2030年のCO2削減目標で必須 注目のPPAモデルで企業価値を上げる
(画像=NicoElNino/stock.adobe.com)
武井利明
武井利明
住宅メーカーに約20年営業職で勤務。現在は住宅関係をはじめ不動産投資、太陽光発電、環境問題、SDGs、脱炭素など幅広いテーマを執筆するライターとして活動。また人気動画サイトの台本作成も手がける。丁寧にリサーチを行い、複雑な話題を正確にわかりやすく伝える文章を得意としている。

電力コスト削減のために太陽光発電設置を検討しているが、初期費用の捻出が難しいと悩む企業は多いと思います。そうした初期費用のハードルを取り払い、日本のこれからのCO2削減を推し進める主役となり得るのがPPAです。

PPAはまだ耳慣れない言葉かもしれませんが、これを早期に取り入れるかどうかで今後の企業価値が変わるかもしれません。アメリカではすでに飛躍的な成長をとげ、日本でもこれから普及が見込まれます。注目されるPPAのメリットと、企業が採用すべき理由を解説します。

注目されるPPAの仕組み

PPAはPower Purchase Agreement(電力販売契約)の略で、第三者所有モデルとも呼ばれます。PPA事業者が費用を負担して建物の屋根上などに太陽光発電システムを設置し、発電した電力を建物の所有者や入居者が購入する仕組みです。

使用者は、発電された電力のうち使用した分だけの料金をPPA事業者に支払います。太陽光発電の初期費用をかけずに再生可能エネルギーの電力を購入できると、すでにアメリカで導入が進んでいます。

アメリカで急速に広まる理由

アメリカで急速に広まる背景には、世界の脱炭素への流れがあります。CO2削減はもはや全世界共通の取り組みとなっており、再生可能エネルギーのようなCO2を排出しない電力を使うことは企業の社会的責任になっています。

しかし太陽光発電設備の初期費用は、高額なため簡単に導入できない企業もあります。その点PPAは、初期費用を事業者が負担するため資金捻出が難しい企業でも再生可能エネルギーを設置し、電力コストの削減も可能になるのです。

日本でも注目されるのは当然

日本でもPPAが注目されつつある理由の一つに、再生可能エネルギーの買取価格低下が考えられます。これまで太陽光発電を設置する初期費用は、発電した電力を売ることで早期に回収できるコストでした。

ところが買取価格の低下により、初期投資の回収完了がどんどん後ろ倒しになっています。住宅なら何十年も住むため将来的に回収できれば良いと考えられます。しかし企業にとって初期投資の回収は1年でも早いほうが良く、何十年も先の回収ではよほど安定している企業でない限り消極的になります。

そのため初期投資がかからず、電力コストの削減が期待できるPPAが注目を集めるのはある意味当然と言えます。

PPAのメリット

PPAには初期投資がかからず電力コストを削減できる以外に、次のようなメリットがあります。

設備費用の負担なくCO2削減に貢献

CO2削減は、大小を問わずすべての企業が負うべき社会的責任です。しかも日本政府は2030年に温室効果ガスを2013年比で46%削減するという非常に高い目標を掲げています。これを実現するには国内のすべての企業が、太陽光発電を設置するなどしてCO2削減に取り組まなければいけません。

初期費用を負担することなく太陽光発電を設置できるPPAは、CO2削減にも大きく貢献するのです。

維持費を負担せずに済む

PPAで設置した太陽光発電の維持費は、一般的に所有であるPPA事業者が負担します。建物を提供する企業は、太陽光発電設備の修理や交換、落雷や大雪による被害を保障する火災保険料などを負担せずに済みます。

太陽光発電は規模が大きくなるほど維持費も高額になります。この点も費用捻出の厳しい企業にとって大きなメリットになるでしょう。

BCP対策にも有効

BCP対策とは自然災害や大火災などが発生しても、企業が中核事業の継続や早期復旧ができるようにする計画です。災害時の対応を顧客と事前協議したり、代替設備や施設を準備したりすることです。さらに自然災害による停電が増加する近年は、太陽光発電の設置もBCP対策として注目されています。

