延長が決定した「中小企業経営強化税制」は再エネ促進に追い風か
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丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

再生可能エネルギーの普及目標を達成するには、大企業だけでなく中小企業の取り組みも欠かせません。しかし、太陽光発電等の導入には一定のコストがかかり、中小企業への公的な補助が必要になります。中小企業の再エネ導入促進を目的に延長が決定した「中小企業経営強化税制」について解説します。

「中小企業経営強化税制」とはどんな制度か

「中小企業経営強化税制」は、中小企業が特定の設備を導入した際に、国から支援を受けられる制度です。中小企業が設備投資を行い、生産性の向上や経営力の強化を手助けするのが目的です。

「中小企業経営強化税制」は、「青色申告書を提出する中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた一定の中小企業者などが指定期間内に、新品の特定経営力向上設備等を取得又は製作若しくは建設して、国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、特別償却または税額控除を認める」(国税庁見解)制度です。

指定期間は、平成29年4月1日~令和5年3月31日。一定の設備における類型と要件は下表のとおりです。

生産性向上設備(A類型)生産性が旧モデル比平均1%以上向上する設備
収益力強化設備(B類型)投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備
デジタル化設備(C類型)遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかを可能にする設備

A類型は10年以内に販売開始された設備という条件があります。税制優遇の内容は、「即時償却」と「買付金額の税額を10%控除」のいずれかを選ぶことができます。ただし、資本金が3,000万~1億円以下の法人のみ税額控除が7%となります。また、控除額には上限があり、その年の法人税額・所得税額の20%までとなっています。

「中小企業経営強化税制」適用対象法人とは?

「中小企業経営強化税制」の対象になる中小企業と認定されるには、以下の条件に該当する必要があります。

  • 資本金又は出資金の額が1億円以下の法人
  • 資本金又は出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
  • 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
  • 協同組合等

ただし、資本金または出資金の額が1億円以下の法人であっても、以下の場合は対象外となります。

  • 同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人
  • 2つ以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人
  • 前3事業年度の所得金額の平均額等が15億円を超える法人

引用:中小企業庁「中小企業経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」

「中小企業経営強化税制」による補助は、すべての太陽光発電が対象になるわけではありません。太陽光発電には「自家消費型太陽光発電」と「投資用太陽光発電」がありますが、「投資用太陽光発電」は対象外となります。また、自家消費型であっても、半分以上を売電する場合は対象外となるので注意が必要です。

利益の多い年に一括計上できる「即時償却」はメリット大きい

「中小企業経営強化税制」は「即時償却」を選択できるのが大きなメリットです。通常の「減価償却」は購入した設備の耐用年数に応じて毎年分割して経費に計上します。たとえば、耐用年数10年の設備を1,000万円で購入した場合、毎年100万円を10年間経費として計上することになります。

一方「即時償却」を選択した場合は、1,000万円の経費を分散せずその年に一括して計上することができます。したがって売上が多く、利益を圧縮したい年に一括計上することで節税になります。経費を前倒しで計上できることになるので、早期にキャッシュを回収したい場合に向いています。

デメリットは、初年度にすべて経費として計上してしまうため、2年目以降は節税効果を得られないことです。上記の例でいえば、500万円の利益しかない年に1,000万円の経費を一括計上しても節税効果は薄くなります。

「中小企業経営強化税制」申請の手順

では、「中小企業経営強化税制」の申請手順を確認しておきましょう。先に紹介したように対象になる設備は3つの類型に分かれています。このうち、太陽光発電に関する設備はA類型とB類型に該当します。両類型による申請の手順は下表のとおりです。

