アパート修繕費の相場はいくら?老朽化による入居者減はこうすれば防げる
老朽化したアパート経営で頭が痛いのは空室リスクと修繕費の増加です。計画的な修繕をせずに放置していれば、補修の連続となり、費用がかさみます。しかも、新規入居者の獲得が難しくなり、空室の増加という最悪の事態に陥りかねません。修繕費の相場を知り、計画的に修繕を進めることが、老朽化したアパートの生き残りに欠かせません。国土交通省のガイドブックを参考に対応策をまとめました。
大きく分けて4つある修繕の種類
アパートの修繕は大きく分けて4種類あります。それぞれにかかる費用と内容が異なります。一つひとつ見ていきましょう。
1.入居者退去時の原状回復
1つ目は原状回復です。アパートの部屋を入居時の状態に戻すことで、賃貸借契約が終わり、入居者が退居したときに生じます。通常はハウスクリーニングを実施し、その代金が入居の際に預けた敷金から引かれます。
ハウスクリーニングだけなら費用の相場はワンルームで2万円前後〜、4LDKで5、6万円〜です。
2.不具合発生時の補修
2つ目は不具合による補修です。水道やトイレの水漏れ、備え付けエアコンや給湯器の故障などすぐに修理できるものから、大規模な雨漏り、地震など災害による損壊までいろいろなケースが考えられます。費用は数万円から100万円単位までかなり幅があります。
大規模な雨漏りなどはこまめに点検し、大規模修繕をきちんと実施することである程度防げます。
3.補修を未然に防ぐ予防修繕
3つ目は予防修繕です。これは突発的な修理を事前に防ぐための修繕です。大規模修繕と同じ趣旨で行うものですが、一般に大規模修繕より軽微な修繕を指します。定期点検などで近いうちに何らかの問題が発生することが分かったときに実施します。費用は修繕する場所により、数万円から数十万円まであります。
4.最も費用負担が大きい大規模修繕
最後に大規模修繕です。おおむね10~30年ほどの周期で実施されますが、外壁の改修や屋根、屋上、ベランダの防水、バルコニーや通路の補修など修繕範囲が建物全体に広がります。その分、費用も数百万円から千万円万円単位とアパート経営で最も大きい支出を伴います。工事は足場を組んで進めることが多く、期間も長期にわたります。
修繕が必要になる時期は建物の場所によって異なりますが、あまりに工事期間が長引くと入居者の生活に影響が出かねません。事前に計画を立て、なるべく短期間で終えられるよう業者と調整しておきましょう。
想像以上に大きい修繕費の負担

アパートの修繕費を積み重ねていくと、その総額は想像以上に大きくなります。新築から30年でどれくらいの費用がかかるのでしょうか。
築後30年間の費用目安は
国土交通省の計画修繕ガイドブックでは、新築から30年間の修繕費用をシミュレーションしています。鉄筋コンクリート4階建ての賃貸住宅で、間取りが1LDKと2DK、20世帯が入居しているとの想定です。
その結果、出てきた数字は全体で約4,490万円です。各戸当たりにしても約225万円かかっています。鉄筋コンクリート建ての建物の法定耐用年数は47年ですから、30年目以降も修繕は必要です。老朽化とともに修繕箇所が増え、さらに費用がかかると考えるべきでしょう。
同様に木造2階建て10戸入居(1LDKと2DK)は30年間で約2,160万円、鉄筋コンクリート3階建て10戸入居(1K)は約1,770万円、木造2階建て10戸入居(1K)は約1,740万円と試算しています。
確定申告時にどう処理する
確定申告では収入から必要経費を差し引き、課税対象となる収益を計算します。外壁の塗装や壁紙の張替え、水回りの修理など修繕に使った費用の多くは経費として計上できますが、なかにはできないものも存在します。システムキッチンへのリフォームや間取りの改装などです。これらは物件の価値を高めるための資本的支出に該当するからです。資産は減価償却で各年度の経費に算入されます。
経費か資本的支出かの判断が難しい場合の判定基準が設けられています。判定基準のひとつは、少額もしくは修繕周期の短いものです。国税庁は20万円未満の費用で済むもの、3年以内の周期で実施されるものを経費として挙げています。
オーナーと入居者、負担はどちら
大規模修繕などの修繕費は基本的に入居者が負担することはありません。しかし、原状回復については入居者が負担しなければならないときもあります。
民法では、入居者に責任がある損傷は入居者が原状回復の義務を負うと定めているのです。引っ越し作業で発生したキズやタバコによる焼け焦げなどです。日常生活を送るうえでやむを得ない日照による畳の変色、家具を置いた跡のカーペットのへこみなどは該当しません。
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個所ごとの修繕・交換時期と費用は

