拡大し続けるSDGs債とは?発行体の取り組みと課題を解説
(画像=sarayut_sy/stock.adobe.com)

SDGs債という言葉を目にすることが増えてきましたが、具体的な内容を理解している人はまだ少ないかもしれません。しかし国内市場は2兆円を突破し、投資を考えるうえで「聞いたことはあるけどよくわからない」では済まされない存在になっています。拡大を続けるSDGs債の基礎知識と具体的な発行例などを解説します。

SDGs債とは

SDGs債は世界が達成を目指す、SDGs(持続可能な社会実現のための達成目標)に貢献する事業の資金調達をする債券(ボンド)です。資金の使い道は、SDGsに関する環境問題や社会課題の解決に限られます。

国内では2016年に3件だった発行件数が、2020年には146件と急増しています。また以前は環境問題の解決に貢献するグリーンボンドが多かったのですが、近年は雇用創出や教育といったソーシャルボンドも増えています。

3つの主要ボンドの定義

SDGs債は貢献する分野によって分けられ、グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドが主要3ボンドと言われます。これらは「国際資本市場協会(ICMA)」が示す、それぞれの原則やガイドラインに則った債券になります。

グリーンボンド

調達される資金のすべてがグリーンプロジェクト(気候変動の緩和、自然資源や生物多様性の保全、汚染防止や管理といった環境目的に貢献するもの)への投資を目的とする債券です。ICMAの示す「グリーンボンド原則」に適合することが求められます。

ソーシャルボンド

調達される資金のすべてがソーシャルプロジェクト(特定の社会課題の解決や軽減に貢献し、対象となる人たちや社会全体にとってポジティブな成果を目的とするもの)への投資を目的とする債券です。ICMAの示す「ソーシャルボンド原則」への適合が求められます。

サステナビリティボンド

調達される資金のすべてが、グリーンボンドとソーシャルボンド双方のプロジェクトへの投資を目的とした債券です。こちらもICMAの示す「サステナビリティボンドガイドライン」への適合が求められます。

市場拡大し定着したSDGs債

国内のSDGs債発行額は、2019年に1兆2,139億円となり、前年の4,884億円からおよそ2.5倍と一気に拡大しました。2020年はさらに増えて、2兆1,339億円と2兆円の大台を突破し増加の一途をたどっています。

冒頭でお伝えしたように発行件数も2020年に146件となり、SDGs債を扱う市場は国内でも完全に定着したと言って良いでしょう。日本で債券による資金調達を行う企業や団体にとって、SDGs債はもはや無視できない存在になっています。

グローバルに展開する企業はもちろんですが、今後は国内で事業を行う企業や団体でもSDGs債の起債を、投資家から求められる可能性もあります。

SDGs債発行企業の取り組み

国内で急増するSDGs債ですが、具体的にはどのようなものがあるか事例を紹介します。

日本政策投資銀行

日本政策投資銀行(CBJ)は長期にわたり環境対策事業に投融資を実施してきましたが、2014年に日本初となるグリーンボンドを発行しました。このCBJグリーンボンドで調達された資金は、環境や快適性、防犯、防災、地域、景観などの観点から高く評価された物件への融資資金に充てられます。

他にもESGに配慮していると評価された不動産や、CBJの環境格付融資を受けた企業、再生可能エネルギー分野やクリーン交通分野などの資金調達への融資にも積極的に取り組んでいます。

東北電力

東北電力は東北6県と新潟県などに、風力発電を中心とした200万kWもの再生可能エネルギーの開発をしています。このプロジェクトの資金調達のためグリーンボンドを発行しました。海外ではすでに大手電力会社のグリーンボンドが発行されていますが、日本ではこの東北電力が初めてのケースです。

東北電力のグリーンボンドは、事業がパリ協定の目標と合致するか厳しく確認するイギリスの国際NGO「気候ボンドイニシアチブ(CBI)」の認証を得ています。貢献効果がわかりにくいと言われることもあるグリーンボンドですが、こうした認証は高い信頼性と透明性の確保につながります。

東京都

東京都は資金使途を環境対策などに絞った東京グリーンボンドを発行しており、2020年の第4回は発行額200億円の規模になっています。同年11月に売り出した東京グリーンボンド外貨は、6日で完売と投資家から高い評価を得ています。

グリーンボンドの充当事業は、消防署への太陽光パネル設置、施設や道路の照明のLED化、上下水道施設の省エネ化、自転車走行空間の整備、公園整備などの環境対策になっています。

中国銀行

岡山県を中心に展開する中国銀行では、新型コロナ対策を目的としたソーシャルボンドを発行すると発表しました。同行は2020年3月に、地域の社会環境課題に対する取り組み「ちゅうぎんESG宣言」を行っておりその活動の一環と言えます。

資金の主な充当先は、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けている顧客の資金繰り支援です。地域の雇用維持や経済の安定回復に貢献することを目的として、発行額100億円のソーシャルボンドになっています。

日本学生支援機構

日本学生支援機構(JASSO)は、教育の機会均等を制度的に支える奨学金事業を主に行っています。2018年からソーシャルボンドを発行し、充当先は利息を付して貸与する「第2種奨学金」です。2019年度の奨学金受給者127万人のうち、この第2種奨学金の利用者は70.2万人にのぼります。

奨学金受給者の半数以上が対象であり、日本の次世代の人材育成という社会貢献として、大きく評価されています。またフランスに拠点を置くESG評価機関「ヴィジオアイリス(Vigeo Eiris)」からセカンドオピニオンを取得し、事業の透明性を高めています。

課題は透明性と実際の運用益

市場も拡大しさまざまな企業や団体が発行しているSDGs債ですが、課題として以前より指摘されているのが使途や成果の透明性です。環境や社会面への取り組みを掲げながら、実際に行われているかどうかや成果がわかりにくいという意見です。

事例で紹介したように、海外の評価機関の検証を受けてその事業の目的や実効性を明らかにしようとしているところもあります。また毎年レポートを発表し積極的に情報を開示しているところも多く、そうした取り組みが今後も投資家を集める基準の1つとなるでしょう。

またSDGs債がどの程度の運用益になるかは、まだ普及し始めたばかりでこれからわかることになります。特にコロナ禍の状況において、SDGs債は他の社債に比べどのような運用益となるか注目が集まります。

今後のSDGs債の流れ

海外ではGoogleの親会社であるアルファベットが、2020年8月に57.5億ドル(約6,000億円)のサステナビリティボンドの発行を表明し話題となりました。

充当先は環境プロジェクト以外に、新型コロナ対策や黒人コミュニティのビジネス支援なども含まれています。ソーシャルや人権についての課題も対象になっており、今後はジェンダー平等も含め、より社会性のある課題解決への貢献が大きくなると思われます。

SDGs債は今後の重要キーワード

日本ではSDGsという言葉が徐々に一般の方にも広まりつつありますが、すでに世界経済の中では大きな流れになっています。特にSDGs債は今後の投資方法に大きな影響を与える可能性が高く、しっかりとその実情を捕らえておく必要があります。

意外にも身近なところに、すでに発行されているSDGs債があるかもしれません。投資信託などと同様に、当たり前にSDGs債で資産運用をする時代がすぐそこまで来ています。

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