「レジリエンス経営」環境変化・災害に強い企業体質をつくるポイント
(画像=VitaliiVodolazskyi/stock.adobe.com)
本間貴志
本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

貴社は明日、大地震や大型台風などの影響でライフラインが停止しても最低限の企業活動ができますか。あるいは、新型コロナの強力な変異種が現れても対応できますか。

もし不安があるなら、今すぐにレジリエンス経営に取り組むべきです。「そもそもレジリエンスとは何か」「レジリエンスを企業活動に反映するにはどうしたらいいか」を解説します。

「レジリエンスを取り入れているか」で企業の成長性は変わる

コロナ禍をきっかけに注目度の高まった(あるいは、再び注目されるようになった)概念がいくつもあります。たとえば、DX(デジタルトランスフォーメーション)、ダイバーシティ、非接触、サステナビリティ(持続可能性)……今回、取り上げる「レジリエンス」もそのうちの1つです。

これらの新しい概念を経営やビジネスモデルに取り入れている企業は、コロナ禍でも成長し続けています。逆に、古い概念にしばられている企業は衰退に追い込まれています。

例えば、新型コロナの影響を大きく受けた飲食業界でも、新しい概念で店舗運営を行った企業は成長を遂げました。一例では、ケンタッキーフライドチキンを運営する日本KFCホールディングスは、「お持ち帰り×非接触」の強化によって2020年通期の売上高で前年比11.8%増を達成しました。

たとえコロナが収束しても、新たな感染症、異常気象、災害、経済危機などが企業の土台を揺るがす、そんなフェーズに入っています。変化の激しい時代にしなやかに対応するために、レジリエンスを企業活動に活かす必要性が増しているのです。

様々な分野で使われるレジリエンス。企業活動における意味とは

レジリエンスとは、「回復力」を意味するもともと精神医学や物理学で使われていた専門用語です。それが転じて、外部からダメージを受けても「しなやかに元の状態に戻れる力」を表すようになりました。

レジリエンスという言葉自体は、教育、投資、災害、気候変動など幅広い分野で使われています。それぞれの分野の一般的な意味は次の通りです。

分野レジリエンスの意味
教育子どもの心が折れない教育環境づくり
投資レジリエンスなビジネスモデルを有した企業への投資活動
災害地震、噴火、津波などに強い街づくり
気候変動干ばつ、寒波、台風などに強い地域環境づくり
企業活動災害、気候変動、市場変化などあらゆる変化に対応する組織づくり

日本では東日本大震災の後、レジリエンスの考え方が注目されるようになりました。その後、近年になって温暖化が原因と考えられる気候変動や大災害、さらには新型コロナ感染拡大によってレジリエンスが再び注目されています。

「レジリエンス経営」環境変化・災害に強い企業体質にするポイント

変化が激しい時代だから、企業活動にレジリエンスが欠かせない。この点についてはご理解いただけると思いますが、ではレジリエンスを具体的に経営に組み入れて、環境変化や災害に強い企業体質にするにはどうしたらよいのでしょうか。

確実に変革を進めるには次の4つのポイントを抑える必要があります。

レジリエンス経営のポイント1:再生可能エネルギー主体の自家発電システム

レジリエンス経営に取り組む企業が、はじめに着手すべきは「再生可能エネルギーによる自家発電システム」の導入です。

全国で大規模停電が頻発している昨今、御社が展開するエリアでいつ停電が起きてもおかしくありません。大型台風、豪雨、大雪、猛暑・寒波などの影響で大規模停電のリスクは極めて高まっています。それにも関わらず、代替電力を用意しないレジリエンス経営はあり得ません。

具体的には、社屋や工場などに太陽光発電システムと蓄電池を設置し、その電力を自家利用する仕組みを構築するのがもっとも効果的です。大規模停電などの緊急時にはこの太陽光発電システムの電気を利用することで被害を最小限に抑えられます。脱炭素社会に貢献できるのも利点です。

ただし、やみくもに太陽光発電システムを導入しても備えにはなりません。必要最低限の企業活動を維持するためには電力がどれくらい必要か、あるいは、緊急時にどの部門に優先的に電力を回すかなどを検討したうえで、それをまかなえるだけの太陽光発電システムを導入すべきです。

レジリエンス経営のポイント2:複数テーマの緊急事態対策を用意する

レジリエンス経営では、一定の確率で起きる可能性のある出来事はすべて「今、起きてもおかしくない」と想定して対策を練るのが基本です(=予防原則の考え方)。

「地震の避難計画はあるし、避難訓練はしている」という企業は多いでしょう。しかし、これだけではレジリエンス経営の対策としては準備不足です。対象テーマを拡大し、噴火・感染症、寒波などの緊急事態対策を立案し、繰り返しテストを行い、問題点を改善していくのが理想です。

※テーマ設定は企業の立地などによって異なります。

最近では、リアルな災害だけでなく、サイバー攻撃やシステムダウンへの対策も必須です。堅牢なシステムを構築すればトラブルはありえない。これが外部ダメージに弱い企業の典型的な考え方です。絶対的に信頼性のあるシステムを構築しつつ、トラブル対応策も進める。レジリエンス経営ではそんな二面性が求められています。

レジリエンス経営のポイント3:同じ業務を複数の拠点で行う

これまでの企業経営は、効率性を重視した組織設計が常識でした。レジリエンス経営では、たとえムダが出ても災害に強い組織設計を重視します(=機能的冗長性)。

たとえば効率性重視であれば、本社機能と支店業務を完全に切り分けるといった考え方になります。レジリエンス経営では、本社機能と似た機能を支店に持たせて、本社が外部ダメージを受けても企業活動が滞らないシステムをつくるといった発想をします。

つまり、レジリエンス経営を進めるとムダが発生することがあっても、会社のシステムを外部ダメージから守ることを優先しているわけです。

レジリエンス経営のポイント4:人材の多様性を実現する

レジリエンス経営では、人材の多様性(ダイバーシティ)も大事です。多様性の一例としては、異なる国籍・年齢層・性別・経歴・スキル・障害の有無などが挙げられます。

画一的な人材で固められた組織は、議論をしても同じ発想になりやすいため変化に弱いです。一方、多様な人材で組織が構成されていれば、物事をいくつもの視点で捉えて、柔軟な発想をしやすくなります。

ただ、人材の多様性を実現するには採用活動が伴うため、かなりの年数を要します。そのため、まずは自分たちと違う価値観やカルチャーを持った外部人材を招きつつ、段階的に多様な人材を採用していくのが現実的です。

レジリエンスの取り組みは、経営の最優先課題である

レジリエンス経営を進める上でもっとも重要なことは、「レジリエンスの取り組みは、企業活動の最優先課題である」とトップ・経営幹部・一般従業員が認識することです。これはサステナビリティ(持続可能性)への取り組みも同じです。

社会や環境が安定していたひと昔前は、CSRなどへの取り組みを本業の余力で進めるケースも多かったでしょう。変化のスピードが遅かったため、それでも十分対応できました。

しかし、変化のスピードが加速する現在では、レジリエンスやサステナビリティへの取り組みを最優先課題に位置づけないとあっという間に淘汰されます。レジリエンスとサステナビリティをキーワードに全社を挙げて変革に着手しましょう。

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