため、花壇から伸びた植物が緑のカーテンを形成するように工夫しています。

日本初のLEEDプラチナ認証

日本で初めてLEEDの最新バージョン「V4」でプラチナ認証を受けた建物が、茨城県取手市寺田にある準大手ゼネコン・前田建設工業のICIラボエクスチェンジ棟です。

建設地の恵まれた自然環境と高効率機器を最大限に活用、エネルギー効率の最適化や優れたオフィス環境を実現しました。エコ建材をフル活用しているのも特徴の一つで、CASBEEのSランク認証も受けています。

建築件数はさらに拡大へ

グリーンビルディングの建築は今後、さらに増えそうな状況です。社会はどう変化していくのでしょうか。

建築物からの二酸化炭素排出抑制が課題に

温暖化対策でこれまで注目されてきたのは、大量に二酸化炭素を排出する発電所や大工場、自動車などでした。しかし、温暖化がさらに進行している以上、建物からの排出抑制を大目に見ることができなくなってきています。

途上国の急発展に伴い、世界の建築物総床面積は今後も増え続けると予想されています。建築物も否応なく温暖化対策を迫られそうです。

建築費は割高も生産性が大きく向上

環境に配慮した建築物はコストが高くなりがちです。これがこれまでグリーンビルディングの普及を妨げてきたわけですが、米国では生産性が大きく向上するというデータもあります。

さらに、環境に配慮した建築物が増えれば、一般の人の建築物に対する評価基準に環境配慮が加わるでしょう。環境配慮が一流建築物の証しとなるのは、そう遠くない時代の話なのです。

民間マンションなどへもやがて波及

現在、グリーンビルディングの普及は大企業のビルや大型商業施設、公共施設などが中心です。しかし、民間のマンションなどにも徐々に波及を始めています。この大きな流れは、もはや止められないようです。

→12_「sdgsマンション」の記事へリンク

個人投資家も今から知識の習得を

環境にやさしい建物の建築はこれからもっと広がっていくでしょう。大手業者のマンションなどにもこの傾向がより強くなれば、中小業者や個人経営のマンションも対抗しなければなりません。これからマンションの1棟経営に乗り出そうとするのなら、今から知識を集めておく必要がありそうです。