補助金導入で加速するPPA。拡大が進むオンサイトと注目のオフサイト
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武井利明
武井利明
住宅メーカーに約20年営業職で勤務。現在は住宅関係をはじめ不動産投資、太陽光発電、環境問題、SDGs、脱炭素など幅広いテーマを執筆するライターとして活動。また人気動画サイトの台本作成も手がける。丁寧にリサーチを行い、複雑な話題を正確にわかりやすく伝える文章を得意としている。

初期費用の負担なく太陽光発電が設置できるPPAは、あらゆる企業にとって無視できないものとなっています。しかし同じPPAにオンサイトとオフサイトというバリエーションが登場し、これから太陽光発電を導入しようと検討している企業は混乱しているかもしれません。

そこでここでは、国の強力な後押しで注目の集まるオンサイトとオフサイトの2つのPPAについて詳しく解説します。2つの違いを理解したうえでPPAを選べば、よりメリットのある太陽光発電の導入ができるはずです。

企業の太陽光発電導入は原発10基分

環境省は2030年度の温室効果ガス46%削減に向けて、太陽光発電の導入目標を2,000万kW積み増す方針を固めました。2,000万kWとは原子力発電所20基分に相当し、これまでの導入目標の1.7倍である1億800万kW以上を目指すことになります。

こうした太陽光発電の普及拡大に向け、環境省では公共部門・企業・地域の3つを重点分野にするとしています。特に企業部門では、初期費用の負担なく太陽光パネルを設置できるPPAを広く周知し、原子力発電所10基分に相当する1,000万kwを増加したい考えです。

積み増し分2,000万kWの半分を企業が担うということは、2030年に向けてあらゆる企業が太陽光発電を導入する段階になったと言えます。

太陽光発電推進の切り札「PPA」とは

こうした中で環境省は、「PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」を策定し、太陽光発電などの導入を支援しています。先ほどから登場しているPPAとは、Power Purchase Agreement(電力販売契約)の略で第三者所有モデルとも呼ばれます。

PPAでは発電事業者が太陽光発電の設備を設置し、そこで発電される電力を企業などの需要家が購入します。企業にとっては設備投資を負担せずに、割安な電力を利用できることが最大のメリットです。また発電事業者は、設備投資を利用料によって回収した以降は利益を得ることができます。

この費用負担をゼロにするビジネスモデルは、資金的な問題で太陽光発電を導入できないでいる企業を後押しし、太陽光発電を一気に普及させると期待されています。

企業が理解しておくべき2つのPPA

環境省は今回の促進事業の目的として「オンサイトPPAによる再生可能エネルギーや蓄電池導入を支援」を第一に挙げています。また2021年度の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金として、「オフサイトコーポレートPPAによる太陽光発電供給モデル創出事業」も策定されました。

このオンサイトPPAとオフサイトコーポレートPPA(以下、オフサイトPPA)のどちらを選ぶかは、これから企業がPPAを取り入れるうえで大きなポイントになっています。

オンサイトPPA

まずオンサイトPPAとは、需要家である企業の建物などに発電事業者が太陽光発電設備を設置します。そこで発電された電力を企業が使い、発電事業者に利用料を支払うという従来のPPAです。

企業にとって費用負担なく太陽光発電を設置できるメリットはありますが、当然発電事業者は設備費用を負わなければなりません。そこで発電業者の設置を促進するために策定されたのが、「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」の補助金です。

2021年度の補助金額は、オンサイトPPAの発電設備導入にkWあたり5万円、設置工事費に10万円となっています。通常の太陽光発電設備のkWあたり4万円に比べ割り増しになっており、国の力の入れ具合がわかります。

オフサイトPPA

そして新たなPPAの方法として、オフサイトPPAが注目を集めています。このPPAの特徴は、需要家の建物などではなく別の場所に太陽光発電設備を設置して電力供給する点です。

これにより、需要家である企業の建物規模や形による太陽光パネルの設置制限が少なくなります。より大規模な発電設備から電力を購入することもできるのです。

またオフサイトPPAは、オンサイトPPAと同様に長期契約を前提としています。長期であるため設備を設置する発電事業者が、将来の収益見通しや設置の資金調達をしやすくなると考えられます。

一方の需要家側も、長期の電力コストが予想できるため収支計画が立てやすくなります。さらに今後の電気料金上昇へのリスク対策も可能です。

2021年度の補助金事業はすでに終了していますが、2030年に向けた太陽光発電の促進を考えると今後復活する可能性は十分にあります。オフサイトPPAを検討する企業は、補助金が再開したらすぐに動き出せるように事業計画を立てておくべきでしょう。

オフサイトPPAの導入例

日本ではまだ始まったばかりのオフサイトPPAですが、そのメリットから早速導入する企業が現れています。ここでは第一号となったNTTグループとセブン&アイグループの取り組みと、設備の分散配置でリスク回避を試みるクリーンエナジーコネクトの事例を紹介します。

NTTとセブン&アイが手を組んだPPA

NTTグループが設置し、セブン&アイグループに電力を供給する太陽光発電が国内初のオフサイト PPAになりました。

千葉市にあるこの発電所は、一般家庭200〜300世帯分に相当する年間886MWhの発電を想定しています。今後20年間にわたり首都圏のセブンイレブン40店舗に電力供給し、さらに年間2,500トンのCO2排出も削減します。

セブン&アイグループでは、2030年までにグループの店舗運営におけるCO2排出量を2013年比で50%削減し、さらに2050年までに実質ゼロにする目標を掲げています。今回のPPAは、その目標に向けた取り組みを大きく前進させるものとなりそうです。

分散設置でリスク回避するクリーンエナジーコネクト

株式会社クリーンエナジーコネクトは、オフサイトPPAとして関東エリアを中心とした複数の場所に、小規模な太陽光発電を分散設置する計画です。各所の電力を合流させ、都内の第一生命保険および清水建設が所有する複数の大規模オフィスビルに供給します。

小規模な太陽光発電を分散設置することで、自然災害などによる電力供給ストップのリスクを低減します。これは近年注目の高まる、危機的状況下でのBCP(事業継続計画)においてもメリットがある仕組みです。

また1ヵ所が小規模なため用地取得をしやすく、設備設置から電力供給開始までが短期間で行えるというメリットもあります。PPAによる太陽光発電設置の機運が高まっている現在、この素早く導入できる点に魅力を感じる企業も多いはずです。

対応が遅れれば企業価値急落の恐れ

企業部門への原子力発電所10基分という太陽光発電の割り当ては、相当数の企業が導入しないと実現は難しいものです。しかし国の強力な後押しから、今後PPAが多くの企業に採用されることは明らかです。

むしろこの状況下で、太陽光発電を導入しない企業は企業価値を急落させる可能性があります。環境に貢献しない企業として世間から強い批判を浴びるばかりか、海外投資機関からのプレッシャーにより金融機関の融資が受けにくくなる恐れもあります。

このPPAによる太陽光発電の導入は、中小を含めたすべての企業が真剣に検討すべきです。逆に早い時期に太陽光発電が導入できれば、環境対策に熱心な企業として評価されることもありえます。今後の企業価値を左右する、PPAによる太陽光発電導入を早急に検討するようにしましょう。

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