リユース・リサイクル
(画像=naka/stock.adobe.com)

「2050年温室ガス実質ゼロ」を目指して太陽光発電の注目度が高まっています。そんな中、気になるのが太陽光パネルの廃棄です。これが将来の社会問題になれば環境のために広がった太陽光発電が逆に環境に悪影響を与える存在になりかねません。そのため太陽光パネルの廃棄やリユース、リサイクルについての課題を共有していくことが必要です。

使用済み太陽光パネルの排出量は、近い将来50万トン以上に

はじめに太陽光パネルの廃棄やリユース、リサイクルの現状と課題を確認しましょう。環境省の「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けた ガイドライン」によると、2018年における日本の太陽光電池モジュールの排出量は、年間約4,400トンでした。このうち約3,400トンがリユース(再利用)され、約1,000トンはリサイクル(再生利用)または処分されていると推計されています。

「2050年温室ガス実質ゼロ」の目標に向けて、再生可能エネルギー電源となる太陽光発電設備が今後ますます増加していくでしょう。2030年代後半になると年間約50万~80万トンの太陽光パネルが排出されると予測されており、加えて災害や故障による上積みも考えられます。太陽光発電設備が急増する前に使用済みパネルの廃棄やリユース、リサイクルなどの情報や枠組みを社会で共有することがマストです。

要注意!太陽光発電投資の「環境の問題」と「コストの問題」

特に今後太陽光発電投資をはじめる人は、事業をスタートする前に太陽光パネルの廃棄やリユース、リサイクルについて意識しておいたほうがよいでしょう。太陽光パネルの寿命は、一般的に25~30年程度といわれています。そのため将来どこかのタイミングで廃棄やリユース、リサイクルをしなくてはなりません。

「まだまだ先のことだから」と見切り発車で太陽光発電投資をはじめるのはおすすめできません。なぜなら設備オーナーが太陽光パネルの廃棄を軽く考えることによって「環境の問題」と「コストの問題」が発生する可能性があるからです。

「環境の問題」とは?

太陽光パネルには、有害物質が含まれています。ただ一口に太陽光パネルといっても大きく分けると「シリコン系」「化合物系」の2種類あり、 さらにシリコン系だけで見ても結晶系(単結晶・多結晶・ヘテロ結合など)、薄膜系(アモルファス、多接合など)といった数多くの種類がありそれぞれに使用されている有害物質が変わってきます。

そのため太陽光パネルの専門的内容を正しく理解している廃棄物処理業者に発注することが必要です。もし適切な処理をしなかった場合、環境に悪影響を及ぼす可能性があります。最終的に処分するのは処分業者ですが、設備オーナーが太陽光パネルの廃棄やリユース、リサイクルについて意識して処分について関与していく姿勢も大切でしょう。

「コストの問題」とは?

太陽光パネルの廃棄やリユース、リサイクルには、当然ながらコストがかかります。このコストは設備オーナーが負担するべきものであり、太陽光発電の売電費用の一部を積み立てるなどして準備していくことが必要です。「どれくらいのコストがかかるか」については、太陽光パネルの種類や面積によって異なります。

太陽光発電設備を提供する業者に廃棄などにかかる費用の概算を教えてもらい、それを達成できるよう毎月少しずつ積み立てていくとスムーズです。廃棄などのコストを想定しなかったり見積もりが甘かったりすると、処分に必要なお金が準備できない可能性が出てきます。その結果、「太陽光パネルが放置される」「不法投棄される」といったリスクが高まりかねません。

FITの売電価格には将来の廃棄費用も含まれる

経済産業省・資源エネルギー庁の解説によると「FITの再生可能エネルギー買取価格は廃棄費用も含めて設定されている」とのことです。そうであれば、FITで得る売電収益の一部を将来の廃棄費用として積み立てることは当然といえます。逆にFITの売電収益の全額をリターンと見なしてしまえば、FITに盛り込まれているはずの廃棄費用を使ってしまっていることになるでしょう。

太陽光発電パネルの中には「100年使い続けられる」とアピールしているものもあります。ただこういった太陽光パネルを採用していても売電収益の一部を積み立てておくのが賢明です。想定よりも寿命が短いことも考えられます。また仮に想定通りの長寿命だとしても、修繕費やメンテナンス費がかかるケースもあるでしょう。

使用済み太陽光パネルの廃棄・リユース・リサイクル方法

では具体的に適切な太陽光パネルの廃棄やリユース、リサイクルとはどのような方法なのでしょうか。これは、環境省で作成・公表している「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」が目安になります。同ガイドラインによると全体のフローとしては、太陽光パネルを含む設備は利用終了後「リユース(再利用)できるかどうか」を適切に判断し、それに合った業者に処理を発注します。

リユース・リサイクル方法
(引用:環境省「太陽発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」)

リユースできないものに関しては、廃棄物処理業者による収集・運搬を介しリサイクルと埋立処分に仕分けして処分をします。一方、リユースできる部分に関しては、廃棄物処理業者だけでなく貨物運送事業者が請け負うことも可能です。このフローの実行は、設備オーナーだけではできません。以下のような業者などと「適切に処理をしなければならない」という意識を共有する必要があります。

・解体、撤去業者
・収集運搬業者
・リユース業者
・リサイクル業者
・中間処理業者

使用済み太陽光パネルの最新リサイクル事情

使用済み太陽光パネルの排出量が急増する時代を前にリサイクル技術の革新が進んでいます。その一例を見てみましょう。2020年10月にJFEエンジニアリング株式会社では、太陽光パネルのリサイクル事業を2021年からスタートさせると発表がありました。2020年秋から実証実験に着手し2030年には年間40万枚のリサイクルができる体制を目指しています。

また太陽光電池製造装置を手がける株式会社エヌ・ピー・シーでは、使用済みの太陽光パネルをリサイクルするための自動解体装置を開発(特許登録済)しました。独自技術の「ホットナイフ分離法®」を採用することでガラス部分を割らずに金属ときれいに分離。これにより適切な処理がしやすい環境を作ることが期待できます。

なおこの装置1台の年間処理枚数は、1日8時間・年間360日稼働させた場合、約14万4,000枚です。使用済み太陽光パネルのリサイクル分野は、市場が拡大していくため新規参入する企業もあるでしょう。今後の技術革新が期待されます。

国・企業・設備オーナーの3者の連携が欠かせない

日本が太陽光発電の先進国になるため、太陽光パネルの廃棄やリユース、リサイクルのしっかりとした仕組みづくりは避けて通れない道といえるでしょう。これを実現するには「国」「企業」「設備オーナー」の3者の連携が欠かせません。国は、そのときどきの実状に合わせてガイドラインを改訂していくことが必要になります。

また適切な処理が行われるようリサイクル技術を開発する企業や設備オーナーなどに対して手厚いサポートをしていくことも必要です。さらにリサイクルサービスを提供する企業は、技術力やコストを世界でも普及していくレベルに高めていく努力が求められます。設備オーナーは、将来必要な処理コストを積み立てていく努力が必要です。

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