はじめての「不動産ファンド」の選び方 メリットを交えてわかりやすく解説
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ひと口に「不動産ファンド」といっても、いくつかの種類があります。個人投資家向けのものだけでも「公募REIT(J−REIT)」「不動産小口化商品」「不動産クラウドファンディング」などがあり、メリット・デメリットが異なります。その違いを理解して、ご自身と相性のよい不動産ファンドを選びましょう。

不動産ファンドの仕組みをわかりやすく

投資家から募った資金をひとまとめにして運用するのがファンドです。不動産ファンドにはさまざまな投資対象があります。

ファンドの仕組み:大勢の投資家から集めた資金をプロが運用

ファンドとは、不特定多数の投資家から集めた資金をひとまとめにして、投資の専門家(または投資家の共同体)などが運用する仕組みです。運用によって得られたリターンは、投資家の出資割合に合わせて分配されます。個人投資家になじみのある「投資信託」もファンドの一形態です。

例えば、ファンドの投資対象には下記に挙げるテーマがあります。

  • 投資信託(株式・債権など)
  • 船舶や航空機
  • 太陽光発電
  • 不動産 など

不動産ファンドの仕組み:収益物件の購入や運用を専門会社などが担当

不動産ファンドの場合、収益物件の購入・運用・売却などを事業法人や不動産の専門会社が担当します。不動産ファンドのリターンの源泉は賃料と売却益になります。想定していた賃料と売却益を得られれば、それぞれの投資家に予定していた分配金が提供されます。

例えば、不動産ファンドの投資対象には下記に挙げるテーマがあります。

  • 賃貸マンション
  • 商業施設
  • オフィスビル
  • ホテル
  • 物流施設
  • 太陽光発電設備 など

不動産ファンドには「機関投資家向け」「個人投資家向け」がある

不動産ファンドには「機関投資家向け」と「個人投資家向け」があります。この2つの違いを理解しておかないと混乱のもとになるため、注意が必要です。

機関投資家向けファンド:1口あたり単価は億円単位

機関投資家向け不動産ファンドは、例えば、百億円単位、千億円単位などの巨額な資金をもとに大規模な不動産を取得(または開発)・運用・売却するものです。1口あたり単価も「1億円」や「5億円」など高額です。具体的には、次の2つがこのカテゴリに含まれます。

  • 私募REIT
  • 私募不動産ファンド

個人投資家向けファンド:1口あたり単価は1口1~100万円

個人投資家向け不動産ファンドは、都心のマンション、オフィスビル、ホテル、物流施設などを取得・運用・売却するものです。1口あたり単価は個人でも出資可能な1~100万円などの設定です。

この記事では、こちらの「個人投資家向け不動産ファンド」にフォーカスして情報をお伝えしていきます。具体的には、次の3つがこのカテゴリに含まれます。

  • 公募REIT(J−REIT)
  • 不動産小口化商品
  • 不動産クラウドファンディング

個人向け不動産ファンドに共通するメリットを整理

個人投資家向けの不動産ファンドに共通するメリットは「投資金額を抑えやすい」「運用の手間がかからない」の2点です。

不動産ファンドのメリット:投資金額を抑えやすい

これは一般的な不動産投資(賃貸経営)と比較すると一目瞭然です。通常の不動産投資なら、都心の新築区分マンションで数千万円、オフィスビルや一棟マンションであれば億円単位の取得費用がかかります。

これに対して、不動産ファンドの1口あたり単価の目安は、J−REITで1口数十万円、不動産小口化商品で1〜100万円、不動産クラウドファンディングで1口1万円です。そのため、投資初心者や限られた資金を分散投資したい人などと相性がよいといえます。

不動産ファンドのメリット:運用の手間がかからない

同じ不動産をテーマにした投資でも、賃貸経営とファンドでは投資家の負担が違います。賃貸経営の業務をまとめたリストを確認すれば、「不動産ファンドは運用の手間がいかにかからないか」というメリットを理解しやすいと思います。こちらが賃貸経営の業務リストになります。

