SDGs
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大西 勝士
大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

国連のSDGs(持続可能な開発目標)では、2030年までの達成を目指す17の目標が決められています。その一つが目標14「海の豊かさを守ろう」です。海の環境や生態系、資源の保全に取り組むことで海洋プラスチック問題をはじめとするさまざまな問題の改善・解決が期待できます。SDGsの目標14について日本や世界ではどのように取り組みが推進されているのでしょうか。

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」とは

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」では、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な価値で利用する」ことを目指しています。「2025年までにあらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」など10のターゲットで構成されているのが特徴です。海洋資源の食用魚介類は、海洋環境の悪化や過剰な漁獲の影響で、魚種によっては資源量に減少傾向がみられます。

またプラスチックをはじめとする海洋ごみの増加が、海洋環境の悪化や海岸機能の低下などさまざまな問題を引き起こしています。貴重な海洋資源を守り今後も持続可能な形で利用していくには、SDGs目標14の達成が必要です。

目標14を達成することで解決できる問題

SDGsの目標14を達成することで解決できる主な問題は、以下の通りです。

海洋資源の保全

国連食糧農業機関(FAO)がまとめた世界の海洋水産資源の状況によると、1974年には90%の水産資源が持続可能なレベルで利用されていました。しかし2015年にはそのレベルが67%まで下がっています。過剰に漁獲されている資源の割合は、10%から33%まで増加。日本においてマイワシ太平洋系群やマサバ太平洋系群は資源量が増加傾向です。

一方でスケトウダラ根室海峡系群やスルメイカ冬季発生系群は減少傾向にあります。この状況が続けば、海洋の生態系に大きな影響を及ぼし、従前のように水産資源を利用できなくなるかもしれません。SDGs目標14に取り組むことで生活に必要不可欠な海洋資源を持続可能な状態で利用できるようになります。

海洋汚染・海洋プラスチック問題

海洋ごみが海洋環境の悪化や海岸機能の低下、漁業への悪影響などさまざまな問題を引き起こしています。日本の海岸の場合、多くのごみや流木が漂着しており重量ベースでは自然物、容積・個数ベースではプラスチック類が高い割合を占めているのです。マイクロプラスチックの海洋生態系への影響は深刻で世界的な課題となっています。

マイクロプラスチックとは、サイズが5ミリメートル以下の微細なプラスチックごみのことです。マイクロプラスチックが食物連鎖に取り込まれると、生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば身近なところでは、洗顔料や歯みがき粉などのスクラブ剤がマイクロプラスチックになっていることをご存じでしょうか。これらは、1次的マイクロプラスチックとして排水溝を通じて自然環境に流出しています。

また大きなプラスチックが自然環境で砕かれたり細分化されたりしてマイクロサイズになった2次的マイクロプラスチックと呼ばれるものもあるのです。SDGs目標14への取り組みは、海洋汚染や海洋プラスチック問題の解決にもつながります。特にプラスチックについては「毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出している」「2050年には海洋中のプラスチックごみ重量が魚を超える」といった試算もあり早急に対策を講じることが必要です。

海洋酸性化

海洋酸性化とは、大気中に放出される二酸化炭素(CO2)を海洋が吸収して海水が酸性化することです。海水中のpHは、一般的に弱アルカリ性を示していますが地球温暖化の影響で海洋の酸性化が進んでいます。海洋酸性化は、産業革命以前から26%増加しており現在のCO2排出の水準が続くと2100年には100~150%増加する見込みです。

海洋酸性化が進むことで海洋のCO2を吸収する能力が低下するため、地球温暖化が加速する可能性が高まります。また海洋生態系にも大きな影響を及ぼしかねません。SDGs目標14の達成は、海洋酸性化を抑制し地球温暖化の防止や海洋生態系を守ることにつながります。

EUの取り組み

欧州のプラスチックによる海洋汚染は、地中海・北極海を中心に年間の推計が15万~50万トンです。EU(欧州連合)は、2015年に成長戦略として「サーキュラーエコノミー(循環経済)パッケージ」を発表しました。循環経済の目的は、製品や資源の価値をできるだけ長期間保全および維持し廃棄物を最小限化することです。

循環経済により「6,000億ユーロ(約74兆円)のコスト削減」「廃棄物管理分野における17万人の直接雇用(2035年まで)」といった効果が想定されています。行動計画には、プラスチックリサイクルの促進も盛り込まれており、優先分野に位置づけられていることが分かるでしょう。2018年に発表された「EUプラスチック戦略」では、海洋プラスチックごみの削減に向けてEU全域にわたる新しい規制が提案されています。

食品容器や飲料のフタなど、使い捨てプラスチック10品目と漁具を対象に消費削減や市場規制などを実施する内容となっています。

アメリカの取り組み

アメリカは、2010年における陸上から海洋に流出したプラスチックごみの発生量推計ランキングで世界20位(年間4万~11万トン)です。アメリカのエネルギー省は、2019年から「プラスチック・イノベーション・チャレンジ」を開始。エネルギー効率の高いプラスチックリサイクル技術を開発することが目的です。2020年には、プラスチックリサイクルの研究開発に2,500万米ドルを助成すると発表しています。

アメリカは、リサイクルしやすい素材を開発するための技術革新を進歩させて、世界のプラスチック問題の解決に取り組んでいます。

アジア諸国の取り組み

アジアの中でも中国は、2010年における海洋に流出したプラスチックごみ発生量推計ランキングで世界1位(年間132万~353万トン)です。次いでインドネシア、フィリピン、ベトナムとなっており1~4位を東・東南アジアが占めています。中国を中心とするアジア諸国は、これまで多くの廃プラスチックを輸入して再利用してきました。

しかしプラスチックごみ発生量を削減するため、輸入規制を実施しています。中国では2017年に「輸入廃棄物管理目録」を公表し、非工業由来の廃プラスチック(8品目)などを「固体廃棄物輸入禁止目録」に追加。また2018年には工業由来の廃プラスチック、廃電子機器などの輸入を停止するとの方針を公表しています。タイにおいても2018年に電子廃棄物や廃プラスチックの輸入制限が強化されました。

日本の取り組み

日本の2010年における海洋に流出したプラスチックごみ発生量推計ランキングは、世界30位で年間2万~6万トンです。日本の漂着ごみの状況は、太平洋側では日本製のものが多く、東シナ海および日本海側では外国製(中国・韓国)のものが多い傾向にあり、いずれもプラスチック類の割合が最も高くなっています。2018年6月には「第4次循環型社会形成推進基本計画」が閣議決定されました。

具体的には以下のような内容を総合的に推進する方針が示されています。

  • 環境負荷の低減に資するプラスチック使用の削減
  • 使用済みプラスチック資源の回収・再生利用の徹底
  • バイオマスプラスチックの実用性向上など

また2020年7月からは、全国で一律にプラスチック製買い物袋の有料化が実施されました。

まとめ

SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」を達成するために、日本や世界でさまざまな取り組みが行われています。特にマイクロプラスチックが海洋生態系に与える影響は深刻で、海洋プラスチック問題は世界的な課題です。海の豊かさを守るために「プラスチックごみをなるべく出さないようにする」「ごみを出すときはリサイクルできるように分別する」などできることからはじめてみましょう。

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