環境問題の食品ロスを削減するために「もったいない」を意識しよう
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大西 勝士
大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

食べられる食品が大量に廃棄される「食品ロス」は社会問題の一つです。大量の食品がムダに捨てられるのはもったいないことであり、環境面においても悪影響があります。日本では国や事業者がさまざまな食品ロス対策を実施していますが、「どういった取り組みを行っているのかよく分からない」という人もいるのではないでしょうか。

また食品ロスを減らすには、個人も「もったいない」という意識を持って行動を変えていくことが必要です。今回は、食品ロスの概要や環境への影響、食品ロスを減らすための対策などについて詳しく解説します。

食品ロスとは?

食品ロスとは「供給された食品のうち、本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品」のことです。食品ロスが発生してしまう理由は「売れ残り食品」「規格外品」「返品」「食べ残し」など、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されているからです。2020年5月に農林水産省が発表した「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」によると、日本は年間2,550万トンの食品廃棄物等が発生しています。

そのうち約612万トン(約24%)が食品ロスとなっているのです(2017年度推計)。国民一人あたりの同年度の食品ロス量は1日約132グラム(茶碗1杯のご飯の量に相当)、年間約48キログラム(年間一人あたりの米の消費量に相当)にものぼります。食品ロスは環境に悪影響があるだけでなく廃棄に経費もかかるため、食品ロス削減は国際的にも関心が高まっている傾向です。

食品ロスを減らすには、国や自治体、事業者、NPOなどさまざまな立場の人が協力して取り組む必要があります。

食品ロスは大きく2種類に分けられる

食品ロスは、大きく以下の2つ分けられます。

  • 事業系食品ロス(事業活動で発生する食品ロス)
  • 家庭系食品ロス(各家庭から発生する食品ロス)

農林水産省の同調査によると、日本で1年間に発生する食品ロス約612万トンのうち事業系食品ロスは約328万トン、家庭系食品ロスは約284万トンです。事業系のほうが多いものの、家庭系も46.4%と大きな割合を占めています。事業系食品ロスは以下の4業種に分類でき、それぞれの割合は以下の通りです。

業種 重量 割合
外食産業 約127万トン 38.7%
食品製造業 約121万トン 36.9%
食品小売産業/td> 約64万トン 319.5%
食品卸売業 約16万トン 4.9%
事業系食品ロス合計 約328万トン 100%

事業系食品ロスの内訳は、食品製造業と外食産業の割合がそれぞれ30%以上と大きくなっています。

食品ロスが環境に与える悪影響

食品ロスは、もったいないだけでなく環境にも悪影響を与えます。食料の生産には多量のエネルギーを使用する上、食品ロスを起こせば廃棄の際に運搬・焼却で二酸化炭素を排出するため地球温暖化につながります。2019年8月に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した「土地関係特別報告書」では、食品ロスの削減は温室効果ガスの低排出を可能とし食料生産に必要となる土地を減少させることが示されました。

※気候変動に関する政府間パネルとは、国連環境計画(UNEP)および世界気象機関(WMO)により1988年に設立された政府間機関です。

食品ロス削減についての目標や法制度

国際機関においては食品ロス削減に関する目標が設定され、日本では法律も施行されています。ここでは、食品ロス削減についての目標や法制度を紹介します。

国連サミットで食品ロスの削減目標を設定

2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において食料の損失・廃棄の削減が目標に設定されました。目標(ゴール)の一つ「持続可能な生産消費形態を確保する」について以下のターゲットが採択されています。

  • 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人あたりの食料廃棄を半減させる
  • 2030年までに廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用によって廃棄物の発生を大幅に削減させる

また2019年に日本で開催されたG20においても食品ロスの削減が宣言に盛り込まれました。このように、食品ロスの削減は国際的な問題として関心が高まっています。

食品リサイクル法

食品リサイクル法(2001年5月1日に施行)は、食品ロスを含めた食品廃棄物の発生を抑えて量を減らすこと、そして飼料等としての再生利用を促進することを目的としています。事業系食品ロスの削減については、2000年度比で2030年度までに半減させる目標を設定しました。また業種別に食品ロスの発生抑制に関する目標を設定しており、さまざまな関係者が連携して食品ロス削減に取り組んでいます。

