電源構成再エネ比率を上方修正!新エネルギー基本計画の素案まとまる
(画像=ogustudio/stock.adobe.com)
丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

将来の電源構成に大きな影響を与える、政府の新しいエネルギー基本計画の素案がまとまり発表されました。再生可能エネルギーの普及を一段と加速させる歓迎すべき内容になっています。基本計画素案の内容と、電源別の今後の見通しを考えます。

2018年のエネルギー基本計画における電源構成比

政府のエネルギー基本計画は3年に1度改訂されます。前回は2018年に策定されましたが、2021年は改定の年にあたり行方が注目されていました。

2021年7月21日、経済産業省は有識者会議で「第6次エネルギー基本計画」の素案をまとめました。見直された新しい基本計画で特筆したいのは、エネルギーの電源構成比が2018年の計画から大幅に修正されたことです。2018年の計画における電源構成比を振り返ってみましょう。

2018年の「第5次エネルギー基本計画」では、2030年までにエネルギーミックスを確実に実現するため、電源構成比で再生可能エネルギー22~24%、原子力発電20~22%、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料56%という構成比にすることを目標に定めていました。

2018年の計画では、2030年における化石燃料の構成比がまだ50%を超えており、化石燃料に依存する体質から抜け出せない状況が見てとれます。

2021年のエネルギー基本計画はどう変わるか

では、2021年の第6次エネルギー基本計画では、3年前の電源構成比目標からどのように変更になったのでしょうか。

まず全体像ですが、資源エネルギー庁の資料によると、「2050年カーボンニュートラル(2020年10月表明)、2030年の46%削減、更に50%の高みを目指して挑戦を続ける新たな削減目標(2021年4月表明)の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すこと」を重要なテーマに掲げています。

そのためには「これまで培ってきた脱炭素技術、新たな脱炭素に資するイノベーションにより国際的な競争力を高めることが重要」で、同時に「安全性の確保を大前提に気候変動対策を進める中でも、安定供給の確保やエネルギーコストの低減(S+3E)に向けた取組を進める」としています。

次に電源別の目標ですが、第6次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーの比率を大幅に引き上げているのが目立ちます。再生可能エネルギーの比率について、2018年の22~24%を2021年は36~38%に引き上げ、主力電源化を徹底するとしています。それに伴い、化石燃料による火力発電の比率を56%から41%へ大幅に引き下げます。化石燃料への依存度を50%以下にする経済産業省の意気込みは評価すべきものがあります。

ただし、原子力発電の構成比率は20~22%を維持する方針で、原子力への依存度を下げない点では問題を残した提言ともいえます。

 2019年の電源構成第5次エネルギー計画第6次エネルギー計画
再生可能エネルギー18%22~24%36~38%
原子力6%20~22%20~22%
LNG(液化天然ガス)37%27%20%
石炭32%26%19%
石油等7%3%2%
水素・アンモニア0%0%1%
温室効果ガス削減割合14%26%46%(更に50%の高みを目指す)

出典:資源エネルギー庁資料を基に作成

では、電源別エネルギーの現状と課題を整理しておきましょう。

風力発電の現状と課題

風力発電は2019年時点で0.76%と太陽光に比べてかなり普及が遅れています。風力発電は、大きく分けて陸上風力と洋上風力があります。設備1基あたりの発電量は洋上風力が年間約8,000世帯の消費電力分で、陸上風力の約1,450世帯分を大きく上回っています。また、風況も洋上風力のほうが優れています。

洋上風力の導入促進が望まれますが、逆にコストが陸上風力よりも大幅に高いというデメリットがあります。資源エネルギー庁が公表した2030年の電源別発電コスト試算でも陸上風力のkWhあたり9円台後半~17円台前半に比べ、洋上風力は26円台前半と予測されています。洋上風力導入を促進させるためには、さらなるコストの低下が必要になります。