アパート内の設備にはそれぞれ寿命があります。このため、一定の時期が来れば修繕や交換をしなければなりません。時期と費用の目安をまとめてみました。
エアコンは7~10年、ユニットバスは10~15年
エアコンは7~10年とされます。その時期を過ぎると、故障が増えてくるのです。修理費は最低1万5,000円ぐらいからですが、交換になると安くとも5万円以上はかかります。特に室外機の故障は修理費が高くつきます。
ユニットバスは10~15年、ガスコンロは8~10年、トイレのウォシュレットは7~10年くらいが目安です。このうち、ユニットバスを交換すると50~150万円必要になります。
屋上防水と外壁補修は10~15年で
屋上やベランダの防水工事、手すりや階段の防錆工事、外壁補修はいずれも10~15年で実施すべきとされます。これは大規模修繕で実施される工事で、屋上防水で100平方メートル当たり100万円前後必要になります。
これらに不具合が生じると、アパートの住み心地に大きな影響を与えます。この工事の実施時期も考慮に入れ、大規模修繕工事の計画を立てるとよいでしょう。
太陽光発電も定期でメンテナンス
太陽光発電はメンテナンス不要というイメージを持つ人が多いようです。しかし、メンテナンスをしなければ、発電効率が次第に低下する可能性があります。経済産業省は4年に1回程度の点検を推奨し、一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)と一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)は保守点検のガイドラインを公表しています。
発電した直流の電気を家庭で使う交流に変換するパワーコンディショナーは、10~15年で交換時期を迎えます。費用は工事費込みで20~30万円が相場です。
老朽化防止に計画修繕

老朽化して古いアパートになってしまえば、入居者を見つけるのが難しくなります。それを防ぐキーワードが計画修繕です。
設備交換時期を予測し、事前に準備を
老朽化の進行を抑えるために最も効果があるのは、大規模修繕の適切な実施です。それに合わせて資金を確保するとともに、設備の交換時期もしっかりと把握して計画的に実施しましょう。
修繕時期が遅れれば補修費用がかさむだけでなく、外観の劣化や競争力の低下を招き、入居者が減少してしまいます。さらに、それが資金確保の足かせになり、余計に競争力を低下させる負のスパイラルに陥ってしまいます。国交省は最悪の事態に陥らないよう計画修繕を呼び掛けています。
大規模修繕前以外も定期的に点検
点検は不具合や損壊の前兆を知る重要な作業です。大規模修繕の前には必ず点検をしますが、それ以外の時期にも定期的に点検を実施することが大切です。早めに見つかれば、部分的な修繕で済み、コストを抑えることが可能になります。
修繕後はすぐさま次の準備に
大規模修繕が終わったからしばらく安泰というわけにはいきません。修繕は一度だけで終わりではないのです。次の修繕に備えて準備を始めると同時に、次の修繕で役立つよう資料を保管しておきましょう。
賃貸住宅の魅力維持はこまめな修繕から
建物としてのアパートは人間の体に似ています。管理を怠れば老朽化が加速し、やがて不動産物件としての寿命を終えてしまいます。しかし、適切な補修を繰り返せば、長く入居者に魅力を与えられる物件として生きることができるのです。こまめな修繕こそが魅力維持の決め手と覚えておきましょう。
