自治体の取り組みとして注目の「ゼロエミッション東京戦略」
(画像=BillionPhotos.com/stock.adobe.com)
丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

国の基本エネルギー計画とは別に、地方自治体でも独自に脱炭素への取り組み目標を設定しています。なかでも東京都が策定した「ゼロエミッション東京戦略」が大きな注目を集めています。小池都知事も力を入れる「ゼロエミッション東京戦略」とはどのような取り組みなのでしょうか。

ダボスアジェンダで出した小池都知事の宣言とは

2021年5月18日、シンガポールで行われるはずだったダボス会議の中止が発表されました。理由は新型コロナウィルスの変異株が拡大していることに加え、ワクチン接種の進捗率が国によってばらつきがあるためです。

ダボス会議とは、世界経済フォーラムが毎年開催する国際会議で、1971年の開始以来、世界で起きているさまざまな課題について話し合われてきました。2019年の会議では「気候変動」がテーマでしたが、2021年のテーマは「グレート・リセット」になる予定でした。

「グレート・リセット」とは「大いなる刷新」というような意味で、新型コロナウィルスを機に気候変動対策や格差の是正、男女のジェンダー平等などの課題を解決するために、社会構造の変革を求めるという考え方です。ここでも気候変動対策が引き続き重要な課題に挙げられていることに変わりはありません。

気候変動対策について東京都の小池百合子知事は、2021年2月12日に都庁で行った記者会見のなかで、「ゼロエミッション東京戦略」の実現について語りました。ゼロエミッションとは、「人間の社会活動や生産活動に伴い排出されてきた廃棄物をゼロにして、循環型社会を構築しようとする構想」(化学辞典第2版)のことをいいます。

小池知事によると、同年1月27日にオンラインでダボス会議が行われ、ダボスアジェンダのなかで小池知事がカーボンハーフへの宣言を行っています。

カーボンハーフとは、2030年までに東京都内の温室効果ガス排出量を2000年比で50%削減することをいいます。その対策として、乗用車・二輪車の非ガソリン化、水素の社会実現に向けた行動を加速していくとしています。

2019年に策定した「ゼロエミッション東京戦略」

国は長期目標として2050年に温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」で脱炭素社会の実現を目指していますが、地方自治体もそれぞれに目標を掲げています。

神奈川県は2021年3月に改定した「神奈川県地球温暖化対策計画」で、2030年に温室効果ガス排出量を2013年度比で27%削減することを目指しています。また、埼玉県は2020年3月に策定した「埼玉県地球温暖化対策実行計画(第2期)」で、2030年に温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減する目標を掲げています。

そして東京都は2019年に「ゼロエミッション東京戦略」を策定しました。2019年5月に行われた「U20(Urban20)東京メイヤーズ・サミット」で、世界の大都市である東京の責務として、平均気温の上昇を1.5℃に抑えることを目指し、2050年にCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現することを宣言しています。

「ゼロエミッション東京戦略」は、6つの分野と14の政策に体系化しています。内容は下表のとおりですが、エネルギーを中心に食品ロスやプラスチック対策なども組み入れていることがわかります。市区町村や世界諸都市との連携強化も含めた環境問題全般に及ぶ戦略と考えてよいでしょう。

エネルギーセクター・再生可能エネルギーの基幹エネルギー化
・水素エネルギーの普及拡大
都市インフラセクター(建築物編)・ゼロエミッションビルの拡大
都市インフラセクター(運輸編)・ゼロエミッションビークルの普及促進
資源・産業セクター・3Rの推進
・プラスチック対策
・食品ロス対策
・フロン対策
気候変動適応セクター・適応策の強化
共感と協働 ー エンゲージメント&インクルージョンー・多様な主体と連携したムーブメントと社会システムの変革
・市区町村との連携強化
・都庁の率先行動
・世界諸都市との連携強化
・サステナブルファイナンスの推進

出典:東京都環境局公式サイト

バージョンアップした「ゼロエミッション東京戦略」改訂版

最初の「ゼロエミッション東京戦略」からおよそ2年後の2021年3月30日、東京都は「ゼロエミッション東京戦略」をバージョンアップした「2030・カーボンハーフスタイル」を提起しました。

目標とする内容目標とする数値
都内温室効果ガス排出量(2000年比)30%削減 → 50%削減
都内エネルギー消費量(2000年比)38%削減 → 50%削減
再生可能エネルギーによる電力利用割合30%程度 → 50%程度
都内乗用車新車販売100%非ガソリン化
都内二輪車新車販売100%非ガソリン化(2035年まで)

出典:東京都環境局公式サイトの資料を基に作成

目標とする数値は2000年比の削減目標や割合を上方修正しています。また、新車は100%非ガソリン化を目指すなど、取り組みを強化する内容になっています。

「ゼロエネミッション東京戦略2020 Update & Report」のなかで東京都は、「2030年のライフスタイルやビジネスモデルなど、社会システム全体を、カーボンハーフにふさわしい、持続可能なものへ移行させることが必要」としています。

東京都が懸念するコロナ収束後のリバウンド

日本経済新聞の報道によると、新型コロナウィルスの感染拡大による経済活動の停滞で2020年の世界におけるCO2排出量は前年比で5.8%減少しました。IEA(国際エネルギー機関)によれば第2次大戦後で最大の減少幅になります。

そのうち、日本は6.5%と平均値以上に減少しています。大きな要因はコロナ禍で人の移動や荷物の輸送などが鈍り、運輸業界でのCO2排出量が大きく減ったことです。

しかし、この現象はコロナによる一時的なものであり、東京都はコロナ収束後のリバウンドを懸念しています。すでに海外ではロックダウンの解除による経済活動の再開により、CO2排出量の減少幅は徐々に縮小しています。

今後、日本でも経済活動が本格的に再開されると、CO2排出量が再び増加する恐れがあります。経済の復興とCO2排出量の抑制をいかに両立させるかが今後の課題です。

世界では、人や物の移動が鈍ったことにより石油の消費量が大きく落ち込んだ結果、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が27%から29%に増加するプラスの効果も見られています。やはりCO2削減には、再生可能エネルギーの比率をさらに上げるしかないことがわかります。

2050年のゴールへ向けて取り組み強化へ

東京都はゼロエミッションの実現には脱炭素化が不可欠としていますが、世界有数の大都市である東京は、消費されるエネルギーの大半が化石燃料に由来しているのが現状です。東京都はゼロエミッションを実現するために、以下のような2050年に目指すべき姿を想定しています。

・再エネを基幹電源とする100%脱炭素電力が供給されている
・再エネの地産地消とエネルギーシェアリングが標準化
・再エネ大量導入を水素で支える
・あらゆる分野でCO2フリー水素を本格活用。脱炭素社会を支えるエネルギーの柱に
(東京都環境局公式サイト)

2050年のゴールに向けて東京都が行う今後の取り組み強化の行方が注目されます。

世界共通の目標である、「2050年のカーボンニュートラル」達成に向けて企業の取り組みも問われています。自社ビルは必ずどこかの自治体に所属していますので、国のエネルギー政策の行方に注目するだけでなく、自社が所属する自治体の取り組みも把握する必要があります。

自社の環境活動が地元自治体のゼロエミッションの目標達成に貢献できれば、企業としても有意義な成果といえるでしょう。

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