ESG投資
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日本で再生可能エネルギーの普及率を高める起爆剤になりうる仕組みがPPA(電力購入契約)です。グローバルに見ると、日本の再生可能エネルギーの普及率は低いといわれています。その原因の一つは、初期コストの高さですが、PPAによって根本的な解決が可能です。本記事では、アメリカなど海外では広がっているPPAについて4つの事例を交えながら解説します。

PPAとは? 海外で普及、国内でも注目度が急上昇中

PPAとは、Power Purchase Agreementの略で「電力購入契約」のことです。「第三者所有モデル」とも呼ばれることもあります。ESG投資やSDGsと親和性が高い再生可能エネルギーのスキームです。
※PPAはこの他、M&A時の会計処理の用語でも使われています。

PPAは、次の環境ビジネスのキーワード?

PPAの仕組みは、まず再生可能エネルギーの関連業者が太陽光発電などの設備をユーザー(企業や個人)の施設に無償で設置し、ユーザーは設置された設備で自家発電した電気を優先利用して電気料金を支払います。運用・保守などのランニングコストは、 ユーザー負担の場合もありますが、無償のケースも多いようです。PPAは、アメリカをはじめとする海外で、一般的なビジネスモデルになりつつあります。

しかし日本でのPPAの認知はまだ低いため、次の環境ビジネスのキーワードになることが期待されているのです。

PPAは「携帯端末が無料」をイメージすると分かりやすい

ESG投資やSDGsと親和性が高いPPAが海外で普及している理由は、ユーザーと業者がWin-Winの関係になれるメリットがあるからです。これは「端末代金が(実質)無料」だったひと昔前の携帯電話のビジネスモデルをイメージすると理解しやすいでしょう。ユーザー側のメリットとしては「初期費用がかからないこと」が挙げられます。携帯のビジネスモデルだと、契約すれば端末を無料で手に入れることができました。

PPAでは、太陽光発電などの設備を無料で導入できます。PPAのもう一つのメリットは、電気料金が割安になることです。通常の電力会社の電気料金よりもPPAで発電した電気料金のほうが安いため、定期コスト削減が可能になります。さらにPPAは「契約期間の満了後、設備を無償で譲渡できる」というメリットもあるのです(あくまでも一例)。

譲渡後は自分たちの設備となるため、発電した電気をランニングコストの負担のみで利用できます。PPAの契約形態は、さまざまです。業者側のメリットとしては「安定した収益を得やすいこと」が挙げられます。携帯のビジネスモデルだと毎月の通話料の徴収で収益を確保できますが、PPAでは毎月の電気料金の徴収で収益を得ることが可能です。

国内外で注目されるPPA(電力購入契約)の導入事例

実際にPPAを利用したビジネスが次々に立ち上げられています。その導入事例を紹介します。

PPA導入事例1. Royal DSM社

はじめに海外のPPAの導入事例を見てみましょう。Royal DSM社(以下、DSM)は、健康や持続可能な暮らしをテーマにしたビジネスを展開するグローバル・サイエンス企業です。グループ社員数は約2万3,000人、年間売上高は約100億ユーロ(関連会社含む)。DSMでは、2030年までに使用電力の75%を再生可能エネルギーでまかなう目標を掲げています。(2019年時点で50%を達成)

2020年5月に発表したヨーロッパとアメリカのPPAにより、二酸化炭素排出量を年間約8万5,000トン削減する見込みです。これにより再生可能エネルギー75%という目標が早期に実現すると見込まれます。

  • スペイン:計76 MWの電力を購入(太陽光発電所2ヵ所、風力発電所1ヵ所)
  • アメリカ:計78 MWの電力を購入(太陽光発電会社のOrigis Energyより)

PPA導入事例2. オリックス株式会社

金融や不動産、リースなどのイメージが強いオリックスですが法人向けの環境エネルギー事業も展開しています。例えば大型の太陽光発電の建設・運営や風力発電への調査・検討出資、PPAの提供などです。オリックスのPPA(第三者所有モデル)では、顧客の保有する施設に太陽光発電設備(蓄電設備を含む)などを設置。顧客は、消費電力量に合わせてサービス料金を支払います。

枠組みとしては、昼間は自家発電した再生可能エネルギー中心の利用、夜間は電力会社から電力を購入するというものです。このPPAモデルでは10~20年の契約期間が設けられており契約期間の満了後は顧客に設備を譲渡、または契約延長のいずれかが選択できます。

PPA導入事例3. 自然電力グループ(ながの電力株式会社)

自然電力グループは、福岡県福岡市に拠点を置く自然エネルギー発電事業を展開するベンチャー企業です。活動エリアは、全国に広がり約1 GWを自然エネルギーでまかなっています。取り扱っている再生可能エネルギーの分野は、太陽光、風力、水力などさまざまです。発電所の開発・建設・運営・保守、さらには電力小売までの幅広いサービスを提供できるノウハウを持っているのも特徴的です。

自然電力グループの1社、ながの電力株式会社(本社:長野県小布施町)が公共施設・商業施設向けに提供するPPAサービスが「ながの電力のやねソラ」です。先行事例として2020年3月より長野県内の公共施設の幼稚園と老人施設の屋根に太陽光発電を設置して運用をスタートさせました。太陽光発電で生み出した再生可能エネルギーが2施設の使用電力の一部として利用されています。

太陽光発電で余った電気があるときは、FIT(固定価格買取制度)で売電、逆に電気が足りなくなったときには通常の送電網から供給します。

PPA導入事例4. 合弁会社RLN

PPAを利用して海外展開する国内企業もあります。2020年4月「日鉄物産株式会社」と同社が30%出資する「Rojana Energy Co.,Ltd.」、太陽光発電事業などを展開する「株式会社Looop」の3社はPPA事業を行う「合弁会社RLN Energy Co.,Ltd(以下、RLN)」をタイで立ち上げました。ちなみに協業する3社の概要ですが日鉄物産は連結売上高約2兆4,802億円(2019年度)の複合専業商社です。

Rojana Energy Co.,Ltd.は、タイで3番目の開発面積を誇る工業団地の「ロジャナ工業団地」で太陽光発電事業などを展開する企業で、株式会社Looopは日本国内で電力小売事業を行う企業です。RLNがタイで展開するPPAのスキームは、日本国内のPPAと同様です。顧客となる企業に対して太陽光発電の設備を無償で提供しています。

さらにメンテナンスなどのランニングコストをRLNが負担することで、顧客企業の負担が最小化し、また契約期間の約15年が満了になると発電設備などが譲渡されます。なおRLNでは、PPA事業をメキシコでも展開するため、調査を開始すると発表しています。タイと同様、大規模な工業団地にターゲットを絞って攻勢をかけていく戦略です。

前段階としてメキシコでの許認可や市場調査を、2021年2月までに進めていくと発表しています。この調査は、経済産業省の「令和2年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査補助金」に採択されたものです。

PPAが日本国内や発展途上国のESG投資、SDGsの鍵を握る

これまで先進国では、ESG投資、SDGsが広く浸透してきました。一方で日本国内や発展途上国などでは、これから本格的に発展していくフェーズに入ります。ESG投資やSDGsが大きく広がるきっかけになる重要なスキームがPPAといえるでしょう。今後、PPAを扱う業者が急増する中、サービス同士の競争力が高まっていくと予想されます。

PPA拡大という潮流を利用してどの企業が成長を遂げるかにも注目したいところです。

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