A類型B類型
1.当該設備を生産した機器メーカー等(設備メーカー)に証明書の発行を依頼する。

2.工業会等から証明書の発行を受けた設備メーカーから証明書が転送される。

3.確認を受けた設備を経営力向上計画に記載し、計画申請書類及びその写しとともに工業会証明書の写しを添付して、主務大臣に計画申請する。

4.主務大臣から計画認定書と計画申請書の写しが交付される。

5.設備を取得する。

6.納税書類に工業会証明書、計画申請書及び計画認定書(いずれも写し)を添付して税務申告する。

※A類型、B類型ともに認定を受けた経営力向上計画に基づき取得した経営力向上設備等については、税法上の他の要件を満たす場合には、税務申告において税制上の優遇措置の適用を受けることができます。
1.申請書(様式1)に必要事項を記入し、必要書類(当該申請書の裏付けとなる資料等)を添付の上、公認会計士又は税理士から事前確認を受ける。

2.公認会計士又は税理士が確認したのち、「事前確認書(様式2)」が発行される。

3.必要に応じて申請書の修正等を行った上で、事前確認書を添付の上、本社所在地を管轄する経済産業局に予約した上で、申請書の内容がわかる者が申請書を持参し、説明する。

4.経済産業局が説明を受けてから概ね1ヶ月以内に、事前確認書、申請書、添付書類に基づき、当該申請書が経営力向上設備等の投資計画として適切である場合に確認書を発行し、申請書及び必要添付書類を添付したものを渡される。

5.確認を受けた設備を経営力向上計画に記載し、計画申請書類及びその写しとともに工業会証明書の写しを添付して、主務大臣に計画申請する。

6.主務大臣から計画認定書と計画申請書の写しが交付される。

7.設備を取得する。

8.納税書類に工業会証明書、計画申請書及び計画認定書(いずれも写し)を添付して税務申告する。
出典:中小企業庁「中小企業経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」より抜粋。

B類型は経済産業局に出向いて説明する必要があるなど手続きが複雑なため、販売開始10年以内の設備を導入するなら自社で行う手続きが少ないA類型を選んだほうが無難でしょう。それぞれ適用になる設備の要件が異なりますので、公認会計士や税理士とよく相談して決めることが大事です。

中小企業の太陽光発電導入促進はなぜ必要なのか

「中小企業経営強化税制」は、中小企業の太陽光発電導入を後押しする制度ですが、中小企業の太陽光発電導入促進がなぜ重要なのでしょうか。下の表はすでに終了している「固定価格買取制度(通称:FIT制度)」について経済産業省の資源エネルギー庁が公表している再エネ発電方式別の導入容量・認定容量です。

発電方式別では太陽光の非住宅用(事業用等/1基あたり10kW以上)が断然多い導入容量であることがわかります。住宅用(1基あたり10kW未満)の約6倍の規模です。住宅用は数こそ多いですが、1軒1軒の発電量はそれほど多く望めないでしょう。やはり自社ビルの屋上や屋根に広いスペースを確保できる企業の導入がかかせません。

▽固定買取制度における発電方式別導入容量・認定容量
(平成29年3月末時点)

導入容量認定容量
太陽光(住宅用)475万kW549万kW
太陽光(非住宅用)2,875万kW7,905万kW
風力79万kW697万kW
中小水力24万kW112万kW
地熱1万kW9万kW
バイオマス85万kW1,242万kW
合計3,539万kW10,514万kW
出典:資源エネルギー庁

2030年における政府のエネルギーミックスの目標は、電源構成で再生可能エネルギーが22~24%に設定されています。内訳は、水力8.8~9.2%程度、太陽光7.0%程度、バイオマス3.7~4.6%程度、風力1.7%程度、地熱1.0~1.1%程度です。政府は2030年以降も普及を加速させ、2050年には再生可能エネルギー比率を50~60%とし、石炭やLNGに代わる主力電源にしたい考えです。

発電方式のなかで、中小企業でも導入可能なのはスペース的に太陽光のみなので、「中小企業経営強化税制」を活用して導入が進むことで、太陽光の比率が高まる可能性があります。結果的に2030年の目標を前倒しで達成できれば、2050年の目標により近づくことになり、政府としても喜ばしい結果となります。

設備を購入した年に一括して経費に計上でき、政府のエネルギーミックス目標達成にも貢献できる「中小企業経営強化税制」の有効な活用が求められます。

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