もっともサステナブルな腕時計ブランドを探せ
(画像=DWlabsIncorporated/stock.adobe.com)
本間貴志
本間貴志
ビジネス書・実用書専門の「アスラン編集スタジオ」の編集ライターを経てフリー。2015年より秋田県に移住、テレワークによる柔軟な働き方を実践中。

最近では、雑誌やWebメディアで「SDGsに取り組むアパレルメーカー」「サステナブルなファッションアイテム」のような特集や企画をよく見かけるようになりました。同じファッションアイテムでも、サステナブルな腕時計ブランドはどこでしょうか。国内ブランド、海外ブランド、さらにはスマートウォッチを含めてリサーチしてみました。

「シチズン」サステナブル時計をいち早く市場に投入した

シチズンは世の中でSDGsやサステナブルが提唱される以前から、環境負荷を極限まで減らした「エコ・ドライブ」を搭載した腕時計をリリースしてきました。

エコ・ドライブとは、光を電気に変換して時計を動かすシチズンの独自技術です。太陽光はもちろん、室内のデスクライトのような、わずかな光でも電気を生み出せます。内蔵したソーラーセルが電気を発生させる仕組みなので、定期的な電池交換が不要な点も魅力です。「廃棄電池を排出しない腕時計」としても知られています。

エコ・ドライブが搭載された腕時計が発売されたのは1998年です。それ以降、シチズンの数多くのモデルに採用されてきました。さらに、2016年からはエコ・ドライブを搭載したサステナブル腕時計「シチズン エル」を発売。腕時計づくりに欠かせない鉱物(金やスズなど)は貧しい国の紛争の資金源となることが多いですが、このアイテムでは紛争と関わらない「DRCコンフリクトフリー素材」が採用されています。

このほか「シチズン エル」の素材には、レザーの代替品として大量に廃棄されるパイナップル葉の繊維からつくられる天然素材「ピニャテックス」やPETボトルから生まれたポリエステル繊維なども採用されています。

ただ少し残念なのは、このようなサステナブルの追求が一部のモデルに限定されていることです。「シチズン エル」で培ったサステナブルのノウハウをどこまでブランド全体に広げていけるか期待したいところです。

「ロレックスやオメガ」高級腕時計はサステナブルに消極的?

次に、高級腕時計カテゴリに目を転じてみましょう。一般的に富裕層や高額所得者はSDGsやサステナブルに関心が高く、エシカル消費(人・社会・地域・環境に配慮した消費行動)に積極的といわれます。ラグジュアリーブランドは本気でサステナブルを追求しなければ顧客をつなぎ留められない、そんな時代になりつつあります。

ラグジュアリーブランドのSDGsの一例としては、グッチが2019年に自社のみならず、全サプライチェーンの事業活動で発生した温室効果ガスの排出をプラスマイナスゼロにすることに成功しています。また、ルイ・ヴィトンは、100%責任を持った原材料を調達する(2025年まで)、使い捨てプラスチックを使用しない(2030年まで)などの目標を掲げています。

このような「ラグジュアリーブランド=サステナブルに積極的」な流れがあるので、高級腕時計ブランドも同様の動きがありそうですが……実際には、製品づくりや素材調達の過程においてサステナブルが重視される動きは限定的です。

例えば、ロレックスやオメガの公式サイトの検索機能で「SDGs」「リサイクル」「サステナブル」などのキーワードを打ち込んでも、すべて検索条件と一致する結果が見つからないといった表記になってしまいます。
※2021年6月27日時点

ただ、アイテム紹介や技術紹介ではサステナビリティが強調されてはいないものの、ロレックスでは伝統ある社会貢献活動を続けています。1976年からはじまった「ロレックス賞」は、先進の科学や医療技術の研究家、あるいは、未開の地の探検家などと共に、環境や生態系の保護に尽力する人々もバックアップしています。

ロレックス賞の受賞者が選ばれる過程は、事前のインタビューや評価を経てファイナリストが選出され、最終的には独立した先行委員会(著名な探検家、科学者、事業者などから構成される)によって受賞者が選ばれるというものです。

なお、ロレックス賞の受賞者はプロジェクトを遂行するための助成金を得られます。これまで、ネパールのヒマラヤ山岳地帯の野生動物の保護、世界最大級の淡水魚である巨大ピラルクの保護などに関わる活動家がロレックス賞を受賞しています。

「トム フォード」海洋プラスチックごみをテーマに存在感を高める

腕時計専門のブランドではありませんが、総合ファッションブランド「トム フォード」が発表した腕時計は「サステナブル」というテーマを果敢に攻めている印象があります。

2020年12月に発売された「トム フォード タイムピース」は、海洋プラスチックごみを再利用した素材からつくられた腕時計です。しかも、この腕時計のもとになる海洋プラスチックごみの輸送はカーボンニュートラル(二酸化炭素排出ゼロ)で行われ、生産時のエネルギーには太陽光発電が利用されています。

これだけでもトム フォードの本気度に圧倒されますが、さらにこのサステナブル腕時計の発売と同時に、環境に負荷のない薄膜プラスチック(レジ袋などに使われる素材)の代替品の開発者に100万ドル(約1億円)の賞金を与えることも発表しています。

ファッションメディア『WWD JAPAN』のインタビューでトム・フォード氏は「25年には当該製品を市場に投入する予定だ」(当該製品=薄膜プラスチックの代替品)と述べています。近い将来、「トム フォード」がもっともサステナブルなファッションブランド 、腕時計ブランドと世界中から認知されるようになる可能性は十分あるといえるでしょう。

もっともサステナブルな腕時計ブランドは「アップル」である

腕時計といえば、最近ではスマートウォッチの存在感が増しています。今回の対象にスマートウォッチを加えるのであれば、現時点でもっともサステナブルな腕時計ブランドはアップルです。アイテムとブランド(企業活動)の両方で、高いレベルでサステナブルの実現をしている点が評価できます。

MMD研究所の「2021年スマートウォッチに関する利用実態調査」では、スマートウォッチの所有率は38.0%。男性のみで見ると43.4%の人がスマートウォッチを所有していると回答しています。そして、スマートウォッチを所有している人のうち46%がアップルウォッチを選択しています。これだけアップルウォッチが普及していることを考えると、アップルは腕時計ブランドの性格もあると考えてよいでしょう。

アイテムのサステナブルにおいてアップルウォッチは、2019年9月公開の製品環境報告書(Series5)の段階で、ケースの素材に再生アルミニウムを100%使用していることを発表しています。また、同じ報告書でサプライヤーの再生可能エネルギー利用100%を確約しています。

さらに、ブランドのサステナブルにおいてアップルは、自社の温室効果ガス排出でカーボンニュートラルをすでに達成しています。2020年7月にはサプライチェーンや製品の再生ライフサイクルを含めて、2030年までにカーボンニュートラルを達成することを約束すると発表しています。

アップルのサプライチェーンは110社以上も存在します。これだけ多くの企業を含めて約10年間でカーボンニュートラルを達成することは果敢なチャレンジです。カーボンニュートラルを「目指す」のではなく「約束する」という表現を使っている部分を見ても、アップルの本気度を感じさせます。

アップルのSDGsの取り組みは、カーボンニュートラルにフォーカスされることが多いですが、ほかにも有意義な取り組みを進めています。ケニヤの低質化したサバンナの復旧、100万エーカー以上の森林管理……もはやアップルは、IT企業やコンテンツ企業ではなく、環境企業なのかもしれません。

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