避けられない環境対策。エネルギー基本計画に企業担当者はどう向き合うべきなのか
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丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

政府の中長期的なエネルギー政策を示す「エネルギー基本計画」が2021年中に改定されます。国のエネルギー政策には企業の協力が不可欠です。環境対策が避けられない社会情勢のなか、エネルギー基本計画に企業担当者はどのように向き合うべきかを考えます。

エネルギー基本計画とは

「エネルギー基本計画」とは、エネルギー需給に関する政策について国が中長期的な基本方針を定めるもので原則として3年毎に見直されます。現行の第5次エネルギー基本計画は2018年7月に策定されました。次の第6次エネルギー基本計画は2021年中に発表される予定です。

第5次エネルギー計画においてはエネルギーの「3E+S」(安定供給・Energy security、経済性・Economic efficiency、環境・Environment+安全性・Safety)の原則をさらに発展させ、より高度なものにするために、次の4つの目標を掲げています。

  1. 安全の革新を図ること
  2. 資源自給率に加え、技術自給率とエネルギー選択の多様性を確保すること
  3. 「脱炭素化」への挑戦
  4. コストの抑制に加えて日本の産業競争力の強化につなげること

電源別の具体的なエネルギー政策については、次のような方針を掲げています。

  • 2030年までにはエネルギーミックスを確実に実現するため、電源構成比で再生可能エネルギー22~24%、原子力発電20~22%、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料56%という構成比にすることを目指します。また、省エネについては「改正省エネ法」や支援策を一体的に実施することで徹底した省エネを進め、実質エネルギー効率35%減を目指すとしています。

  • 脱炭素化については、「2050年にまでに温室効果ガスを80%削減する」という目標の達成に向けて、エネルギー転換を図ることで脱炭素化への挑戦を進める方針です。具体的には再生可能エネルギーを脱炭素化の主力電源とし、原発については社会的信頼回復が不可欠であり、さらなる技術開発を進めるとしています。化石燃料はエネルギー転換の過渡期にあっては主力電源として必要なため、資源外交を強化する方針です。

エネルギー基本計画が今、企業に求められる理由

エネルギー基本計画を策定するのは国ですが、実際に目標に向かって進捗率を高めるには企業の協力が欠かせません。上記4つの目標を見ても、安全の革新を図るには企業の技術開発が必要です。資源自給率やエネルギーの選択では、太陽光発電や風力発電に参画する企業が増えることが必須になります。

脱炭素化では、自動車会社が電気自動車の開発や普及に努めるなど業界をあげて国のビジョンに協力する場合もあります。そして、企業活動がコストの抑制につながることで日本の産業競争力が強化されれば企業にとってもメリットを受けることができます。

エネルギー基本計画で企業が取り組める範囲

エネルギー基本計画に対し企業が取り組むことができるのは、おもに次のようなカテゴリーです。勤務しているビルをイメージするとわかりやすいかもしれません。省エネにはコストをかけずに節電できることと、設備投資を伴うことの2つがあります。

・電気
エレベーターを使わずに階段を昇降することは健康維持のためにもよく推奨されることです。パソコンやコピー機などはスリープモードにすることで使っていない間の節電になります。一方、有効な設備投資としては太陽光発電システムの導入や電力見える化装置の設置などが挙げられます。

・空調
空調に関する取り組みも節電効果が高い分野です。エアコンの設定温度を気温に応じて適正に設定する。オフィスを人がいる区域といない区域に間仕切りして、必要な区域のみにエアコンを使用するなどの対策が考えられます。

設備投資では古い型のエアコンを省エネモードなど高機能な機種に買い替える。デマンドコントロールシステム(最大需要電力を超えないように監視するシステム)を導入することなどが有効です。

・照明
照明に関しては人がいない部屋のこまめな消灯、天井の蛍光灯を間引くなどがよく行われている対策です。設備投資ではLED照明を導入する、人感センサーで照明が点灯・消灯する仕組みにすることなどが有効です。

・車
節電ではありませんが、社用車をガソリン車から電気自動車に順次切り替えていくことも脱炭素化に貢献する対策といえます。太陽光発電システムと組み合わせてEVカー充電スタンドを駐車場に設置するのも将来のために有効な先行投資です。

