マイクログリッド
(画像=ipopba/stock.adobe.com)

環境系のニュースで「マイクログリッド」というキーワードと接する機会が増えてきました。このマイクログリッドと再生可能エネルギーを組み合わせると、豪雨や台風による大規模停電のリスク軽減にもなります。今後広がる可能性の高い「次世代電力ネットワーク」について学びましょう。

目次

  1. マイクログリッドとは?わかりやすく解説
  2. マイクログリッドの事例集 最新5事例
    1. マイクログリッド事例1:北海道鹿追町「町中心部の重要施設」
    2. 事例2:宮城県東松島町「スマート防災エコタウン」
    3. 事例3:神奈川県小田原市「20万都市のマイクログリッド構築」
    4. 事例4:兵庫県芦屋市「117戸で電力を融通させるシステム」
    5. 事例5:ソニー傘下企業のマイクログリッド向けソフトウェア無償提供
  3. マイクログリッドの重要性がますます高まる可能性大

マイクログリッドとは?わかりやすく解説

マイクログリッドは一般的に「小規模電力網」と訳されます。その中身は、電力の電源と消費施設を一体化させた自治体単位・島単位・建物単位など限られたエリアのエネルギー・ネットワークのことです。自治体単位の場合「エネルギー(または電力)の地産地消」のような表現で紹介されることもあります。

マイクログリッドのはじまりは、1990年代にアメリカで電力網の管理手法として提唱されたことがきっかけです。日本でもマイクログリッドの実証実験が太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーと組み合わせて行われてきました。しかしここに来て助成金などを利用して実用化に踏み切る自治体などが増えてきています。

これまでの電力供給の考え方は「大規模発電所から送電設備を経て遠方にも送れる」というものでしたが、この方式だと災害で送電設備が使えない場合に「広域な停電が起こりやすい」「送電の過程で電力が消失するムダがある」といったデメリットがありました。しかし太陽光発電や風力発電などの普及・進化に伴い、人口の少ない自治体や僻地でも再生可能エネルギー電源を設置しやすい環境になっています。

これを利用して自治体単位などの電気の供給・消費のネットワークを構築すれば、先に挙げたようなデメリットが解消されるでしょう。ただ「電力の地産地消」といってもそのエリアで使う電力のすべてではなく例えば50%程度をまかなう「分散型マイクログリッド」がヨーロッパなどでは主流になりつつあります。

地域の太陽光発電などで作ったり電力会社から供給されたりするなど電源を分散させることで「災害に強い電力環境を作る」という考え方が基本です。

マイクログリッドの事例集 最新5事例

マイクログリッドは、これまでの電力供給・消費の概念とまったく違う仕組みなので実感がわかない人も多いのではないでしょうか。ここでは、5つの事例をもとに理解を深めていきましょう。

マイクログリッド事例1:北海道鹿追町「町中心部の重要施設」

2015年の国勢調査によると鹿追町の人口は5,542人です。この小さな町で地域マイクログリッドを2020年8月からスタートさせました。北海道では2018年9月に発生した北海道胆振東部地震で全域停電(ブラックアウト)が発生し経済や道民の生活が大きなダメージを受けました。そのためマイクログリッドに対する注目度や意識が高いといわれます。

鹿追町でマイクログリッドの対象になっているのは、町中心部の半径300メートルの範囲です。ここには町役場・病院・小学校・認定こども園・市民向けの施設などが集中しているため、万が一電力会社からの電力供給が滞っても町の重要施設を機能させることができます。鹿追町のマイクログリッドの特徴は、通常と災害時で電気の供給バランスを切り替えられることです。

通常は、電力の約3割を太陽光発電でまかない残りの約7割を電力会社の電力供給でカバーしています。万が一大規模停電が発生したときには、電源をマイクログリッド主体に切り替えることが可能です。鹿追町の太陽光発電所には蓄電池が併設されているため、発電量が足りない時間帯などでも安定した電気供給ができます。

他の北海道の事例としては、松前町で風力発電を利用したマイクログリッドが2019年4月から稼働しています。こちらも鹿追町の太陽光発電所と同様に蓄電池を併設することで発電量の不安定さを調整しやすくなっています。

事例2:宮城県東松島町「スマート防災エコタウン」

東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県東松島市には、マイクログリッドを備えた「スマート防災エコタウン」があります。仮に電力会社の発電所からの電力供給がストップしても、最低3日間は普段と同じように電気が使い続けられます。東松島市のマイクログリッドの電源は、エリア内に設置された太陽光発電と大型蓄電池などを組み合わせた設備です。

この設備がカバーする施設は、公営住宅(85戸)・病院・防災拠点となる集会所などになります。事例1と同様に普段は太陽光発電でエリア内の電気の約3割をまかない停電などで電力会社からの電力供給がストップすると自動的にマイクログリッド主体に切り替わる仕組みです。

事例3:神奈川県小田原市「20万都市のマイクログリッド構築」

先に紹介した2つの事例は、地方の人口の限られた自治体の取り組みでしたが首都圏の中都市もマイクログリッド構築に取り組み始めています。人口約18万8,835人(2020年12月1日時点)の神奈川県小田原市は、湘南電力や京セラなどと連携して太陽光発電と蓄電池を組み合わせたマイクログリッドを構築すると2020年9月に発表しています。

このプロジェクトは経済産業省の「地域マイクログリッド構築事業」に採択されたものです。これは一定規模のコミュニティでマイクログリッドの構築を図るプロジェクトを対象にした補助金制度で、2020年度の予算額は約15億円でした。こういった「国の補助金をいかに有効活用するか」もマイクログリッド構築に欠かせない視点といえます。

事例4:兵庫県芦屋市「117戸で電力を融通させるシステム」

ハウスメーカーが主導するマイクログリッド構築の事例もあります。パナホームは、エナリス、興銀リース、兵庫県企業庁らと共同で芦屋市のスマートシティエリアに計117戸のマイクログリッドを構築し2018年10月から事業開始。その仕組みは、各戸に太陽光発電設備と蓄電池を設置することで、エリア内の住戸間で電力を融通できるものです。

これによりエリア全体の電力の80%以上をマイクログリッドの太陽光発電でまかなうことができます。加えて電力会社からの電力供給がストップしても117戸に持続的に給電できたり各戸で電気料金を約20%カットできたりすることも魅力的です。

事例5:ソニー傘下企業のマイクログリッド向けソフトウェア無償提供

ここまで紹介してきたような太陽光発電やマイクログリッドを進化させるシステムやソフトウェアの開発も今後本格化されると予想されます。ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は、これまでにアフリカや沖縄で「太陽光パネル」「バッテリーシステム」「電力融通制御ソフトウェア」を組み合わせて実証実験を行ってきました。

その知見で得たマイクログリッド向けのソフトウェアを2020年12月1日から外部に向けて無償提供しはじめています。ソニーCSLがソフトウェアをオープンソース化して幅広い企業や団体が利用できることで、自社でノウハウ独占するよりもスピーディーに導入拡大が期待できるとのことです。

マイクログリッドの重要性がますます高まる可能性大

温暖化と台風の大型化の相関関係についてはさまざまな意見があります。とはいえ近年の日本はたび重なる豪雨の襲来で大きな土砂災害や水害の被害が目立っている傾向です。再び大規模な停電が繰り返されればマイクログリッドの重要性はますます高まることが予想されます。自分の住んでいる自治体やマンションはマイクログリッドを採用しているか……そんなことをみんなが気にする時代がやってくるのかもしれません。

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