パタゴニアがSDGsやサステナブルを象徴するブランドであり続ける理由
(画像=Pixel-Shot/stock.adobe.com)
本間貴志
本間貴志
ビジネス書・実用書専門の「アスラン編集スタジオ」の編集ライターを経てフリー。2015年より秋田県に移住、テレワークによる柔軟な働き方を実践中。

SDGsやサステナブルへ取り組むことで「自社のビジネスを優位に導きたい」という経営者や担当者もいらっしゃるでしょう。

参考になるのが、サステナブルの取り組みでほかのアウトドアメーカーやファッションブランドと圧倒的な差別化を図っている「パタゴニア」です。彼らはどのように優位なポジションを獲得したのでしょうか。その歩みから学びましょう。

国連で最高の環境賞「地球大賞」を受賞したパタゴニア

パタゴニアは本格的なアウトドア・アイテムから、タウンユースな ファッションアイテムまでをカバーする、米カリフォルニア発のブランドです。本格的なアウトドア・アイテムとしてはクライミング、サーフィン、トレイルランニングなどの分野を得意にしています。ファッションアイテムでは、Tシャツ、フリース、デニムなどが人気です。

パタゴニアの唯一無二のブランド価値は、SDGsやサステナビリティの意識の高い層に、絶大な支持を集め続けていることです。

さらに2019年には国連で最高の環境賞「地球大賞(UN Champions of the Earth Awards)」を受賞しています。地球大賞は2005年から国連環境計画(UNEP)が毎年開催しているもので、環境にポジティブな影響を与えた政府、民間企業、市民団体などに対して与えられます。

ここまでパタゴニアが評価される理由としては、「ファッションのサステナビリティと環境活動のスタンダードを開拓者としてつくってきた」ことが挙げられます。これについては、パタゴニアの歴史を知るのが近道でしょう。

創業者・イヴォン・シュイナードのクライミングギア工房からはじまったパタゴニアは、設立した1973年から環境活動に取り組んできました。

ただ当初は、サーフポイントやフリークライミングスポットの岩壁が傷むのを防ぐための活動などで、現在のようにサステナビリティを全面に打ち出すまでには至っていませんでした。1991年頃までのパタゴニアはアイテムの機能と品質の追求をすることで急成長し続けます。しかし、アメリカの景気悪化の影響を受けて、同年の7月に従業員の20%を解雇するに至ります。

これを機に イヴォン・シュイナードは、パタゴニアが地球環境と同様に自己の資源と能力の限界を超えていたと感じ 「持続不可能なブランドから持続可能なブランドへ」と大きくシフトチェンジする決意をしたのです。といっても、パタゴニアがまず取り組んだのは、管理職の大幅削減、在庫管理の一元化、販売経路の集中管理化など高利益体質に生まれ変わる取り組みでした。

パタゴニアはサステナビリティの基本形をつくってきた

その後1993年以降になると、現在のパタゴニアらしいサスティナビリティ重視の施策が次々に実現していきます。

・1993年/ペットボトルのリサイクル糸でつくった名作「シンチラ・フリース」のジャケットを業界に先駆けて開発
・1994年/ウエア製造による環境負荷を検証するために「環境アセスメント報告書」を作成
・1996年/使用するコットンをすべてオーガニックコットンに切り替え

SDGs時代の現在では珍しくない「リサイクル素材」「環境レポート」「オーガニックコットン」などの取り組みにパタゴニアは今から15〜18年も前に着手していたのです。加えて現在のパタゴニアは下記のテーマにも先進的に着手してきました。

・石油への依存が削減できるリサイクルポリエステルの使用
・二酸化炭素の排出を抑えるリサイクルコットンの使用
・環境への影響が少ないヘンプの使用 など

この開拓者としてのリスペクトと信頼がパタゴニアというブランドを特別な存在にしているのです。アウトドア業界、ファッション業界のサステナビリティの基本形は、パタゴニアがつくってきたといっても過言ではありません。

パタゴニアはサプライチェーンの大掃除に注力してきた

前項で紹介した取り組みと併行して、パタゴニアはサプライチェーンの透明化とチェック機能の強化も進めてきました。 イヴォン・シュイナードの言葉でいえば「パタゴニアが一番注力してきたのは、サプライチェーンの大掃除」となります。

例えば、サプライチェーンに所属する 生産者の人権を守る取り組みでは、今から1991年にすべての契約工場を招いてのサプライヤー会議を開催。各工場の格付けを始めています。さらに1990年代半ばになると、第三者監査機関による契約工場の訪問監査に着手。その後、下請け工場の透明性を高めるとともに、労働者の公平な賃金を重要なチェック項目にしています。

加えて、2014・ 15年秋冬シーズンになるとアメリカのフェアトレード認証団体と提携し、アウトドアウェア・ブランドとして初めてフェアトレード認証アイテムを発売しています。

環境悪化に対する「先進的な取り組み」にこそ意味がある

ここまでお話ししてきたパタゴニアの歩みは、取引先や消費者から信頼されるサステナブル企業になるためのヒントになります。

見せかけだけではない真のサステナブル企業になることは、一朝一夕ではできないことを彼らは教えてくれます。パタゴニアは、消費者・環境・労働者に貢献する施策の1つひとつを数十年間にわたって1つひとつ地道に実現することでサステナブル・ブランドの地位を確立しました。

もうひとつパタゴニアの歩みから学べることは、競合が思いつかない、あるいは 尻込みしてしまうような先進的な環境活動をしていくことで優位なポジションを得られるということです。「競合がやっているからSDGsの活動をやらなければならない」といった同調圧力的な発想では、どこまでいっても優位なポジションは得られません。

国連の「地球大賞」を受賞したときの国連環境計画/事務局長、インガー・アンダーセン氏も (パタゴニアの成功は)「気候変動や環境悪化に対して企業が先進的な取り組みをすることを消費者も望んでいることを明らかにしてくれている」と述べています。

2020年にCEO交代 パタゴニアは先進企業でいられるか

最後に、環境保護やサステナビリティの意識が高まる時代において、絶対的に優位なポジションを得たパタゴニアの現在についてフォーカスしたいと思います。

まず、パタゴニアのミッション・ステートメントはずっと守り続けてきた「環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える」から、2018年に「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」に変更されています。表現は変わっても、パタゴニアの活動の中心に地球環境の保護があることは同じです。

気になるのは、CEO(最高責任者)のポジションです。2020年6月にCEOのローズ・マーカリオ氏が退任、最高執行責任者のダグ・フリーマン氏が指揮をとっていました。

その後、CEO選びは難航しているといわれてきましたが、同年9月にパタゴニアの持株会社「パタゴニアワークス」のCEOにライアン・ゲラート氏、このパタゴニアワークスが擁するアパレル事業のパタゴニア・インクなどのCEOにはジェナ・ジョンソン氏が就任しています。

ゲラート氏は登山用品メーカーのブラックダイヤモンド・イクイップメントの社長を経て、パタゴニア入社後は同社の国際ビジネスを監督してきました。また、ジョンソン氏はパタゴニアに入社してから10年以上のキャリアがあり、アパレル部門のマネージャーを務めてきました。

パタゴニアの現場を知り尽くす2人のCEOが、サステナブルと環境保護を優先する企業が増えるなかで、それらとどのように差別化を図っていくのか。この一点に「パタゴニアが将来もサステナブルの先進企業でいられるか」がかかっています。

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