陸屋根防水は意味があるのか。企業がリアルに受けるメリットとデメリット
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丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

ビルやマンション等の陸屋根は定期点検が必要です。点検結果によっては防水工事も必要になることから、企業担当者にとっては陸屋根防水に関する概要を知っておく必要があります。ここでは陸屋根の点検と防水工事について企業がリアルに受けるメリット・デメリットを紹介します。

陸屋根の防水はなぜ必要なのか

陸屋根の防水はなぜ必要なのでしょうか。陸屋根は雨が降った際に傾斜がないため、雨水が貯まりやすいという難点があります。通常の屋根よりも水はけが悪く、防水効果が薄れていると雨漏りにつながるリスクに注意が必要です。

水を頻繁に使うマンションや店舗だけでなく、オフィスビルでも8階建て6階の天井部分から漏水した事例があります。

陸屋根防水の必要性では自社ビルとテナントビルでは緊急性に若干の差異があります。自社ビルであれば不具合があってもしばらく様子を見ることが可能です。

しかし、テナントビルの場合は入居者からのクレームにつながり、雨漏りがあって設備を損傷させたときは損害賠償に発展しかねません。定期点検で損傷箇所が発見された場合は雨漏りになる前に至急修繕する必要があります。

陸屋根防水の企業メリット

企業が陸屋根防水を行う最大のメリットは、工事によって建物の資産価値を維持できることです。陸屋根防水を行うことによって、雨漏りなど建物内部の劣化を防ぐことにつながります。とくにテナントビルやマンションなどの賃貸を行う企業の場合は入居者退去防止の観点から陸屋根防水工事が必須といえます。

2つめのメリットは、工事料金を経費計上して利益を圧縮できることです。修繕費の経費計上区分は工事内容によって「修繕費」と「資本的支出」に分かれます。資本的支出に認定されると固定資産として減価償却しなければなりませんが、外壁や屋上などの工事料金は修繕費として一括計上することができます。利益の多い年に陸屋根防水工事を行えば利益を圧縮して節税につながります。

陸屋根防水の企業デメリット

一方デメリットは、陸屋根防水工事を行った際にキャッシュフローの悪化が銀行の融資評価に影響を与えることです。上記の裏返しで利益が少ない年に修繕費を一括計上して赤字になった場合、営業利益が黒字であるにも関わらず、営業不振と判断される恐れがあります。資本的支出として計上したほうがよい場合もあるので、顧問税理士の判断を受けるとよいでしょう。

もう1点は、工法や材料によって修繕費にできないことがあることです。建物をグレードアップする目的で工事を行う場合は資本的支出に該当するケースがあります。

例えば美観をアップさせるための防水美装や、ウレタン防水からより耐用年数が長いアスファルト防水に材質を変える場合などは修繕費と認められない可能性があります。税務署から指摘される恐れもあるので、どちらの経費区分になるかは事前に顧問税理士に確認したほうが無難です。

また、テナントビルやマンションなどの工事を行う場合は入居者に事前に周知することが必要です。マンションにおいては洗濯物が干せない場合があるなど、入居者に多少不便をかけることもあります。

建物定期点検が正しい保守管理の基本

建物の定期点検は保守管理の基本といわれています。人間の健康診断と同じで、建物も定期的に点検を行い、悪いところは修繕する必要があります。もし修繕せずに放置すると建物の劣化が進み、かえって修繕費がかかることにもなりかねません。早く修繕箇所を発見することで、コストと手間を減らすことができるのです。

定期点検の報告制度の対象になるのは「特定建築物」と呼ばれる建物です。「建築基準法」で国が定める特定建築物は、映画館、百貨店、ホテル、体育館など不特定多数の人が集う場所で、用途に使う床面積の合計が200㎡以上の施設を指します。特定建築物は東京都の場合1年毎の定期点検が義務付けられており、屋上および屋根は特定建築物の検査5項目のなかに入っています。

もう1つ「ビル管理法」では、事務所の用途で使われる部分が延べ床面積3,000n㎡以上(廊下、階段、洗面所、建物附属の駐車場等を含む)の建物は特定建築物と認定されます。ただし、マンションは特定建築物には該当しません。したがって、小規模な自社ビルであれば特定建築物に該当しない場合があるので、屋根の定期点検は義務ではなく自主的な判断で行うことができます。

