【連載】出遅れるな。RE100加盟企業が行っている取り組み|食品・外食業界編
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丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

100%再生可能エネルギーを利用して事業活動を行うことを目標とする「RE100」という企業連合にはGAFAM をはじめ世界の名だたる大企業が加盟しています。日本でも加盟する企業は増えていますが、RE100の達成を困難にしている国内要因もあります。今回は海外・国内の状況と併せ、食品・外食業界の取り組みについて紹介します。

GAFAMも加盟しているRE100の最新状況

米国5大IT企業と呼ばれるGAFAM(Google、Apple 、Facebook、Amazon、Microsoft)もRE100に全社加盟しています。世界的に事業展開をするGAFAMはエネルギーの使用量も膨大です。各社がRE100に加盟し、再生可能エネルギーの調達拡大に努力していることはよく知られています。

例えばGAFAMの一角Amazonは、自社ブログ「day one」(2021年5月11日付)のなかで、「北米とヨーロッパで、風力および太陽光を用いた実用規模のエネルギー・プロジェクト9件を新たに進めていること」を発表しました。「これによってAmazonは、世界最大の再生可能エネルギー調達企業となる」見通しを示しています。

2021年4月27日現在、RE100にはGAFAMをはじめ、世界で 308社が加盟しています。日本では2021年7月5日現在で56社が加盟。7月には新たにNEC(日本電気)が加わっています。海外・国内ともに月を追うごとに加盟企業は増えているので、今後も再生可能エネルギー100%を目指す動きが世界的なトレンドになりそうです。

RE100の達成は簡単ではない、達成が困難な日本の事情とは?

RE100に加盟する日本企業は徐々に増えていますが、再生可能エネルギー100%の達成は簡単なことではありません。日本で達成を困難にしている理由はおもに2つあります。

1つは「調達コストが高い」という理由です。RE100の年次報告書「RE100 Annual Progress and Insights Report 2020」によると、アルゼンチン、インドネシア、オーストラリア、韓国、シンガポール、台湾、中国、ニュージーランド、ロシアと並び、日本が「再エネ調達が最も困難な国」に評価されています。

地理的なハンデもあります。日本は米国や欧州と比べると国土が狭く、山が多いという特徴があるため、広大な土地を持つ国とは違った開発方法を考えなければなりません。2021年7月3日に静岡県熱海市で、違法な盛り土と集中豪雨に起因(静岡県見解)する土石流災害が起きた場所の近くに、メガソーラーが位置しており、改めて山の尾根を削った場所に建設するリスクが浮き彫りになっています。

安全性を考慮すると、日本では企業ビルの屋上や 遊休地などを太陽光発電事業者に貸し出す、コーポレートPPAを 普及させる必要があります。RE100に加盟する大企業には、全国に広い土地や工場を保有している例も多いので、山間部を避け災害リスクの少ない平野部での開発を進めるべきでしょう。

食品・外食業界はどんな取り組みをしているか

では、RE100加盟企業のなかから、食品・外食業界の取り組みについて 各社の公式サイトを参考に見てみましょう。

味の素

調味料最大手の味の素は、「2030年の目指す姿とアウトカム」というビジョンを策定しています。アウトカムとは「成果」「結果」という意味です。アウトカムは2つのテーマに分かれ、アウトカム1は「2030年までに、10億人の健康寿命の延伸」を目指しています。こちらは食品メーカーならではのビジョンです。ESG課題としてはフードロスを2018年比で2025年に50%削減することを掲げています。

アウトカム2では「2030年までに環境負荷を50%削減」を宣言しています。具体的なロードマップとしては、温室効果ガス排出量「Scope 1」「 Scope 2」*を2018年比で2020年に9%削減、2025年に30%削減、2030年に50%削減を目標にしています。ロードマップのなかで、2022年には再生可能エネルギー の直接調達を開始するとしています。

*Scope1=直接排出量、Scope2=エネルギー起源間接排出量

アサヒグループホールディングス

ビールメーカー大手のアサヒグループホールディングスは、「環境 自然の恵みを守る」と題して5つの取り組みテーマを掲げています。「気候変動」では中長期目標「アサヒカーボンゼロ」を設定しています。具体的な数字として温室効果ガス排出量「Scope 1」「Scope 2」 を2019年比で2030年に50%削減、2050年にゼロにすることを目指します。