太陽光発電による電力供給があれば、停電時の業務継続が可能になります。もし資金的に太陽光発電の設置が難しいようなら、PPAによる設置を検討しても良いでしょう。初期費用の負担のないPPAは、BCP対策を推進するうえでも有効なのです。

PPAの導入で注意しておくべき点

メリットの大きいPPAですが、一方で注意すべき点もあります。日本ではまだ実績の少ないPPAですので、次の点を十分に理解したうえで導入しましょう。

将来を想定した取り決めをしておく

PPAの契約は10年や15年が一般的で、20年や25年とさらに長期になる場合もあります。そのため期間終了後の譲渡や買取の条件などは、将来のさまざまな事態を想定した取り決めをして契約に盛り込んでおきましょう。

例えば、契約中に建物の改修や建て替えをすることになったら工事中の太陽光発電はどう扱うのか、移設や再設置の費用はどちらが負担するかなど、多くの事態を想定しておくと将来のトラブルを防げます。

またそれだけ長期であれば、途中で社会情勢なども変わる可能性があります。そのため契約条件の定期的な見直しについて定めておくのも良いでしょう。

買取後のメンテナンス費用を想定する

契約期間が終了し、太陽光発電を買い取った後にかかるメンテナンスや維持費を、十分に想定しておくようにしましょう。例えばパワーコンディショナーや細かな機器部品の修理・交換、パネルのクリーニングなどさまざまな費用がかかります。

契約中はPPA事業者が費用負担するため、譲渡後の維持費が予想できない場合もあります。そうならないために、PPA事業者と実際にかかったメンテナンス項目や費用についての情報を、共有しておくと良いでしょう。

PPAと自社設置は目的が異なる

PPAを利用せずに、自社で費用を捻出して設置する方が得なのではないか、と考える方がいるかもしれません。たしかにPPAの電気料金には設備費やメンテナンス費用、PPA事業者の利益が含まれるため、最終的な収支では自社で設置した方が出費は少なくて済みます。

ただしPPAの最大のメリットは、初期費用捻出が難しい企業が太陽光発電を設置できる点です。費用問題をクリアし、電力コスト削減やCO2削減への貢献を可能にするのがPPAの目的なのです。PPAと自社設置はコスト比較で選ぶのではなく、何を目的とするかで選びましょう。

企業がCO2削減に対策をしないリスク

日本政府が提唱した2030年の温室効果ガス46%削減目標はかなり高い目標です。今後大手企業はもちろん、中小企業に至るまですべての企業がCO2削減に取り組む時代になるはずです。逆にCO2削減に後れを取る企業は、価値を大きく落とす危険性があります。

過去に三菱商事が、ベトナムの石炭火力発電所に投資を行い国内外から強い批判を浴びました。石炭の発電はCO2を大量に排出します。三菱商事のような大企業のために批判が集まった面はあるかもしれませんが、石炭の発電所への投資は明らかに時代の流れに逆行しています。

日本の電力のおよそ8割はCO2を排出する火力発電です。このため各企業のCO2削減への取り組みは、どのような電力を選んでいるかにも及びます。CO2削減への貢献策をまだ講じてない企業は、一刻も早くにPPAの導入などでエネルギー転換を検討すべきです。

スピード感を持ってPPAに取り組むべき

太陽光発電による、電力コスト削減やCO2削減に積極的に取り組みたいが、資金面がネックだという企業にとってPPAはまさに救世主の仕組みです。資金の問題が解決されれば、太陽光発電の設置は企業にとって圧倒的なメリットをもたらします。

これからさらにCO2削減が加速し、PPAはより多くの注目を集めるはずです。スピード感を持って早期にPPAに取り組み、時代の先を行く企業として評価を高めてはどうでしょうか。

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