ディカプリオが共感する「オールバーズ」 サステナブルなシューズブランドが成功した理由
(画像=ДмитрийТкачук/stock.adobe.com)
本間貴志
本間貴志
ビジネス書・実用書専門の「アスラン編集スタジオ」の編集ライターを経てフリー。2015年より秋田県に移住、テレワークによる柔軟な働き方を実践中。

オールバーズ(Allbirds)は、レオナルド・ディカプリオ氏が投資したことで知られるサステナブルなシューズブランドです。2020年には日本進出も果たし、国内外で支持者を増やし続けています。ブランド立ち上げからわずか5年でオールバーズへの共感が世界中に広がった理由を考察します。

オールバーズはサステナブルなベンチャー企業の好例に

オールバーズは、2016年にサンフランシスコで誕生したサステナブルなシューズブランドです。シリコンバレーで支持され、その共感がアメリカ、そして世界中に広がっています。

直営店舗はアメリカの主要都市のほかにロンドン、上海、ベルリンにもあり、2020年1月には日本進出も果たしています。原宿店、次いで丸の内店が開店しています(2021年8月現在)。

オールバーズを立ち上げたのはサッカーの元ニュージーランド代表ティム・ブラウン氏、そしてバイオテクノロジーの専門家ジョーイ・ズウィリンガー氏。異分野で活躍してきた人材のタッグでブランドが成功した点にも話題性があります。

オールバーズはシューズのなかでも、ランニングシューズ、スニーカー、デッキシューズ などのカテゴリーをカバーしています。ランニングシューズやスニーカーといえば、ナイキ、アディダス、プーマなどのグローバル企業がひしめく超激戦のカテゴリです。

そんな過酷な市場環境でもサステナブルをテーマに展開をすれば、ベンチャー企業でもシェアが得られることをオールバーズは証明しました。

SDGsやESGの意識の高まりとともに今後、さまざまな分野でサステナブルをコンセプトにしたベンチャーブランドが誕生することが予想されます。オールバーズはその好例となりました。

ただし、サステナブルを打ち出せば即ユーザーの共感を集められるわけではありません。オールバーズが成功したのには次の3つの理由があります。

オールバーズが成功した3つの理由:とくに天然素材へのこだわりに注目

本稿では、オールバーズが成功した理由を次の3つと考えます。

  1. ブランドの強力な理解者の存在
  2. 天然素材からのインスピレーション
  3. シンプルにこだわったデザイン

オールバーズが成功した理由1:ブランドの強力な理解者の存在

オールバーズは、熱心な環境活動家として知られるハリウッド俳優のレオナルド・ディカプリオ氏が投資をしたことで知名度と信頼感を獲得しました。

ディカプリオ氏はオールバーズの公式サイトのブランド紹介動画(リンクはこちら)にも出演しています。彼がいかにオールバーズに肩入れしているかがおわかりいただけるでしょう。

この動画でディカプリオ氏はオールバーズを絶賛する一方的なメッセージを発信するのではなく、私たちが素材にこだわることの大切さを説いています。

このメッセージ設計は結果的に、環境負荷の少ない天然素材にこだわるオールバーズを称賛する構図になっています。このような一方的でないメッセージ設計も「共感」がキーワードの時代にフィットするものです。

オールバーズが成功した理由2:天然素材からのインスピレーション

まさに、ディカプリオ氏がブランド紹介動画で訴求していた「素材へのこだわり」がオールバーズの生命線といえます。オールバーズの素材に対する独自の考え方は、一般的なシューズブランドと比較するとわかりやすいでしょう。

最近では、SDGsが重視される時代となり、スポーツアイテムのグローバル企業各社がリサイクル素材を積極的に取り入れています。一例では、「ナイキ エア ヴェイパーマックス 2020 フライニット」では重量の50%以上にリサイクルポリエステルやリサイクルフォームなどのリサイクル素材が採用されています。

また、アディダスではブランドを象徴する名品「スタンスミス」の最近のモデルでアッパーの50%以上にリサイクル素材を使っています。

つまり、単に「リサイクル素材」を使っているというブランド設計では、グローバル企業と差別化できないわけです。オールバーズでもリサイクル素材は使われていますが、この部分がブランドの核ではありません。オールバーズは環境負荷の少ない天然素材を活用していることでブランドの個性を形成しています。

ブランド立ち上げ後、最初に発売されたシューズ「Wool Runners(ウールランナー)」では登山用下着の素材などにも使われている素材のメリノウールを使用。オールバーズでは、メリノウール使うことで「従来の合成素材と比べてエネルギー消費量を60%削減できる」とアナウンスしています。

加えて、このシューズのインソールにヒマシ油を採用することで、「石油よりも炭素排出量を抑えることが可能」とのことです。

その後発売されたシューズ「Tree(ツリー)」ではユーカリの木の繊維由来の素材を採用しています。オールバーズではこのユーカリの木の繊維由来の素材を使うことで「コットンなどの従来素材と比較して水の使用量を95%、CO2排出量を50%削減できる」とアナウンスしています。

また「Wool Runner-up(ウールランナーアップ)」の靴底部分ではサトウキビ由来の素材を採用しています。雨水のみで育てられ生育スピードが早いことからCO2排出量の抑制に貢献するのがこの素材の特徴です。

オールバーズが成功した理由3:シンプルにこだわったデザイン

これまでのランニングシューズのデザインの主流は、ロゴが大きくあしらわれたカラフルなものでした。

オールバーズのランニングシューズは対極的に、シンプルを極限まで追求したデザインがベースになっています。このデザイン戦略で従来のランニングシューズのデザインがフィットしない層を一気に取り込みした。

オールバーズのアイテムは、一見するとランニングシューズに見えないくらいのシンプルさです。ロゴの表記もかかと部分にさりげなく入れるなど控えめになっています(ロゴのあしらいはモデルによって異なります)。

オールバーズは進化し続けている アパレル分野にも力を入れる

オールバーズの最新動向も見てみましょう。冒頭でご紹介した通り、オールバーズが誕生したのは2016年です。約5年間で急速な進化を遂げてきました。

シューズブランドのイメージのあるオールバーズですが、現在はシューズのカテゴリを超えて、アパレル分野にも力を入れています。スポーツウェアのほか、ニット、ジャケット、下着などもカバーしています。

もちろん、オールバーズらしくアパレルでも環境負荷の少ない天然素材がベースになっています。たとえば女性ものでは、ヘンプとユーカリの素材を組み合わせた普段着使いのリブドレスなども提供しています。

このアパレル分野の売上が拡大すれば、オールバーズがシューズメーカーではなく、総合アパレルメーカー、さらには環境負荷の少ない天然素材メーカーとして認知される日が来るのかもしれません。

新規ビジネスにおいてサステナブルというのは前提でしかない

オールバーズの成功の理由を表面的に見れば、タイミングがよかったということになるでしょう。SDGsやESGへの意識が高まる時代に、サステナブルなブランドと商品がハマったという見方もできます。

しかし、実際にはサステナブルなブランドというのは前提でしかなく、先に挙げたような3つの理由(ブランドの強力な理解者の存在、天然素材からのインスピレーション、シンプルにこだわったデザイン)が欠かせなかったと考えられます。

サステナブルな商品・サービス・活動などを進めようとしている経営者やご担当者にとってオールバーズは参考になる存在です。サステナブルであることは前提でしかありません。そこで満足するのではなく、「(新しい時代のユーザーが共感する)どんな付加価値を生み出せるか」を追求していくと成功に近づきます。

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