SDGs×サステイナブルファッションとは?環境とファッション産業の実態
(画像=Vasiliy/stock.adobe.com)
武井利明
武井利明
住宅メーカーに約20年営業職で勤務。現在は住宅関係をはじめ不動産投資、太陽光発電、環境問題、SDGs、脱炭素など幅広いテーマを執筆するライターとして活動。また人気動画サイトの台本作成も手がける。丁寧にリサーチを行い、複雑な話題を正確にわかりやすく伝える文章を得意としている。

近頃はSDGsや、サステナブルファッションへ取り組む衣料品企業やブランドが増えています。しかしそれはPRや差別化としてやっているのであり、企業方針が違えば熱心に取り組む必要はないと思っている人はいないでしょうか。

ところがファッション産業は、実は環境への負荷が大きいと世界の注目が集まっています。これからは環境保護や省エネの対策をしていない企業は、世論の批判を浴び生き残れない可能性があります。

ここでは、ファッション産業が環境へ悪影響をおよぼしている実態と、その解決に取り組む企業の事例を紹介します。今後もファッション産業の中で、存続する企業になるための参考にしていただけるはずです。

グローバル分業された複雑な産業構造

ファッション産業は、製造から廃棄までにかかるエネルギーが膨大で環境負荷が大きい産業です。その原因はグローバル分業された複雑な産業構造にあります。

衣料品は原材料の調達から、紡績、染色、裁断、縫製などの工程が海外の工場に細かく分業されています。さらに衣服一つを取っても、表地、裏地、中綿、ボタン、ファスナーなど素材も多種多様になっており、それぞれ別工場で作られています。

そしてこの多くが途上国などにあり、製造上のCO2削減が金銭や意識の問題で難しくなっています。しかも細分化のおかげで、エネルギー消費やCO2排出の現状がつかみにくいという問題もあります。

製造以降のエネルギー消費量も大きい

また製造以降のエネルギー消費量も、ファッション産業では無視できません。特に日本は売られている衣料品の約98%が海外からの輸入であり、輸送に大きなエネルギーがかかっています。さらに衣料品を販売する店舗で使われるエネルギーも大量ですが、太陽光発電を導入しているところはごく一部です。

消費者が捨てた衣料品の、回収や焼却、埋め立てなどでも多くのCO2が排出されエネルギーが使われています。このようにファッション産業の持つ構造から、製造や販売そして廃棄まで膨大なエネルギーが消費され、大きな環境負荷が生まれているのです。

衣服が与える具体的な環境負荷

具体的な数字で見ると、衣料品生産時の環境負荷は非常に大きいことがわかります。環境省によると、ファッション産業で原材料調達から製造段階までに排出される年間のCO2は、約9万ktにものぼります。服1着の換算では約25.5kg(*1)で、500mlペットボトル約255本分の製造量に匹敵します。

また水の消費量は年間約83億㎥、服1着あたりでは約2,300L(*1)と浴槽111杯分もの水を使います。近ごろの衣料品の低価格化による消費増大もあり、非常に大きな環境負荷を引き起こしているのです。

(*1) 日本国内の衣服供給量約35.3億着(2019年度)から試算

低価格化による大量消費と環境負荷

日本では1990年に服1枚が6,848円でしたが、2019年には3,202円まで下がっています。つまり衣料品を手に入れやすくなってはいますが、おかげで必要ない衣料品まで購入している可能性があります。

環境省のデータによると、1人が購入する服の枚数は年間約18枚なのに対し、手放す服は約12枚です。つまり消費して足りなくなった以上の服を買っていることになります。実際に着用されない服は約25枚もあり、低価格化によって必要ない服まで買っている状況がうかがえます。

こうした大量消費は大量生産と大量廃棄につながり、より多くのエネルギー消費と環境負荷を生んでいると懸念されています。

サステナブルファッションへの取り組み

このままファッション産業が地球にダメージを与え続ければ、環境が悪化するのはもちろんファッション産業自体の持続も難しくなります。そうした危機感から、サステナブルファッションへ取り組む企業やブランドが現れています。

