SDGsにつなげるフードロス削減に官民でどう取り組むか
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丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

SDGsのゴール2「飢餓をなくそう」の目標に反するフードロスが大きな社会問題になっています。家庭内のフードロスに加え、食品業界や外食産業で出るフードロスも深刻な状態です。フードロスをなくす有効な手立てはあるのでしょうか。自治体や民間企業が取り組んでいる事例からヒントを探ります。

事例出典:農林水産省公式サイト「食品ロスとは」

日本のフードロスの現状

はじめに日本のフードロスの現状を確認しておきます。農林水産省の公式サイトによると、日本の食品廃棄物等は年間2,531万トンに及びます。

そのうち、フードロスの量は年間600万トンとなっています。内訳は事業系フードロスが54%、家庭系フードロスが46%でやや事業系が多くなっていますが、家庭でのロスも決して少ない量ではありません。

家庭のフードロスは食べ残しをはじめ、在庫していた食材がいつの間にか賞味期限を過ぎていたということもしばしばあります。

事業系のフードロスはもっと複雑で、食品製造、食品卸売、食品小売、外食産業と、それぞれの分野で個別の事情により食品が廃棄されています。事業系と家庭を合わせると、国民1人当たりの食品ロスは1日約130gというデータもあります。茶碗約1杯のご飯に相当する量の食材を捨てていることになります。

食品リサイクル法に基づく新たな基本方針の概要が令和元年7月に公表されました。このなかで、「フードロスについては、SDGsも踏まえ、2030年度を目標年次として、サプライチェーン全体で2000年度の半減とする目標を新たに設定」(農林水産省食料産業局基本方針)しています。

食品・外食業界で出るフードロス

上のグラフにもあるように、食品・外食業界でもフードロスの多さが課題になっています。両業界ではどのような形でフードロスが出ているのでしょうか。

食品業界は「食品製造」「食品卸」「食品小売」の各業界で賞味期限に対する商習慣があります。食品小売業においては賞味期限の1/3を超えた商品を入荷しない、2/3を超えたものを販売しないというルールです。賞味期限が来る数週間前には廃棄処分にする例もあります。

また、先に入荷した商品より前の賞味期限の商品が入荷することはないので、食品卸の段階で廃棄処分される商品も出てきます。

外食業界のフードロスは、シンプルに消費者の食べ残しです。注文しすぎて食べきれずに帰るというケースはよくあるでしょう。この問題に関しては外食業界が「食べきれる量を注文する」ように啓発していくことと、持ち帰り容器の提供で対応しています。

一方で、食品業界は具体的な廃棄削減への取り組みを行っています。

賞味期限表示ルール変更の取り組み

フードロス削減のために食品業界と小売業界が協力し、納品期限の緩和や賞味期限の表示ルールを変更する取り組みを実施しています。

納品期限の緩和では、賞味期限の1/3までに小売店に納品しなければならない商慣習上のルールを1/2に緩和するとしています。小売店にとっては販売期間が短くなるデメリットがあります。

もう1つの賞味期限の表示ルールの変更では、日付逆転による小売店の入荷拒否を防ぐため、表示を「年月日」から「年月」に変更する対策を推進しています。

例えば、8月20日という年月日表示だった菓子類を8月末日とすることで販売期間を延長することができます。小売店も賞味期限のチェックがしやすくなり、販売効率がよくなるメリットがあります。

消費者も意識の改善が必要

フードロスを減らすには、消費者の賞味期限に対する意識の改善も必要です。加工食品などのパッケージに記載されている「賞味期限」とは、その食品を美味しく食べるための目安になるものです。

したがってカップラーメンなどの加工食品が、賞味期限を1日過ぎたからといってすぐに傷むわけではありません。短期間内に食べるのであれば賞味期限のなるべく近い商品を選ぶという消費者の協力が必要になります。

一方で、日配食品のラベルに記載されている「消費期限」は「その日時までに消費しなければならない期限」です。弁当など生の食材を使ったものは常に食中毒のリスクがあります。こちらは食べる予定の時間が消費期限を過ぎる場合は避けたほうが賢明です。消費者としては賞味期限と消費期限の使い分けが大事だといえます。

コンビニでは消費期限の近い弁当や総菜などを値引き価格で販売して、廃棄を減らす取り組みを行っています。すぐ食べるために買いに来た顧客にとっては、消費期限ぎりぎりでも安いほうがありがたいので、お互いにとってよい取り組みといえます。

自治体が取り組んでいる食べ残し削減運動

民間だけでなく官も地方自治体を中心に「食べ残し削減運動」を実施しています。

長野県松本市で始まった「3010(さんまるいちまる)運動」は、宴会等において「乾杯後30分は席をたたずに料理を楽しむ」「お開き10分前には席に戻って料理を楽しむ」ことで食べ残しを減らす運動です。松本市に次いで、福井県、静岡県、福岡市、佐賀市など多数の自治体に広がっています。

滋賀県大津市では、フードロス削減に取り組む飲食店等を「三方よしフードエコ推進店」としてPRし、「正しいドギーバッグ使用を推進する運動」を展開しています。

ドギーバッグとは客が食べ残した料理を持ち帰るための容器のことです。飲食店で食べ残しを持ち帰った際の、自宅で食べる注意点を記載した「ドギーバッグ使用ガイド」を作成してドギーバッグの啓蒙に努めています。

民間企業が取り組んでいるフードロス削減の事例

最後に民間企業によるフードロス削減取り組みの事例を見てみましょう。

販売方法の工夫で廃棄量を削減したヤマダストアー

売上至上主義を見直し、イベント商品の恵方巻を「全店昨年実績で作る」ことをチラシで宣言し、確実に売り切ることで廃棄の削減を目指しました。結果は兵庫県内の8店舗中5店舗で完売。廃棄量を前年より減らすことに成功しています。昨年実績より多く作るこれまでの商習慣を見直した注目すべき取り組みと評価してよいでしょう。

「もったいないセール」を実施する松坂屋

食品廃棄の減少を目指し、その名も「もったいないセール」を実施しているのが、大手百貨店の松坂屋です。賞味期限が近い商品のほか、納品期限切れ商品や過剰在庫品などをメーカー・卸売業者から集めて売り尽くすセールです。百貨店ギフト商品も含んでいることが目玉になっており、消費者から高い信頼を得ています。

ギフトを安く売ったとしても、その商品を知ることで次回のリピーターにつながる効果が期待できます。セールは通常店舗で行いますが、新型コロナウィルス感染拡大による影響により、Webサイトで開催する場合があります。

日配品のパンで鮮度保持に取り組む山崎製パン

コンビニやスーパーなどに毎日配送する日配品であるパンの鮮度保持を高めることによって、廃棄の削減に取り組んでいるのが山崎製パンです。パッケージに独特の膨らみがある「ランチパック」という商品は、パッケージエアを充填するために通常より厚いフィルムを採用しています。パッケージ内のエアーがクッションとなり商品の潰れを防いで廃棄の削減につなげています。

SDGsのゴール2「飢餓をなくそう」の目標に照らし合わせても、食べられるものを捨てるフードロスは避けなければなりません。企業、自治体、消費者が協力してフードロス削減への取り組みをさらに加速させることが望まれます。

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