以上のような取り組みを実施することでエネルギー基本計画の目標である資源自給率の向上、脱炭素化、コストの抑制などに企業として貢献することができます。

2030年の自然エネルギー電力目標

2030年の自然エネルギー(水力を含む再生可能エネルギー)電力目標はどうなっているでしょうか。2018年に策定された現行の基本計画では、2030年度の電源構成目標を再生可能エネルギー22~24%としていました。

自民党の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟は、政府が改定するエネルギー基本計画の電源構成について、再生可能エネルギー比率を2030年までに45%以上にするように求めており、現行計画の2倍近い比率へ普及を加速させたい考えです。

現状はどうか。経済産業省が発表した2019年度のエネルギー需給実績によると、再生可能エネルギーの比率は前年比+1.1%の18%にとどまっています。2030年度当初目標の22~24%の達成は可能な範囲ですが、45%以上という数字はかなりハードルが高いと言わざるを得ません。

太陽光は再生可能エネルギー全体の4割弱と伸びているものの、風力が4%と伸び悩んでいるのが影響しています。

省エネに企業が共同で取り組む事例

では、省エネに企業が共同で取り組む事例を、資源エネルギー庁の資料から紹介しましょう。

栃木県宇都宮市の清原工業団地にある、カルビー、キャノン、久光製薬の3社7事業所が、1ヵ所に集約したガスコージェネレーションシステムから電力や熱の供給を受ける「工場間一体省エネ事業」の事例です。

仕組みは、東京ガスエンジニアリングソリューションズが運営する清原スマートエネルギーセンターのガスコージェネレーションシステムと蒸気ボイラから、自営線や蒸気温水配管を使って宇都宮にある3社の工場や事業所に電力と熱を供給します。

3社の工場や事業所からデータを収集し、東京ガスエンジニアソリューションズのエネルギーマネジメントシステムを通して最適な制御がなされるという仕組みです。工業団地ならではの、効率的なエネルギー供給システムといえます。

避けられない環境対策。エネルギー基本計画に企業担当者はどう向き合うべきなのか
出典:資源エネルギー庁

取り組み事業は吉と出るか凶と出るか

企業担当者にとって気になるのは、取り組み事業を行うことが自社にとってプラスになるかという点です。正直なところ、上記のような共同で取り組む事業は大企業だからこそできることといえます。中小企業同士が組んでも運営費用面で消費電力量に見合わないコストがかかる可能性があります。

また、中小企業は入れ替わりが激しいため、チームを組んだ1社が抜ければ残った会社の負担が増すことになります。あまり現実的ではないでしょう。

しかし、中小企業が単独で行ってもメリットになる取り組みもあります。代表的なのが自社ビルに太陽光発電システムを導入して節電と売電収入を図ることです。

エネルギー基本計画目標の資源自給率の向上や、脱炭素化への挑戦にも貢献できます。加えて太陽光パネルを設置することで地域住民や顧客からSDGsに取り組んでいる企業であることを認識され、イメージアップにつながることが期待できます。

再生可能エネルギーの拡大を目指す企業群

再生可能エネルギーの拡大に取り組み、将来的には業務に使用する再生可能エネルギーを100%にすることを目指す「RE100」という企業群もあります。RE100は2014年に国際環境NGO「The Climate Group」が開始した国際的企業連合です。2021年5月現在、日本企業は54社が参加しています。これは米国に次ぎ世界で2番目に多い数字です。

加盟している企業は各社それぞれに100%達成を目指す年度を表明しています。54社のうち最も早い達成を表明しているのがセイコーエプソンで2023年に100%達成を目指します。

ちなみに米国ではマイクロソフト、スターバックスがすでに2015年に100%を達成しています。これから自社で再生可能エネルギー100%を目指す場合も達成の時期を明確にしたほうが社員の士気が上がるでしょう。

エネルギー基本計画に企業としてどう向き合うかは、将来の事業展開を左右する問題にもなります。2021年に策定される「第6次エネルギー基本計画」がどのような内容になるのかも注目すべきポイントです。

避けて通れない環境対策を自社にとってプラスとするためにも、企業担当者はエネルギー基本計画に日ごろから向き合うことが求められます。

※本記事は2021年5月23日現在の情報を基に構成しています。今後「第6次エネルギー基本計画」が発表されると、取り組み内容が多少変更になる可能性があります

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