食品ロス削減推進法

食品ロス削減推進法(2019年10月1日施行)は、国や自治体などの責務を明らかにし基本方針や施策を定めることで、食品ロスの削減を総合的に推進することが目的です。基本的施策として消費者や事業者に対する教育・学習の振興、知識の普及などが示されています。また食品ロスの削減に関する理解・関心を深めるため、食品ロス削減月間(10月)が設けられました。

食品ロスを減らすための対策

食品ロスの現状や問題、法制度などについて確認してきましたが、食品ロスを減らすために私たちはどんな取り組みを行えばよいのでしょうか。ここでは、食品ロスを減らすための対策を「事業系食品ロス削減」「家庭系食品ロス削減」の2つの観点から解説します。

事業系食品ロス削減の対策

事業系食品ロスを削減するための対策は以下の通りです。

  • 商慣習の見直し
  • 需要に見合った販売の推進
  • フードバンクとの提携
  • 消費者への啓発

事業系食品ロスの主な発生要因は、商慣習や消費者の過度な鮮度志向などにあります。食品小売業には「賞味期限の3分の1を超えたものを入荷しない」「3分の2を超えたものを販売しない」といった商慣習があり、過剰在庫や返品などの発生につながっている傾向があります。このような商慣習を緩和し、納品期限切れ在庫や返品、廃棄が発生しにくい体制を構築することが必要です。

販売機会の損失を恐れた大量発注の回避、食べ物を必要としている人への寄付を促すフードバンクとの提携なども有効な対策の一つです。また賞味期限への理解、食べ残しなどに対する消費者への啓発にも継続して取り組む必要があります。

家庭系食品ロス削減の対策

一方、家庭系食品ロスを削減するための対策は主に以下の4つです。

  • 「賞味期限」「消費期限」の違いを理解する
  • 冷蔵庫や家庭内の食品在庫の管理
  • 計画的に買い物する
  • 食材を上手に使い切る

食品ロスは家庭でも多く発生しているため、各家庭での取り組みも重要です。「賞味期限」と「消費期限」には、以下のような違いがあります。

名称 説明 食べ物の例
賞味期限 おいしく食べることができる期限 菓子、カップ麺、缶詰など
消費期限 期限を過ぎたら食べないほうがよい期限 弁当、サンドイッチ、惣菜など

賞味期限が表示されている食品は、賞味期限を超えても品質が保持されていればまだ食べられる場合もあります。また冷蔵庫や家庭内の食品在庫を適切に管理し計画的に買い物をして上手に使い切るように心がけていれば、食品ロスの発生を減らすことが期待できるでしょう。

食品ロスを減らすためのアプリもある

食品ロスを減らすためのアプリやサービスも登場しています。例えば「規格外で販売できない野菜や果物を無料でもらえる」「食品を通常価格よりも割安に買える」「定額で複数回飲食できる」といったことが可能です。また飲食店で突然のキャンセルが出たときにクレジットカード会社がアプリを通じてキャンセル情報を会員に即時公開し再販につなげるサービスもあります。

このようなアプリを活用すれば、お金をかけずに食品が手に入るメリットを享受しながら食品ロス削減への貢献が期待できます。

「MOTTAINAI」という意識を持つこと

食品ロスを減らすには、国や自治体、事業者だけでなく消費者である個人の取り組みも欠かせません。個人にできることは限られるかもしれませんが、多くの人が取り組めば食品ロスの削減ができます。「まだ食べられる食品を捨てるのはもったいない」と強く意識することで日々の行動は少しずつ変わるはずです。

「もったいない」という言葉は、世界では「MOTTAINAI」として広まりつつあります。2004年にノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが環境活動の3R(Reduce:ゴミ削減、Reuse:再利用、Recycle:再資源化)を表す世界共通の言葉として、ローマ字表記の「MOTTAINAI」で提唱しています。

食品ロスを少しでも減らせるよう、そして環境に負担をかけないライフスタイルがおくれるよう、まずは家庭内で「MOTTAINAI」を意識することから始めてみましょう。

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