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カーボンプライシングは脱炭素社会を実現する?その動向と課題、具体的な取り組み手法をまとめました

  • ESG投資
カーボンプライシングは脱炭素社会を実現する?その動向と課題、具体的な取り組み手法をまとめました

近年、地球温暖化対策やカーボンニュートラルを実現するための手段として、カーボンプライシングが注目を集めています。この記事では、カーボンプライシングとは何か、注目される背景やその具体的な手法、懸念するべき点などをまとめました。

カーボンプライシングとは

カーボンプライシングとは、二酸化炭素などの温室効果ガスに値付けをする仕組みです。
近年、地球温暖化はますます加速の一途をたどっています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「第6次評価報告書」によると、過去120〜150年の間に陸域と海上を合わせた世界平均地上気温は1.07度上昇し(※)、地球温暖化の主な原因が人間活動によるものであることが再度確認されています。
※1850~1900年から2010~2019年にかけて、観測による世界平均気温の上昇度は1.07度と評価されています。
さらに、平均海面水位は過去120年で20cm上昇し、近年になるほど上昇傾向が加速しています。山岳地域や極地では積雪や氷河・氷床が広範囲にわたって減少していることが観測されており、地球温暖化への対応は国際社会全体が最優先で取り組むべき課題です。
カーボンプライシングにより炭素に値付けがされれば、温室効果ガスを排出する企業に対し、排出量に応じて金銭的負担を求めることが可能になります。これにより、温室効果ガスの排出にともなう社会的な負担を公平に求めることが容易になるでしょう。さらに、支払う金銭負担を減らすために温室効果ガス削減に取り組むなど、企業の行動を変容する手法になるとして期待が寄せられています。
世界銀行が発行した資料「Map of carbon taxes and ETSs 」によると、2022年1月の段階ですでに68の国・地域がカーボンプライスの仕組みを導入しました。この数は10年間で3倍以上にも増えており、全世界で排出される温室効果ガスの23.11%がカーボンプライスによってカバーされています。
二酸化炭素削減の取り組みとして注目を集めるネットゼロについては、以下の記事でも詳しく説明しています。ぜひあわせてご確認ください。
参考記事:「ネットゼロとは?カーボンニュートラルとの違いや世界の取り組みを紹介」

カーボンプライシングの5つの手法

カーボンプライシングは温室効果ガスに値付けをする仕組みですが、その具体的な制度や取り組みにはさまざまなものがあります。ここでは代表的な5つの手法をご紹介します。

炭素税

炭素税とは、燃料や電気などを利用して排出された二酸化炭素の量に対して課税する制度です。企業など課税される排出主体からすれば、支払うコストが明確なため事業活動へどの程度影響があるかといった見通しが立てやすくなります。また、政府も安定的な財源を確保できることで、再生可能エネルギーの導入支援などに活用しやすいというメリットがあります。
一方で、温室効果ガス排出量をどの程度削減できるかは、税額に対する企業の反応次第です。そのため、二酸化炭素排出量のコントロールという点では、どこまで効果があるか不透明という側面もあります。

排出量取引

排出量取引とは、企業ごとに一定期間の排出量の上限を設定し、必要に応じて排出権の取引を認める制度です。二酸化炭素を多く排出している企業は排出権を得るために多くのコストを支払う必要があり、逆に排出量の少ない企業は排出権を売ることで利益を得ることができます。
排出権の具体的な価格は市場における需要と供給に左右されるため、企業にとっては事業活動への影響を予見しにくいでしょう。また、炭素税と比べると制度の設計・運用が複雑になるため、政府にとっても行政コストがかかるというデメリットがあります。

クレジット取引

クレジット取引とは、二酸化炭素の排出量削減価値を証明書にし「クレジット」として取引を行う取り組みです。再生可能エネルギーや原子力など二酸化炭素を排出せずに作られた電力の付加価値を売買する「非化石証書取引」や、森林経営や省エネ設備の導入により削減された二酸化炭素量を付加価値とする「Jクレジット」などがあります。

炭素国境調整措置

炭素国境調整措置とは、輸出入の際に2国間の二酸化炭素価格の差を調整し、差額を事業者に負担させる仕組みです。二酸化炭素の排出量削減に取り組んでいる国がいくらカーボンプライシングを導入しても、環境対策が十分でなく二酸化炭素の排出コストが低く設定されている国へ生産拠点を移し生産活動を続けてしまうと、地球全体で排出量削減を実現することはできません。
炭素国境調整措置を実施することで、環境対策が十分でない国へ生産拠点が流出することを防いだり、二酸化炭素の排出そのものが他国へ押し付けられたりすることを抑制する狙いがあります。

インターナル・カーボンプライシング

インターナル・カーボンプライシングとは、企業内で独自に二酸化炭素排出量に価格をつける取り組みです。これにより、その企業が二酸化炭素の排出量を減らすためにどこまでのコストを許容するかが可視化されます。
その企業に投資する際の判断材料にしたり、CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)の評価項目として参照したりするなど、経営ツールのひとつとして活用する企業が増えています。

カーボンプライシングにおける懸念

カーボンプライシングは、二酸化炭素の排出をコストと結びつけることによって、企業や社会に対してCO2削減の取り組みを自発的に促すことができるメリットがあります。しかし一方で、以下のような懸念点もあります。

民間企業への負担が増加する

カーボンプライシングを導入することでまず懸念されるのは、民間企業への負担が増加するという点です。もともと環境保護への取り組みは、設備投資や原材料の調達などの点でコスト増につながる側面があります。さらに、炭素税や排出量取引による負担が加わることで製造コストが上がり、企業の国際的な競争力低下を招く危険があるとされています。
また、コスト面での負担が増して企業に余力がなくなることで、環境分野をはじめとする投資が行われなくなることも懸念点です。結果として本来カーボンプライシング導入の狙いのひとつでもあるイノベーションを阻害してしまうとの指摘もあります。

制度設計が難しい

カーボンプライシングに関する取り組みは先に述べたようにさまざまなものがありますが、導入の際に制度設計が難しいことも懸念点です。取り組みとしては比較的導入しやすいといわれている炭素税の導入でさえ、どこまで削減効果があるかは不透明という指摘もあります。また、現在の排出量や二酸化炭素排出を抑える技術の発展状況のバランスを考慮しつつ、企業にかかる負担をいたずらに増やさない制度づくりを行うのは簡単ではありません。
日本でもすでにカーボンプライシングの導入に向けた議論が続けられています。しかし、導入に前向きな姿勢を示している環境省に対し、経済産業省は企業負担が増えることに慎重な姿勢を示しており、足並みがそろっていないのが実情です。

環境保護と経済を関連付ける取り組み

カーボンプライシングは「炭素(二酸化炭素)」という目に見えないものに「お金」を結びつけることで、環境保護と経済を関連付け、注目を集める取り組みといえるでしょう。地球温暖化対策やカーボンニュートラルが世界的な注目を集めている今、カーボンプライシングの重要性はますます高まっていくことが予想されます。
カーボンニュートラルについて、詳細は以下の記事でも詳しく説明しています。ぜひあわせてご確認ください。


参考記事:「カーボンニュートラルとは何?用語や現状を分かりやすく解説」