太陽光発電の現状と課題

太陽光発電は、2019年時点で7.4%と前年の6.5%から1%程度増加しています。経済産業省は現在再生可能エネルギーの普及に最も力を入れており、近年急速に普及しているエネルギーです。個人の住宅でも導入することが可能なことから、国民的なプロジェクトにしやすいというメリットがあります。

2021年7月12日に経済産業省が発表した、2030年の電源別発電コスト試算では、太陽光の発電コストが全エネルギーのなかで最も安くなる見込みです。

第6次エネルギー計画では36~38%と高い構成比の目標が設定されましたが、今後鍵を握るのが太陽光義務化の行方でしょう。手始めに国や地方自治体などが公共施設を新築する際は太陽光パネル設置が義務付けられます。

火力発電の現状と課題

火力発電のなかで石炭は欧州を中心に関連企業がダイベストメント(問題ある企業に投資や融資した資金を引き揚げること)の対象になっており、世界的に縮小の傾向にあります。国内では2019年の時点で32%と高く、2030年でも19%程度は残る見通しです。

LNGは2019年の時点で37%と全エネルギーのなかでトップになっていますが、2030年には20%まで低下する見込みです。ただし、後述する原発の再稼働が流動的ですので、原子力が不足する場合はLNGの比率が高まる可能性があります。

火力発電の課題は、温室効果ガス削減割合目標の達成に悪影響を与えることです。クリーンエネルギーである再生可能エネルギーの普及や原発再稼働までのつなぎ役としてどこまで役割を果たせるかが注目されます。

原子力発電の現状と課題

原子力発電は20~22%の構成比率を維持する方針ですが、実現には原発再稼働という大きなハードルがあります。電力会社が再稼働を申請している原発をすべて再稼働させることが、目標達成の前提になっているのです。

再稼働を申請している原発は27基あります。2021年6月23日にようやく福井県内の原発3基のうち、関西電力美浜原発3号機が10年ぶりに再稼働したばかりです。原発再稼働には依然として国民の反対の声が多く、実現は容易ではないでしょう。

新電源構成を達成するために必要な政策は?

新たに設定された電源構成目標を達成するためには、政策の後押しも必要になるでしょう。前述したように、2021年6月9日、政府が「国・地方脱炭素実現会議」を開き、国や地方自治体が所有する公共施設の建物や土地への太陽光発電パネル設置義務化の方針を打ち出しました。

電源構成再エネ比率を上方修正!新エネルギー基本計画の素案まとまる

今後は、個人の住宅や企業ビルへの設置を義務付けるかが課題となります。2021年度は義務化が見送られましたが、以前からZEH住宅の普及目標は経済産業省・国土交通省・環境省から示されていました。

内容は「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上をZEHにし、2030年までに建売戸建や集合住宅を含む新築住宅の平均でZEHを実現することを目指す」というものです。

これを目標から義務化に持っていけるかどうかが普及加速への決め手になるでしょう。ZEH住宅には一般ZEH住宅で60万円+α(90万円の先進的再エネ熱等導入支援事業と併願可)という高額な補助金(2021年度分)も出ることから施主にとってもメリットは大きいですが、義務化となると「個人の自由」との兼ね合いが課題となりそうです。

第6次エネルギー基本計画は太陽光発電事業者にとっては追い風となる内容になりました。次回のエネルギー基本計画の改訂は2024年に行われる予定です。そのときに火力発電の比率を上げず、原子力発電の比率を下げるためにも、今後3年間再生可能エネルギーの一段の普及に全力をあげることが求められます。

※本記事は2021年8月3日現在の情勢を基に構成しています。エネルギー基本計画の内容は流動的ですので、今後変更になる可能性があります。

【オススメ記事】
そもそも再生可能エネルギーとは?その必要性やメリット、種類について解説
Googleが取り組む再生可能エネルギー対策とは
RE100とは?Apple、Google、IKEAなど世界的企業が参画する理由と実例
バイオマス発電投資は本当に儲かるの?利回りやメリット・デメリットについて解説
クリーンエネルギーETFとは?太陽光発電投資とどっちがおすすめ?