日本が地震の活動期に入り、地球温暖化が進行したせいからか、地震や水害など大きな災害が近年、国内で頻発しています。マンションは木造家屋などと比べ、丈夫な建物ですが、被災すればエレベーターが停止して高層階が孤立するなど、マンションならではの問題を抱えています。災害時に困らないようにするには、どのような準備をしておけばいいのでしょうか、ポイントをまとめてみました。
日本各地で頻発する地震や水害
大きな災害発生のニュースがこのところ、相次いでいます。災害発生の状況を振り返ってみましょう。
地震大国日本、各地で相次ぐ被災
日本は地震や火山活動が活発な環太平洋変動帯に位置しています。このため、国土面積が全世界の約0.25%しかないにもかかわらず、地震発生回数は18.5%を占めます。神戸市に大被害を与えた1995年の阪神・淡路大震災以降も、2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震と数年おきに大地震が発生しました。
今後、最も心配されているのが南海トラフ巨大地震です。静岡県沖の駿河湾から宮崎県沖の日向灘まで続くフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界線付近を震源とする巨大地震で、過去におおむね100年前後の間隔を置いて発生してきました。政府の中央防災会議は静岡県以西の太平洋側を震度6~7の揺れと高さ10メートル以上の津波が襲い、東日本大震災以上の被害が出ると推計しています。

温暖化進行し、水害も頻発
地球温暖化で台風が大型化し、大規模な水害が多発すると予測されてきました。どうやらその予測は当たったようで、2019年の台風19号でタワーマンションが並ぶ川崎市中原区の武蔵小杉駅周辺、2020年の集中豪雨による球磨川氾濫で熊本県人吉市と球磨村が水没しました。
水害を頻発させているのは、これまで想定していた以上の降水量増加です。気象庁によると、1時間降水量50ミリ以上の年間発生回数は2012~2021年で平均327回ありました。1976~1985年の平均226回に比べ、1.4倍に増えています。
家具転倒や停電で大きな被害
マンション内にいるときに大地震が発生すれば家具の転倒でけがをすることがあるほか、ドアが開かなくなったり、エレベーターが動かなくなったりして閉じ込められる危険があります。外出していれば公共交通機関がストップして帰宅できない人が出るでしょう。大津波が来れば低層階で多くの人命が危機にさらされます。
水害が発生すれば家屋の浸水被害が起きます。その後、水道や電気、ガスなどライフラインが遮断され、復旧まで不便な生活を強いられます。

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マンション防災、ここがポイント
マンションの防災はどのようなことをすべきなのでしょう。地震を例に取り、災害発生前、発生時、発生後に分けて解説します。
事前の準備をどうする
地震で大きな揺れに襲われたとき、心配なのはタンスなど家具の転倒と窓ガラスの飛散です。家具には固定金具をつけて転倒を防止します。ベッドやふとんを敷く位置の近くに倒れる可能性がある家具を置かないようにしましょう。テレビなど大きな家電製品はできるだけ低位置に置きます。
窓ガラスの飛散対策にはカーテンが有効です。食器棚などは飛散防止フィルムを張るとよいでしょう。ベッドやふとんのそばにスリッパを置くと、ガラスが飛散した室内を安心して歩くことができます。
災害発生時の対応は
揺れの最中は家具や窓ガラスから離れ、できればテーブルの下などに隠れます。エレベーターに乗っている最中に揺れた場合は、すべての階のボタンを押してドアが開いたらすぐに外へ出ましょう。閉じ込められてしまったら、非常ボタンを押し続けます。
揺れが収まれば、室内を見渡して被害状況を把握するとともに、安全な場所を確保します。家族の安否と火の確認も忘れずに。出入り口を確保したら、携帯ラジオなどで正確な情報収集に当たります。
ライフラインが絶えたら
東日本大震災では3日以内に電気の約7割、1週間以内に水道の約7割が復旧しています。避難所へ行かずに自宅で暮らすとすれば、水道の復旧まで持ちこたえられるよう水の確保を第一に考えるべきです。
断水すると、水洗トイレが使えなくなるため、非常用トイレを用意しておくと安心です。非常用トイレがない場合は、ビニール袋2枚と新聞紙を用意します。まずトイレの便座を上げて1枚目のビニール袋を敷き、次に便座を下ろして2枚目のビニール袋を敷きます。新聞紙を丸めて中へ投入し、用を足します。