「持続可能な原料調達」では、 各事業の重要原料の特定を行い、環境リスク、人権リスクなど、重要原料のリスク評価を行っています。「持続可能な容器包装」ではペットボトル、缶をはじめとする容器包装資材について、省資源・軽量化・リサイクル性向上に努めています。

「持続可能な水資源」では、グループ自社工場において 水使用量を3.2㎥/kl以下を目指して節水するなど、酒類・飲料メーカーとして相応しい活動を行っています。そして「循環型社会の構築」では、製造過程で発生する副産物(ビール酵母など)の100%再資源化を目指しています。

キリンホールディングス

同じくビールメーカー大手のキリンホールディングスは、長期経営目標を達成するための指針である「CSVパーパス」を策定しています。CSVとは共通価値の創造という意味です。テーマは「健康」「地域社会コミュニティ」「環境」の3つに分かれています。

そのうち「環境」では、「キリングループ環境ビジョン2050」を掲げています。ビジョンのなかで「気候変動影響への対応」については、自社グループバリューチェーン全体の温室効果ガスネットゼロという高い目標を持って取り組んでいます。

具体的には、仙台工場・名古屋工場・滋賀工場・神戸工場でPPAモデルによる太陽光発電電力の導入を2021年2月から開始しています。また、アサヒグループホールディングスと同様に「水資源への取り組み」「生物資源の取り組み」「容器包装の取り組み」など酒類・飲料メーカーとしての社会貢献も目指しています。

日清食品ホールディングス

カップ麺で知られる老舗食品メーカーの日清食品ホールディングスは、2030年度までの環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」を掲げ、事業活動を通じた環境負荷低減に取り組んでいます。CO2排出量については、「Scope 1」「Scope 2」 の合計排出量を 2030年までに2018年比で30%削減を目指しています。

再生可能エネルギーの使用については、一部の製造工場で太陽光パネルやバイオマスボイラー、ヒートポンプを設置しています。また、海外グループ会社香港日清では工場で発電した375MkW を、香港FIT制度を活用して売電しました。

食品メーカーならではの取り組みとしては、リサイクルできないカップ麺の容器を焼却する際に発生する エネルギーを利用した「ごみ発電電力」を使用しているのがユニークです。

ワタミ

居酒屋中心の外食企業ワタミは、外食業界では珍しく再生可能エネルギー事業を行っています。「風力・太陽光発電事業」では2012年に風力発電事業に参入し、「風民(ふーみん)」という名称で稼働を開始。さらに2013年からはグループの食品製造工場3ヵ所に設置したルーフソーラーでも発電しています。

「電力小売事業」では自社の3つの食品工場の屋根に設置したルーフソーラーで発電し、発電した再生可能エネルギーを含む電力を自社グループや社外へ販売しています。低圧電力が自由化された2016年4月からは個人宅への販売も開始しました。

さらに 「地域電力支援事業」として、2016年に大分県臼杵市で「うすきエネルギー株式会社」を設立しています。ワタミは2018年に環境負荷低減に対してグループ全体で活動を強化するため、「SDGs宣言」を策定しており、今後の取り組み強化が期待されます。

参考:各社公式サイト

真似したい取り組みはどれ?

紹介した5社のなかで真似したい取り組みは、ワタミの取り組みです。食品4社は比較的自社事業と親和性の高い取り組みを行っていますが、ワタミは外食とはまったく異業種といえる再生可能エネルギー事業に進出しています。事業内容の固定観念に囚われず、将来性ある新規事業を開拓した積極的な姿勢は見習うべきものがあります。

幸い現在は、補助金をはじめとして国や自治体も再生可能エネルギーの普及支援事業を行っており、太陽光発電を導入しやすくなっています。中小企業でも自社の施設を利用して太陽光パネルを設置することは可能です。自社の電力コストを削減するだけでなく、余剰電力を売電することでSDGsへの貢献と収益への上積みを両立させることができます。

RE100の達成は簡単ではありませんが、再生可能エネルギーの「調達コストが高い」という日本が抱える課題の1つを、太陽光発電パネルの導入によって緩和できることは、企業担当者として検討の価値あるポイントといってよいでしょう。

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