サステナブルファッションとは、エネルギー消費や環境負荷を抑えた持続可能なファッションを意味します。リサイクルやリユースを活用したり、セールなどで安く大量に販売する戦略を見直したりして、過剰生産や大量廃棄を抑制します。

ここでは、サステナブルファッションへ取り組む企業やブランドを紹介します。

日本環境設計のポリエステルリサイクル

日本環境設計は衣料品を回収し、リサイクルして新たな衣服を作り出す「衣服の循環」に取り組んでいます。中でも、繊維生産量の約6割を占めるポリエステルのリサイクルに力を入れています。

ポリエステルは石油資源が主原料のため、CO2削減の観点からは使用を減らすべきです。しかしポリエステルは衣料品を作る上で扱いやすく、使わないようにするのは難しいという現実があります。そこで同社では、ポリエステルを積極的にリサイクルして新たに使う量を減らそうとしています。

H&Mの手がける布地リサイクル

世界的ファッションブランドH&Mは、2018年に香港の繊維アパレル研究開発センターと共同で布地リサイクル施設を作りました。アパレル市場で需要の高い、コットンとポリエステルの混紡布地からそれぞれを分離させるという困難な技術を実現したものです。

これはH&Mがめざす「廃棄物ゼロの100%循環型ファッション業界」を実現する取り組みの一つです。同社の創業地であるスウェーデンは、毎年発表されるSDGsランキング1位の常連国です。他にサステ ナブルな活動に熱心なIKEAもあり、環境や社会貢献への意識が高い国であることがわかります。

羽毛循環社会をめざす Green Down Project

これまで製品用の羽毛は、食肉用の水鳥から採取されゴミとして焼却されていたものを使っていました。しかし羽毛の急激な需要増加から、羽毛採取のみを目的とした水鳥飼育が横行しライブハンドピッキングも行われています。

こうした状況から羽毛の循環型ビジネスモデル確立をめざし、Green Down Projectが立ち上げられました。国内で羽毛を回収し、リサイクルする仕組みを共有することで新たな羽毛の需要を抑える取り組みです。

このプロジェクトには、ジーンズメーカーのLeeやアウトドアファッションブランドのsnowpeakといった衣料品メーカーから、寝具メーカーの西川株式会社など羽毛を使う幅広い企業が参加しています。

ワコールブラリサイクル

下着メーカーのワコールはブラジャーのリサイクルに取り組んでおり、2008年にスタートしてからすでに13回も行われています。ブラジャーを捨てにくいという女性の悩みにも応えたワコールらしい取り組みで、最近の回では総重量22t、枚数換算で22万枚ものブラジャーが集まりました。

回収されたブラジャーは、先ほどの日本環境設計の提携リサイクル工場で生活雑貨などのパーツに生まれ変わります。また2018〜2019年にかけて回収したブラジャーは、RPF(産業用固形燃料)に加工され石油系燃料の削減にも貢献しています。

ファッション企業が取り組めるCO2削減

ファッション産業は、製造から廃棄までにかかるエネルギー消費量が多い構造になっています。しかも日本の衣料品のほとんどが輸入品であり、低価格化による大量生産も加わってエネルギー消費やCO2排出が問題視されています。

今後は2030年の温室効果ガス46%削減に向け、大企業だけでなく中小企業にも省エネやCO2削減が強く求められます。さらに衣料品を売っているだけでなく、どんなサステナブルな取り組みをしているかも消費者は厳しい目を向けています。

製造におけるエネルギー消費量の削減は、1つの企業だけでは難しく時間もかかります。このため早急にCO2対策をするなら、オフィスや店舗に太陽光発電を設置するのが現実的でしょう。ぜひCO2削減への取り組みを行い、業界はもちろん企業も持続可能にしていきましょう。

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