マンションの防災対策として食料の備蓄も

マンション暮らしで忘れてはならないのが物資の備蓄です。東京都の資料から備蓄の目安と方法を紹介します。
備蓄しておくべき物資の量は
大災害が起きればしばらくの間、流通がストップすることも考えられます。東京都は7日程度の備蓄を呼び掛けています。水は1日1人3リットル必要です。食料は無洗米なら4キロ、レトルトごはんなら27食を備蓄しておきましょう。缶詰9缶、野菜ジュース9本、お菓子3パック、レトルト食品9個程度などを用意すべきとしています。
生活用品で備蓄量を示しているのは、ポリ袋1箱、ラップ1本、ティッシュペーパー4箱、トイレットペーパー4ロール、除菌ウエットティッシュ120枚、カセットコンロ2台など。女性がいれば生理用品、乳幼児には粉ミルクや液体ミルクが必要です。懐中電灯、携帯ラジオ、乾電池は必需品といえます。
ローリングストックってどうやるの
災害を想定して食料などを備蓄する方法にローリングストックがあります。普段から少し多めに食料を買っておき、古いものから食べていきます。食べたら食べた分だけ買い足しし、常に十分な備蓄状態を維持するわけです。
この方法は食料以外の生活用品にも応用できます。古いものから使い、使った分を買い足しておくのがポイントです。こうすれば食料の賞味期限切れを防ぐこともできます。
災害時の電力確保に向けた防災対策の例
災害時の非常用電力として太陽光発電が注目されています。防災用の活用例を見ていきましょう。
ライフライン確保に非常用電力
大災害が発生すればマンションへの電力供給が止まることがあります。この際、力を発揮してくれるのが非常用電力としての太陽光発電です。太陽光発電を自立運転モードに切り替えることで停電時も電気を使用できます。
規模が大きいマンションだと太陽光発電だけですべての電力をまかなうことは難しいのですが、生活に最低限必要な電力の供給なら可能でしょう。夜間や雨の日のために蓄電池も用意しておけば、なおさら効果的です。
大手業者から災害に強いマンション登場
最近は大手住宅会社から太陽光発電と大容量蓄電池などをセットにしたマンションが登場するようになってきました。省エネルギーや環境保護を狙いとしたマンションですが、災害時の非常用電力としての活用も頭に入れています。
賃貸マンションでもオーナーの判断で太陽光発電や蓄電池を導入し、大手住宅会社のマンションと同様の対応が可能です。地球にやさしく災害に強いマンションは、入居者募集にも力を発揮してくれるでしょう。
入居者が独自にベランダへ太陽光設置
入居者がベランダに太陽光発電を設置することもできます。以前は太陽光パネルやバッテリー、インバーターなどをそろえてケーブルで接続しなければなりませんから、少し大変でしたが、今は太陽光発電セットが販売されています。
これをベランダに設置すれば、非常時も最低限の電気が使用できます。スマートフォンなどこまめな充電が必要な機器も使用可能です。万一のときに備えるうえでは心強い味方になってくれそうです。
マンション経営に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。
防災対策の基本は事前の準備
災害はいつやってくるか分かりません。ただ、被災時に必要な備えは過去の災害をヒントにして備えることができます。非常用電源の確保や家具の転倒防止、食料、水の備蓄など事前に準備しておけば、被災してライフラインが途絶えてもマンション内の自室を避難所代わりにして復旧を待つことができます。事前の準備こそが防災対策の基本です。