  • 収益物件探し(情報収集や現地調査など)
  • 不動産売買の契約手続き
  • ローン申し込みや金融機関との契約手続き
  • 入居者募集、入居者管理、家賃督促
  • 入居者のクレーム対応
  • 毎年の確定申告 など

上記の業務は、部分的に管理会社や税理士にアウトソースすることも可能ですが、それでも投資家の負担があります。一方、不動産ファンドであれば、投資後はほったらかしで運用できます。

3種類の不動産ファンドのメリット・デメリット

ここまでの内容で不動産ファンドの共通の特徴やメリットについてはご理解いただけたと思います。この項では、個人投資家向けの3種類の不動産ファンド「公募REIT(J−REIT)」「不動産小口化商品」「不動産クラウドファンディング」の特徴・メリット・デメリットを整理します。

不動産ファンド1:公募REIT(J−REIT)のメリット・デメリット

公募REIT(J−REIT)は、国内の株式市場に上場された不動産ファンドです。投資家のリターンは「投資口価格の値上がり益」と「一定期間ごとの分配金」で得られます。投資口価格とは株式投資でいうところの「株価」です。需給バランスによって価格が変動します。

J−REITの主なメリットは次の通りです。

  • 投資口価格の上昇で大きなリターンを狙える
  • 株式市場で扱われているため流動性(換金性)が高い
  • NISAを使って税金を抑えられる など

J−REITのデメリットは、株価急落の局面で大きく値下がりする可能性があることです。コロナショック時には、残高上位10本のJ−REITの3ヵ月騰落率は全銘柄でマイナス20%となりました。

不動産ファンド2:不動産小口化商品のメリット・デメリット

不動産小口化商品は、「不動産特定共同事業法(通称:不特法)」に基づいて運用される未上場の不動産ファンドです。個人投資家が不動産を購入しやすいよう、1口数万円〜100万円単位などに小口化して(小分けにして)提供しています。投資家のリターンは「一定期間ごとの分配金」です。

不動産小口化商品の主なメリットは次の通りです。

  • 都心物件やハイグレード物件など付加価値の高い物件を運用できる
  • 上記のような物件を運用することで安定した利回りを確保しやすい
  • 相続税対策にも利用できる(※1) など

不動産小口化商品には、投資家と契約した事業者が不動産を運営する「匿名組合型」と、投資家が共同で事業主体になる「任意組合型」などがあります。
(※1)相続税対策に使えるスキームは「任意組合型」です。

一方、不動産小口化商品のデメリットは中途解約ができない商品があることです。中途解約する可能性があるなら、このようなタイプの商品を避けるべきでしょう。

不動産ファンド3:不動産クラウドファンディングのメリット・デメリット

上記の不特法の延長線上で2017年に創設された「小規模不動産特定共同事業」に基づく不動産ファンドが「不動産クラウドファンディング」です。資本金などの参入要件が緩められたため、より多くの事業者が参入しています。投資家のリターンは「一定期間ごとの分配金」です。

不動産クラウドファンディングの主なメリットは次の通りです。

  • 1万円からなど手軽な資金で運用できる
  • ネット完結で手軽に買える
  • 事業者が多いぶん、選択肢が多い

不動産クラウドファンディングの主なデメリットは、運用期間が数ヶ月〜数年と比較的短いことです。なお、ほかのファンドの運用期間は「J−REIT/無期限」「不動産小口化商品(任意組合型)/10年以内〜数十年」となっています。

不動産ファンドを実際に始める方法

最後に、不動産ファンドを実際に始める方法について解説します。

J−REITの売買方法は株式投資とほぼ同じです。証券会社の総合口座などがあれば売買できます。違いがあるとすれば、単元株数が株式は100株と多いのに対し、J−REITは1株単位という部分です。

不動産小口化商品を購入する流れはさまざまですが、資料を請求したり、無料セミナーに参加したりした後、営業マンなどから説明を受けて申し込むようなケースが多いようです。

不動産クラウドファンディングは、まず各プラットフォームに登録し、そこで募集されるファンド(投資案件)に申し込むことで投資を始められます。

※いずれの不動産ファンドも元本割れや予定していた分配金を得られないリスクがあります。投資は自己判断でお願いします