表面利回りの計算方法は?数字が異なる表面利回りと実質利回りの違いも解説
不動産投資の記事を読むと、利回りという言葉がしばしば登場します。投資金額に対し、年間でどれくらいの収入になるのかを「%」で示したものです。しかし、利回りには大きく分けて表面利回りと実質利回りがあり、数字が異なっています。うっかり表面利回りだけをみて物件を購入すると失敗することも考えられるため、それぞれの違いを理解することが大切です。表面利回りと実質利回りの計算方法、利回りを上げる秘策を紹介します。
表面利回りと実質利回りの計算方法
それでは、まず表面利回りと実質利回りの計算方法から解説していきましょう。
表面利回りは購入金額と家賃収入で計算
表面利回りは物件購入のパンフレットなどによく記載されている数字で、物件価格に対してどれくらいの家賃収入が得られるかを表す年間の見込み収益です。この数字が高ければ高いほど、多くの収益を得られる可能性があります。
仮に10%と表示されていれば10年、5%なら20年で投資金額に見合う家賃収入を得られることになります。計算式は「表面利回り=(年間収入÷物件購入価格)×100」です。
しかし、表面利回りは、購入にかかった経費や毎年の維持費、税金などは考慮されていません。実際には、管理費などがかさんで表面利回りほど収益を上げられないこともあります。表面利回りだけを投資の判断材料にすると、大きな損失を出すことも考えられるわけです。あくまで表面的な収益性を示した参考数値とすべきでしょう。
実質利回りは諸経費を考慮して計算
実質利回りは年間の家賃収入から管理修繕費や固定資産税、火災保険料、各種手数料など、諸経費を引いた額を基に計算します。計算式は実質利回り=「(年間収入-年間諸経費)÷(購入金額+購入時の諸経費)×100」です。経費などが考慮されたことで表面利回りに比べ、より現実に近い形で利益率をはじき出せると考えられています。ときには維持経費が大きく、表面利回りと大きな差が出ることもあります。
家賃を上げれば利回りは向上しますが、高い家賃を取れるマンションとなると、建築費も高くなりがちです。上げすぎると空室が増え、結果的に全体の家賃収入が下がることになりかねません。利益率だけで投資を決めるのではなく、空室を最小限に抑えられる家賃かどうかなど、他の要素も慎重に検討する必要があります。
期待利回りなど、その他の利回りは
利回りには表面利回り、実質利回りだけでなく、想定利回り、現行利回りがあります。想定利回りは部屋が満室と仮定した利回り、現行利回りは現在の入居状況で計算した利回りです。広告パンフレットなどに掲載された利回りには、満室利回りが使用され、実態より高い数字が掲載されることもあるため注意が必要です。
このほか、期待される家賃年収から不動産の購入価格を割ることで求められる期待利回り、実際にいくらで取引されたかを意味する取引利回りという言葉もあります。それぞれの利回りの意味をしっかりと頭に入れておくことが大切です。
投資物件の平均的な利回りはどれくらい?

全国の平均的な利回りはどれくらいなのでしょうか。日本不動産研究所の不動産投資家調査を基に紹介します。
期待利回りの平均値、東京城東地区で4.1~4.3%
日本不動産研究所がまとめた2022年4月現在の不動産投資家調査によると、墨田区、江東区など東京駅、大手町駅まで15分以内の城東地区は、ワンルームが期待利回り4.1%、取引利回り3.9%、ファミリータイプが期待利回り4.3%、取引利回り4.0%です。
目黒区、世田谷区など渋谷駅、恵比寿駅まで15分以内の城南地区は、ワンルームが期待利回り4.0%、取引利回り3.7%、ファミリータイプが期待利回り4.1%、取引利回り3.8%です。
期待利回りの平均値は城東、城南地区ともリーマン・ショック後、徐々に低下しています。投資意欲の高まりによる不動産価格の値上がりが背景にあるとみられています。
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地方は東京より期待利回りが高め

地方の期待利回りは札幌地区がワンルーム5.3%、ファミリータイプ5.4%、名古屋地区がワンルーム4.8%、ファミリータイプ4.9%、大阪地区がワンルーム4.5%、ファミリータイプ4.7%、福岡地区がワンルーム4.8%、ファミリータイプ5.0%。いずれも東京城東、城南地区より高い結果が出ました。
首都圏に比べ、物件取得価格が安いため、利回りがよくなっているのです。ただ、地方は人口減少の影響が出て空室リスクが急激に高まっています。入居者を集めるための広告費も、首都圏より割高になりがちです。利回りの高さだけを取り上げて首都圏より有利な投資先と単純に考えることはできません。むしろ、地方では利回りより空室リスクを優先して考えるべきでしょう。
マンション経営を成功に導く方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
投資物件の利回りを計算する際の注意点
次に、投資物件の利回りを計算する際の注意点をみていきましょう。
表面利回りより実質利回りを重視する
中古物件の購入価格は新築より大幅に安いのが普通です。その結果、表面利回りは新築よりずっと高くなります。その一方で、維持経費は新築より多くかかります。空室リスクも新築より高いと考えてよいでしょう。表面利回りに潜む落とし穴の一例です。
これに対し、実質利回りは維持経費などが考慮されているため、表面利回りより現実に近い数字となっています。物件を選ぶ際には、掲載されている情報を基に自身で実質利回りを計算してみることが大切です。
利回りだけで判断しない
さまざまな住宅情報会社やマンション情報サイトが理想の利回りを打ち出していますが、3%から10%までかなりのばらつきがみられます。継続した賃貸収入を重視して空室リスク抑制に重きを置くところは低い利回りを提示し、収益重視のところは高い利回りを掲げているようです。
ただ、利回りはあくまで判断材料のひとつであり、すべてではありません。利回りの数字だけを追いかけるのではなく、建物の立地条件や近隣のマンションにない付加価値、建物の劣化状況などさまざまな要素を地に足をつけて慎重に検討することが大切です。
利回りを維持できるか検討する
利回りは建物の経年劣化とともに下がっていきます。建物が古くなると入居者が少なくなり、家賃を下げざるを得ないからです。修繕やリフォームも必要になるため、維持経費がかかります。
しかし、高い入居率を維持できれば、家賃収入が大幅に減ることはありません。首都圏や大阪市、福岡市の中心部など人口流入が続く地域の物件購入は、空室リスクの軽減に役立つはずです。どうやってマンションの魅力を保ち、長期的に利回りを維持するのか、投資物件購入の際にしっかりと考えておく必要があります。
マンション経営に関しては、この記事で詳しく紹介しています。
太陽光発電が利回り向上にひと役

マンションの利回りを上げる方法はいくつかあります。適切な建築費にすることや適切な管理方式の選択、1階への店舗誘致などです。余分な経費を抑え、マンションの付加価値を上げようというわけです。
太陽光発電も付加価値アップにひと役買ってくれそうです。一般住宅より広い屋上スペースを活用し、太陽光パネルを設置してコストを抑えることが可能です。維持管理の手間もそれほどかかりません。売電収入を各戸に分配したり、管理費を下げるのに使ったりするなど、工夫次第でさまざまな方法が考えられます。
アパートの空室対策については、この記事で詳細に解説しています。
表面利回りだけで判断せず、実質利回りも計算しよう
表面利回りは年間収入に対する物件購入価格の割合を計算する方法です。購入にかかる経費や物件の維持管理費などは考慮されていないため、表面利回りだけで投資に向いているのかを判断することはできません。投資物件を選ぶ際には実質利回りも計算してみる必要があります。将来的にどのように利回りを維持するのかも検討したうえで、投資判断をしましょう。
