マンションに蓄電池導入、デメリットを上回る大きなメリット
太陽光発電と蓄電池をセットで導入するマンションが、大都市圏で増えています。蓄電池があれば夜も電気を自家消費できるからです。地球規模の気候変動で環境保護の必要性が叫ばれ、電力価格が高騰を続ける時代が来たことを考えると、今後も蓄電池付きマンションの数が増えそうです。太陽光発電とセットで導入する蓄電池のメリットを紹介します。
太陽光発電、蓄電池付きマンション続々と

太陽光発電と蓄電池をセットで導入したマンションが全国で続々と生まれています。導入した電力をどのように利用しているのでしょうか。
電力会社へ固定価格で売電
まず考えられるのが、国の固定価格買取制度を利用して売電する方法です。オーナーにとっては家賃収入以外に売電収入が入ってきます。固定価格買取制度が始まった2012年度当初は、出力10キロワット未満の住宅用で1キロワットあたり42円、出力10キロワット以上の産業用で40円+税の高値で買い取ってくれました。これはマンション経営を安定させる収入源でした。
しかし、2022年度の買取価格は住宅用(10キロワット未満)が1キロワットあたり17円、産業用(10キロワット以上50キロワット未満)が11円まで下がっています。10円未満が多い市場価格より高く売電できますが、以前のようなうまみはなくなってしまいました。
照明など共用部の電源に活用
多くのマンションで進められているのは、電力の自家消費です。2010年に東京都世田谷区で分譲を開始したマンションは、共用部の電力に使用しています。このマンションは5階建て総戸数51戸で、業界で初めてマンションに太陽光発電と蓄電池をセットで導入したことで話題になりました。
昼間は共用部照明の全消費電力年間1万キロワット時のほぼ全量を太陽光発電でまかなっています。夜間は昼間に蓄電池へ貯めた余剰電力を活用し、共用部照明などに使用しています。
入居者が各戸で利用
最近は入居者が太陽光発電でつくった電気を各戸で使用するマンションが出てきました。2017年に名古屋市千種区で分譲を始めた地上3階建て全12戸のマンションは、1世帯あたり約4キロワットの太陽光発電と燃料電池のエネファームで各戸に電力を供給しています。
和歌山県和歌山市に2021年登場した3階建て全9戸の賃貸マンションは、全戸に入居者売電が可能な太陽光発電を備えています。
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太陽光発電、蓄電池導入のメリットは

マンションに太陽光発電と蓄電池をセットで導入するメリットは、電気代の節約など多方面にわたります。一つひとつ見ていきましょう。
電気代の節約が可能
マンションに蓄電池があれば、太陽光発電でつくった電気を昼夜関係なく使えます。当然ながら、電気代の節約につながります。最近、世界的なエネルギー不足で電気料金が高騰しているため、エネルギー危機を乗り切る方策にもなるでしょう。
蓄電池は太陽光発電がなくても電気代節約に貢献してくれます。電気料金は一般に夜が安く、昼間が高いものです。安い時間帯に蓄電池に電気を貯め、高い時間帯に貯めた電気を使うわけです。
屋上、屋根を有効活用
マンションの屋上や屋根は安全のため、開放されないケースが大半です。このため、広い場所でありながら、ほとんど活用されていません。太陽光発電をマンションに設置する場合、設置場所の大半が屋上か屋根です。何も生み出していない屋上や屋根を有効活用し、電気をつくる場所に変えられるのです。
最上階の部屋は太陽光パネルを設置することで断熱性が上がります。これもメリットの一つといえそうです。
付加価値向上で入居者確保
マンションの入居者獲得競争で最近、よく耳にする言葉があります。「創エネ・省エネ」や「環境にやさしい」です。入居者確保の宣伝文句に太陽光発電や蓄電池が使われるようになってきました。
都心部の人気マンションでは、高速インターネット回線や宅配ボックス、オートロックなどが必需品ですが、こうした設備を導入することでマンションの付加価値が上がります。やがて太陽光発電や蓄電池もこの中に入ることでしょう。
災害時の非常用電力にも
太陽光発電と蓄電池があれば、災害時の非常用電力を確保できることも大きなメリットです。災害時にマンションの住民は停電した室内に取り残され、不便な暮らしを強いられることが問題になっています。
神奈川県によると、家庭用に販売されている容量7キロワットの蓄電池で確保できる電力は400ワット程度です。リビングの照明とテレビ、冷蔵庫、携帯電話の充電器を同時に約12時間使用できます。これだけあれば電力供給が再開されるまでの間、どうにか生活していけそうです。
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太陽光発電、蓄電池導入のデメリットは

太陽光発電と蓄電池の導入にデメリットがないわけではありません。どんな部分でしょうか。
高額になる初期費用負担
太陽光発電設置の初期費用は一般に、出力1キロワットあたり20~30万円といわれています。屋根に設置する際は足場を組む必要があり、追加料金が求められます。規模が小さい住宅用で少なく見積もっても100万円以上かかります。規模が大きい産業用は1キロワット当たりの費用が住宅用より安い傾向がありますが、パネルの枚数が増えるため負担総額がさらに大きくなります。
太陽光発電の設置費用は年々、少しずつ下がってきています。それでも、マンションに導入するとなると、決して軽い負担ではありません。
全世帯に電力供給が困難
戸建て住宅と異なり、マンションは規模が大きくなるに伴って全世帯に電力供給するのが難しくなります。マンションの屋上や屋根が広いといっても、世帯数が増えれば太陽光パネルの面積が足りなくなるからです。
ただ、これには別の対応策が存在します。太陽光発電でつくり、蓄電池に貯めた電気を共用部の照明などに活用することです。その結果、マンションの管理費が安くなれば、入居者に喜ばれるでしょう。
ソーラーパネル付き蓄電池で自家発電

ここまでは主にマンションのオーナー側が太陽光発電と蓄電池を導入するとして話を進めてきましたが、入居者がベランダに設置することも可能です。
ベランダに太陽光発電で電力自給
以前はベランダに太陽光発電を設置するとなると、壁に穴を開けたり、分電盤の工事をしたりする必要がありました。オーナーの許可を得るのが大変なうえ、無断で工事をすると退去を求められることになりかねません。このため、なかなか手を出しにくかったのが実情です。
ところが、最近はソーラーパネル付き蓄電池という新商品が一般用に販売されるようになりました。これをベランダに設置するだけで発電が始まり、蓄電池に電気がたまっていきます。入居者が手軽に太陽光発電を利用できるようになったのです。
ポータブルでも最低限の電力を確保
ソーラーパネル付き蓄電池はパネルの出力や蓄電池の容量で価格がさまざまですが、価格比較サイトで検索してみると、1万円台から商品が並んでいます。
出力や容量の小さいものはそう多くの電力を確保できませんが、必要最小限の電力を手に入れられます。災害時の非常用電力や電気代の節約などで力を発揮してくれそうです。
蓄電池設置でマンションの魅力向上を
総務省の「住宅・土地統計調査」によると、全住宅に占めるマンション、アパートなど共同住宅の割合は東京都で7割、大阪府で5割を超えました。大都市圏の住民の多くが共同住宅で暮らす時代を迎えようとするなか、太陽光発電と蓄電池を設置することでマンションの魅力が大きく向上します。その結果、近隣のライバルに差をつけ、入居者を確保できるでしょう。
