SDGs
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丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

世界の先進国ではIT化によって国民の生活は飛躍的に便利な時代になりました。一方で開発途上国には、最もアナログな分野といえる水の供給やトイレの設置すら進んでいない国や地域もあります。この落差は、いったいどのように埋めればよいのでしょうか。本記事では、水資源に対するJICAの方針と水事情の改善に取り組む企業の動きを探ります。

安全な水の供給はSDGs6番目の目標

SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の6番目に掲げられている目標は、「安全な水とトイレを世界中に」です。水とトイレの問題は、密接につながっています。そのため同じカテゴリーの目標になっているのでしょう。まず世界の水の状況について確認しておくことが必要です。Water Aidが発表した「気候変動の最前線 2020年世界の水の現状」には、世界の水事情の報告があります。

同報告によると給水サービスの現状は、以下のような状況です。

世界で水が飲める状態における人数

水の種類飲める状態人数割合
安全に管理された水改善された水源が敷地内にあり、汚染されていない水源から必要なときにいつでも水を飲める状態53億人71%
基本的な水アクセス改善された水源まで往復30分以内で、飲み水をくみに行ける状態14億人19%
限定的な水アクセス改善された水源に水をくみに行けるものの、水源まで往復30分以上かかる状態2億600万人3%
改善されていない水 アクセス覆いのない手掘り井戸や保護されていない泉で水をくんでいる状態4億3,500万人6%
地表水川、ダム、湖、池、小川、水路、かんがい水路の水をそのまま飲み水として利用している状態1億4,400万人2%

※Water Aidの資料を基に表を作成

安全に管理された水を飲める人が世界全体の約70%を占め水事情かかなり改善されている印象です。しかしそれでもまだなんらかの不自由な方法で飲料水を得ている人が約30%もいます。今後もSDGs「ゴール6」の目標実現のために世界が協力して水事情を改善していくことが重要です。

世界で水道水をそのまま飲めるのはわずか9ヵ国という現実

日本では、水道水を飲めるのが当たり前になっていますが世界では水道水を飲める国は限られています。国土交通省水資源部の調査によると2018年現在で水道水をそのまま飲めるのは、日本を含めわずか9ヵ国しかありません。またそのまま飲めるものの注意が必要な国が21ヵ国となっています。このように日本は、世界の中でも水質が良くそのまま飲める数少ない国の一つなのです。

そもそも地球の水資源のほとんどは海水といわれています。淡水(塩分をほとんど含まない水、真水のこと)は約2.5%に過ぎずその中で飲める水は0.01%とごくわずかな比率でしかありません。世界の人口が増え続ければ需要に供給が追いつけない状況になるのはやむを得ない事情があります。

世界でトイレの数が不足している

水道に関連した問題としては、世界でトイレの数が不足していることが挙げられます。ユニセフ(国連児童基金)の公式サイトによるとユニセフとWHO(世界保健機関)が2019年6月18日に「水と衛生に関する共同監査プログラム」による最新報告書を発表。同報告書によると世界の約22億人が安全に管理された水の供給を受けられず約42億人が安全に管理されたトイレを利用できていないのです。

また約30億人が基本的に手を洗う施設のない暮らしをしている現実があります。同報告書は、野外排せつの問題にも触れています。2000年以降、屋外で排せつする人の割合が21%から9%へ大幅に減少しました。さらに23ヵ国では屋外排せつをする人の割合が1%を下回りほぼ撲滅されている状態です。しかしそれでも約6億7,300万人は今も野外排せつをしなければならない状態に置かれています。

野外排せつは、感染症など衛生面でのリスクが高いだけに安心してトイレを利用できる環境がさらに整備されることが求められます。

水資源に対するJICAの方針とは

JICA(独立行政法人国際協力機構)は、公式サイトによると上述したSDGsの目標「ゴール6」の中に定められた8つのターゲットに合わせ以下のような方針を掲げています。

6.1「安全で入手可能な価格の飲料水に対するすべての人たちへ平等なアクセス」
6.2「適切で公平な衛生施設と衛生的行動へのアクセス、野外排せつの撲滅」
6.4「水利用効率の改善と持続可能な取水による水不足の減少」
6.5「統合水資源管理の推進」

8つのターゲットの中でこの4つを達成するために「都市給水」「村落給水」「衛生」「水利用効率の向上と持続的な取水」「統合水資源管理」の5つのサブセクターに分けて積極的に進める方針です。JICAでは、世界の年間成長率が2%と仮定した場合、2030年には2009年と比較して40%の水資源が不足すると予測しています。

水需要が増え続けるのは、人口増加や経済発展、生活水準の向上などが要因です。水資源は、食料生産に使う「かんがい用水」が全体の約70%を占めておりエネルギー供給とともに今後も課題が深刻化すると警告しています。

企業は水事情の改善にどのように取り組んでいるか

では、企業は水事情の改善にどのように取り組んでいるのでしょうか。各社の公式サイトに掲載されている事例から紹介していきます。

キリンホールディングス<2503>

2020年2月にキリンホールディングスは「キリングループ環境ビジョン2050」を策定しさまざまな環境問題の改善に取り組んでいます。水のめぐみを守るために業界に先駆けて製造拠点の水源地での森林保全活動を開始しました。自社だけでなく地域の人たちとともに取り組みを進めている点で注目されます。節水においても製造工程を見直すことで水の使用量を大幅に削減することが目標です。

キリンビールの用水原単位(製造量あたりの用水使用量)のデータを見ると1990年と2018年の比較で用水使用量は-66%、用水原単位で-50%と大きな成果をあげています。

ネスレ日本<未上場>

ネスレは、水へのアクセスをすべての人の基本的人権と考え水に関する取り組みを実施。工場での水使用量を削減することや世界各地の農業従事者と協力してサプライチェーンにおける水の利用効率向上にも取り組んでいます。国際機関への支援では、ガーナ赤十字社などと連携し安全な水や衛生施設を利用できる機会を増やすことも推進。

これらの取り組みを実施した結果、取水量ゼロを達成した工場は20ヵ所に及んでいます。

ユニリーバ・ジャパン<未上場>

ユニリーバ・ジャパンでは、いくつものブランドを通して水と衛生の問題に長年取り組んでいます。石鹸の「ライフボーイ」は、2010年以来手洗い啓発プログラムを行い10億人以上の支援をしてきました。「ピュアイット」は、2005年から家庭用浄水器を販売し安全な飲料水の供給を実施。またトイレの問題では「ドメスト」がユニセフ(国連児童基金)と協力し2012~2017年までに約1,650万人のトイレのアクセスを広げました。

ドメストは、2,500万人が清潔にトイレを使用できることを目標にしています。ユニリーバは、公式サイトで、「SDGsのはじめから終わりまで関わり続けます」と宣言しており今後も取り組みを継続する方針です。

世界中の人たちが安心して水を飲める環境にするため個人でも取り組もう

ここまで世界の水事情の現状や企業の水事情改善への取り組みを見てきました。しかし生活の基本ともいえる水をいつでも安心して飲める日本は、世界的に見れば恵まれた環境です。企業だけでなく個人でも各家庭で節水に努めたり災害時に備えて飲料水を備蓄したりするなどできることを実施していくことが大事といえるでしょう。

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