陸屋根防水定期点検時の対応はそれほど難しくない

屋根は雨が降ったときに、最初に影響する場所ですので、建物内部よりも劣化が進むのが早いといえます。早ければ7年程度で退色や塗膜の剥離といった劣化が始まります。したがって、7年目以降は数年に1度は点検を依頼する必要があります。

陸屋根の防水と聞くと点検時の対応に手間がかかるのではないかと考える人もいることでしょう。陸屋根は屋外ですので、点検時に作業員が室内で作業することは基本的にありません。

また、点検・相談自体は多くの業者が無料で行っていますので、コストの心配は不要です。点検後見積もりを出してもらい、納得がいけば発注という流れになります。

防水工事になった場合も、自社ビル近隣へのあいさつを行ってくれる業者があるので、近隣への説明など特別な手間はかかりません。

以上のことから陸屋根防水定期点検時や工事への対応はそれほど難しくないので、点検を躊躇する理由はないでしょう。

陸屋根防水工事の種類

陸屋根防水工事には次の4つの種類があります。

・シート防水
屋上にシート状の防水材を敷き込み接着して形成する防水層です。シート防水で使う材料にはゴムシート(厚さ1.2~2㎜)と塩ビシート(厚さ1.5~2.5㎜)の2種類があります。

厚さがある塩ビシートのほうが耐用年数が長く、シート防水材の主流になっています。短工期でコストが安いというメリットがある半面、複雑な形状や設置物が多い場所の施工が難しいというデメリットがあります。

・FRP防水
防水用ポリエステル樹脂と防水用ガラスマットで形成された防水層です。軽量なうえに非常に固くて丈夫であるため、耐荷重性や耐摩擦性に優れています。そのため屋上駐車場の防水工事にも使用される工法です。1~2日の短工期で完了する半面、施工費用やメンテナンス費用が高めというデメリットがあります。

・アスファルト防水
合成繊維不織布タイプのシートにアスファルトを浸透させ、防水剤としての役割を加えた防水層です。おもに屋上防水が必要な現場で使用されているのが特徴で、マンションやアパートで多く採用されています。耐用年数が長く、アスファルトは油の一種であるため、防水性にも優れています。

その半面、複雑な形状や狭い屋上では施工できない場合があり、ガスバーナーを使用する際の煙や匂いが出るというデメリットがあります。

・ウレタン防水
屋上の床面に液体状のウレタン樹脂を厚めに塗り拡げ、乾燥させて防止膜をつくる防水層です。ほかの工法に比べて、床の面積や形状、材質等を問わずに施工できるメリットがあります。施工費用やメンテナンスの手間は平均的ですが、耐用年数が短いのがデメリットです。全体の工期は3~10日ほどかかります。

屋上の形状や状況によって選ぶべき工法が異なりますので、基本的には業者と相談して決めるのが妥当でしょう。

ソーラーを設置する前に陸屋根の点検が必要

ビルやマンションの陸屋根は一戸建てに比べ圧倒的に広い面積があります。スペースを有効に活かすために最適なのが太陽光発電ソーラーパネルの設置です。ビルやマンションの使用電力を賄えるだけでなく、余った電力は電力会社に売電することもできます。SDGsが社会に浸透してきたこともあり、導入する企業が増えています。

ソーラーパネルを設置する場合は、陸屋根の点検が必要になります。設置したあとに雨漏りが発生したら面倒なことになるからです。点検して修繕が必要な箇所が発見されたら設置する前に防水工事が必須となります。

陸屋根防水は企業にとって資産価値や税制に関するリアルなメリット・デメリットがあります。自社ビルの資産価値を維持し、テナントビルやマンションの物件の魅力を高めるためにも陸屋根防水を意味のあるものにしていくことが求められます。

※本記事は陸屋根の点検や工事について概要を紹介するものですので、業者によってサービス内容が異なる場合があります。詳細は依頼する業者のホームページ等でご確認ください

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