次の夏季五輪開催国フランスはSDGsをどう実践しているか
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丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

日本人選手のメダル獲得ラッシュに沸いた東京五輪でしたが、関心は次の開催である2024年パリ大会に向かっています。新型コロナウィルス終息の行方次第でパリ大会はリベンジ消費やリベンジ観光で多いに盛り上がる可能性があります。

パリ協定でもおなじみのフランスは、気候変動問題にも積極的に取り組んでいます。フランスのSDGsへの取り組みの現状を探ります。

五輪開催都市パリ市が策定した「パリ気候計画」と「パリ気候行動憲章」

一般財団法人自治体国際化協会パリ事務所が公表している「コロナ禍がSDGsに及ぼす影響とフランス自治体の取組について」という報道によると、パリ市はSDGsのゴール13「気候変動に具体的対策を」に関して、熱心に環境対策に取り組んできました。

1つは「パリ気候計画」の策定です。2007年に策定し、2018年には新たな目標を定めるために改訂しています。計画の内容は、2050年までにエネルギー消費を現在の半分に減らし、すべてのエネルギーを再生可能エネルギーにするというものです。

また同計画の一環として、「パリ気候行動憲章」も策定しています。2012年に策定されましたが、2018年の「パリ気候計画」の改訂に伴い「パリ気候行動憲章」も改訂されました。この憲章はパリ市内の企業との協力を目指すもので、気候行動によって企業を3つのレベルに分けます。

・シルバー
CO2排出量の具体的な削減目標は定めないが、エネルギーや気候問題に貢献している企業のネットワークに参加して情報を得ることで、自らの行動につなげたい企業。

・ゴールド
選択したSDGsに対して質的量的目標を定め、目標達成のために行動をとる企業。

・プラチナ
ゴールドレベルの条件を満たし、パリ市のパリ協定に基づき温度上昇を抑制することを目的とした1.5℃戦略に貢献するために、2030年に向けた気候変動対策実行計画を策定する企業。

官民が協力した気候変動対策として成果が期待されます。

フランス政府が策定したエネルギー計画

では、フランス政府はSDGsにどのように取り組んでいるのでしょうか。同じ報道によると、フランス政府においては「エネルギーの気候変動のためのフランスの戦略」(2020年4月23日改定)が環境連帯移行省から発表されています。

本戦略はもともと2018年11月に発表されました。パリ協定を踏まえ2050年までにフランス全体でカーボンニュートラルを目指すものです。戦略の内容は、気候変動対策推進のためのロードマップである「国家低炭素戦略」(2015年策定)と、エネルギー分野で今後10年の間に公的機関が取るべき行動の優先順位を示した「中期エネルギープログラム」の2つで構成されています。

エネルギー計画の具体的な目標は「CO2排出量を2030年までに1990年比で40%削減する」という高い数値に設定しています。2014年には炭素税を導入し、2030年まで段階的に引き上げることで、ガソリンなどの燃料によるCO2を削減しようとする戦略です。

このような取り組みの成果もあり、フランスは2019年の「世界SDGs達成度ランキング」(SDSN調べ)でSDGs御三家のデンマーク、スウェーデン、フィンランドに次ぐ第4位まで順位を上げています。

フランスではエコやリサイクルのためにフリマが盛ん

個人の取り組みはどうでしょうか。フランス国民はエコやリサイクルに熱心です。フランスでは全国各地でフリーマーケットが盛んに行われています。フリーマーケットは「蚤の市」と呼ばれ、季節はおもに4月から10月にかけて大小さまざまな規模で行われます。

家庭で不要になった食器、本、子どものおもちゃなど日本でもよく売られているものから、変わった商品まで売れるものは何でも売ってリサイクルする文化が定着しています。フリーマーケットでは出店するとともに、売れたお金でほかの店で買い物をするのを楽しみにしている人もいるようです。

また、フランスでは歩道や一般道路に衣服・靴・バッグなどの専用回収箱が設置されています。回収箱の中身はテキスタイル61%、建造資材36%、エネルギー原料3%の割合で再利用されます。身近な歩道に回収箱があることで、市民が手軽にリサイクルに協力できるのは大変良い政策といえるでしょう。

五輪特需と環境問題をどう両立させるか

さて、気候変動対策やリサイクルにも力を入れているフランスですが、パリ五輪で予想される特需と環境問題をどのように両立させるかが今後の課題になります。

東京五輪は新型コロナウィルス感染拡大によって特需が剥落した部分がありました。次のパリ五輪が
順調に特需を得られるかどうかは、2024年までにコロナが終息するかにかかっています。コロナが収束または終息して経済活動が正常に戻ることは環境問題にも大きな影響を与えます。

2020年はコロナによるロックダウン等の影響で世界各国の経済活動が停滞しました。ところがその半面、世界におけるCO2排出量は前年比で5.8%減少するという地球環境にとってはプラスの効果をもたらしました。人や物の移動が制限されたことで、運輸部門の排出量が14%減ったのが大きく影響しています。

パリ五輪に向けてコロナが収束に向かうのは喜ばしいことですが、経済活動の活発化がフランスのCO2排出量増加につながることが懸念されます。フランス政府の今後の環境対策取り組み強化に期待したいところです。

フランスに投資できるファンドもある

五輪特需を考えると、経済発展が見込めるフランスに投資したいと考える方もいるでしょう。フランス株式を組み入れた「フランス株式ファンド」という商品があります。フランスといえばイタリアと並ぶファッション王国です。

フランス株式市場(ユーロネクスト・パリ証券取引所)の時価総額トップテンには、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン、ロレアル、エルメス・インターナショナル、クリスチャン・ディオールなど宝飾品、化粧品、ファッションの有名ブランドが名を連ねています。

これらの企業にまとめて投資できるのが、日本で販売されている「フランス株式ファンド」という投資信託です。「フランス株式ファンド」の商品概要は下記のとおりです。

フランス株式ファンドの概要(楽天証券で購入の例)

・売買単位 1口
・買付手数料 なし
・管理費用(含む信託報酬) 1.661%
・直近分配金 200円
・基準価額 1万3,766円(2021年8月6日基準)

直近1年間のリターンは世界的な株高もあって年率46.34%(税引き前、楽天証券基準)と極めて高いパフォーマンスをあげ、長期でも5年で年率12.93%と優秀な成績です。

ただし、パリ五輪にはリスクもあります。フランスでは新型コロナウィルスワクチンを接種したことを証明する「接種歴デジタル証明書」(衛生パス)いわゆるワクチンパスポートの提示を義務付ける政策を行っています。

2021年7月から映画館や博物館などには衛生パスを提示した人しか入場できないようになりました。さらに、8月からはカフェなどの飲食店にも衛生パスがないと入れないようになり、国民からの反発も大きくなっています。

この政策が継続する場合、2024年までにコロナが終息しなければ、パリ五輪競技施設への入場にも影響を与えることが予想されます。海外からの観光客が飲食店や各施設を利用できなければ、経済的なマイナスだけでなく、国際的な批判を招きかねません。今後の政策の行方を注視する必要があります。

東京五輪・パラリンピックが終了し、関心は2022年の北京冬季五輪やパリ五輪・パラリンピックに向かいます。経済発展と環境保護を両立させ、世界の人々が安心してパリ五輪・パラリンピックに参加できるようになるか、マクロン大統領の手腕に注目が集まります。

※本記事はフランスのSDGsへの取り組みを紹介するものであり、当該ファンドへの投資を推奨するものではありません。

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