「見せかけESG・SDGs」にだまされないためのチェックポイント
(画像=Worawut/stock.adobe.com)
本間貴志
本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

「2025年までにESG市場の資産額は約5,770兆円を上回る(ブルームバーグ・インテリジェンスの推計/現在の為替レート)」といわれている今、世界中でESG投資やSDGsが潮流です。

一方で、見せかけ行為をおこなう「ESG、SDGsウォッシュ」が注視されつつあります。これが社会問題化してしまえば普及の足かせになりかねません。ここでは「ESG、SDGsウォッシュの事例とチェック方法を解説していきます。

見せかけESG・SDGs!ウォッシュ企業が問題になりつつある

「ESG投資やSDGsは、うさんくさい」と感じて人もいるでしょう。あるいは、「ESGやSDGsには共感するけれど、商売に使っていそう」と思う人もいるのではないでしょうか。この感覚は的を射ている部分もあります。なぜなら、国内外で「見せかけESG・ SDGs」の企業が散見されるからです。

見せかけ企業を「ESG、SDGsウォッシュ」として糾弾する動きも

海外では、ESG、SDGsをやっているふりをする行為を「ESGウォッシュ」「SDGsウォッシュ」という言葉で厳しく糾弾するケースも出てきています。日本でもESGやSDGsの意識の高まりとともに、このキーワードが浸透しつつあります。

なぜ、やっているふりをすることを「SDGsウォッシュというのか?」ついては、電通が発行した企業向けのSDGs指針で以下のように解説されています。

「SDGsウォッシュ」は、英語で「ごまかし」「粉飾」を表す “whitewash”と「SDGs」を組み合わせた造語で、ヨーロッパで使われ始めている言葉です。SDGsという言葉の響きによって、実態以上に「世界のため」「社会課題とのかかわり」を連想させるコミュニケーションを意味しています。  (引用:電通「SDGsコミュニケーションガイド」)

「ESG、SDGsウォッシュ」の国内外の事例

ここでESG、SDGsウォッシュをよりリアルに感じるため、国内外の事例をいくつか見ていきたいと思います。

・イギリスのブーフーが工場労働者を搾取していた問題

小平龍四郎著『ESGはやわかり』(日経文庫)では、ESGウォッシュの事例が紹介されています。イギリスのカジュアル・ファッション小売り「ブーフー」では工場労働者に適正な賃金を払っていないとの報道の影響を受け、株価が急落しました。

・国内メガバンクが石炭火力発電所事業者に融資

持続可能な社会をテーマにしたメディア『オルタナ』の編集長・森摂氏は、ハフポスト日本版インタビューで、国内の主要メガバンクが石炭火力発電所事業者に融資をしていた件はSDGsウォッシュにあたるのではないかと指摘しています。

なお、金融機関自体はSDGsに取り組んでいても、融資先の企業が環境に悪影響与えることを問題視するケースは東南アジアのパーム油関連でも事例があります。

・ユニクロや無印良品の新疆ウイグル自治区人権問題の対応

こちらも直接的なESGウォッシュではありませんが、良品計画やファーストリテイリングなどは新疆ウイグル自治区の人権問題への対応が不十分と見なされ、経営が逆風にあると日本経済新聞が報じています(2021年4月16日付)。

記事ではコモンズ投信の伊井哲朗氏がこの状況について「ウイグルを巡る人権問題への対応が短期筋の売りを誘っている」と解説しています。

無印良品とユニクロは、製造面と販売面で中国と深くコミットしていることから対応が難しい面もあります。両社はSDGsやESGに積極的な企業と見られることも多いですが、それでも対応を間違えると企業イメージが大きく損なわれる教訓となりました。

「ESGウォッシュ」を規制する取り組みも広がっている

EU(欧州連合)では2021年3月、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)のうち環境面の見せかけ(グリーンウォッシュ)を防止する効果があるといわれる「ESG投資開示規則」が適用されています。

これは、金融商品のファンドマネージャーに対して投資とサスティナビリティ(持続可能性)の関係についての情報を評価・開示するよう義務づけるものです。

日本では、ESGに関連する規制はまだ検討されていないようですが、『日経ESG』の取材に対して金融庁の担当者は「今は明確なルールがない。市場の監視と対話を始めている」と述べています(2021年4月14日付)。

暗号通貨に関する規制が一気に進んだように、なにか社会問題が起これば制度づくりが進む可能性があります。

ESG、SDGsウォッシュにだまされないためのチェックポイント

ESG、SDGsウォッシュを行う企業が売上を増やしたり、影響力を持ったりしないためには国や経済域内の規制、さらには国境を超えたグローバルな規制も必要でしょう。

加えて、商品やサービスを利用する、あるいは投資をする側の私たちが、ウォッシュ企業をふるいにかける重要性が増しています。具体的にどのように企業をチェックすればよいのでしょうか。3つのチェックポイントを紹介します。

  1. 利用企業のESGやSDGsの取り組みを知る
  2. 「E・S・Gの3つの軸」で検証する
  3. 取引先や融資先も視野に入れる

チェックポイント1:利用企業のESGやSDGsの取り組みを知る

一番身近なチェック方法は、商品やサービスを利用している企業が、ESGやSDGsにどのように取り組んでいるかを把握することです。

最近では大手企業の大半の企業がESG・CSRレポート(またはサスティナビリティレポート)を定期的にネット上で公開しています。高額商品を買ったり、定期的にサービスを利用したりする場合は、ESG・CSRレポートを一読したうえで購入や利用を検討しましょう。

ESG・CSRに取り組んでいることを強調しつつも、内容が不十分だったり、目標設定が甘い、あるいは、目標に未達だったりする企業もあります。そのため、メッセージや概要だけでなく、具体的な取り組み内容までしっかり目を通しましょう。

チェックポイント2:「E・S・Gの3つの軸」で検証する

ESGやSDGsでは、環境面の活動がフォーカスされやすいですが、あくまでも「E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)」の3つの軸で企業を評価することが大事です。

例えば、環境面で素晴らしい取り組みをしている企業でも、社員が働きにくい環境だったり、取引先を搾取していたりする企業は「評価できない」ということになります。

チェックポイント1で挙げた「ESG・CSRレポート」は、自己評価のためウィークポイントを把握しにくいというデメリットがあります。そのため、一般メディアを通して対象企業が社会問題を起こしていないか、ネット上の口コミ情報で悪い評判がたっていないかなどをチェックする必要もあるでしょう。

チェックポイント3:取引先や融資先も視野に入れる

ESGやSDGsの特徴としては、たとえ対象企業が高い評価を受けていても、取引先や出資先が人権問題と関わっていたり、環境に悪影響を及ぼす活動をしていたりすると社会問題化するのが特徴です。国内のメガバンクやの無印良品の事例は、その典型といえるでしょう。

もちろん、一般消費者が企業の取引先まで綿密にチェックするのは現実的ではありません。しかし、このことを意識していると、幅広い視点で企業のESGやSDGsをチェックしやすくなります。

投資家と消費者の意識がESG、SDGs普及の鍵を握る

環境団体や消費者が「ESG、SDGsウォッシュを見逃さない」という姿勢を鮮明にすることで、企業に「見せかけのESG、SDGsは経営リスクになる」という緊張感をもたせることができます。その意味では、ESGやSDGsを理想的な形で広めていくためには、投資家や消費者の意識の存在が大きいといえます。

「投資家や消費者の意識が企業を育てる」そんな気持ちでESG、SDGsウォッシュがないかをできる範囲でチェックしていきましょう。

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